【初めての介護】介護サービスを受けるには?サービス利用までの流れを解説

どんなに健康な親でも、高齢になれば介護を必要とする日がくることも。介護は誰にでも起こり得る身近な問題ですが、初めての介護はわからないことだらけで不安もあるでしょう。

家族に介護が必要になったらまず何から始めるべきか、介護保険サービス利用までの流れを順番にわかりやすく解説します。

認知症や脳卒中、よくある親の介護の始まり方

元気だった親がある日突然、要介護者になる……そんな介護の始まり方も珍しくないっポ。

介護の始まりは認知症や老衰だけでなく、突然倒れたり転倒したりが原因となることが少なくありません。

2019年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、もっとも多い介護の原因は認知症ですが、2位が脳血管疾患(脳卒中)です。
脳血管疾患は前触れなく突然発症する人も多いため、なかには準備もなにもないまま、介護生活をスタートさせた人も少なくないでしょう。

骨折や転倒が原因となることも多く、入院したことによって下肢筋力が低下して、結果的に要介護者となるようなケースもあります。

誰でも年を重ねれば、要介護者になる可能性は上がります。自分の家族にいつ介護が必要になるかは誰にもわかりません。

その日が訪れてしまった方、そしてまだ介護が先だと思っている方も、以下のステップを確認してスムーズな介護のスタートを切りましょう。

step1. 誰がどこで介護する?家族の役割分担を話し合う

親に介護が必要になったら、いくつかのことを家族間で話し合う必要があるっポ。

誰が介護するのか
誰が主介護者になるのかを決めておく必要があります。
介護を一人で抱え込むと要介護者である親と共倒れになる恐れもあるので、家族だけでなく親戚間でも話し合い、役割分担ができるようにしておくことも大事です。

どこで介護するのか
たとえば、親が一人暮らしのケースでは、誰かが親の家で同居するのか、子どもの家に親を呼び寄せるのか、それとも施設を探すのかによって今後の介護生活が大きく変わります。
それによって「誰が主介護者になるの」も変わるので、重要なポイントです。

介護費用はどうまかなうか
介護にはお金がかかります。そのため、誰が費用を負担するのか、親の財産はどのくらいあるのか、足りない場合にはどうするのかなどを話し合う必要があります。

いざ親の介護が始まると慌ててしまう家族も多いでしょう。日頃から家族で介護について話し、本人の意向も確認しておくことが重要です。

すでに介護が始まった方は、兄弟間のトラブルなどが発生しないように、できるだけ早く話し合いの場を設けましょう。

step2. 介護について地域包括支援センターや市町村窓口へ相談する

介護が必要かな?と思ったら、まずは相談するっポ!

親に介護が必要になり「介護サービスを受けたい」と思ったら、まず、介護が必要な親が住む市町村窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。

地域包括支援センターがどこにあるのかわからない場合は、インターネットで「居住地名×地域包括支援センター」で検索すると見つかります。

地域包括支援センターには保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)などの専門資格をもつ職員が配置され、高齢者の福祉や介護に関わるさまざまな事柄を無料で相談することができます。
ですから、介護を必要とする前から利用するのもおすすめです。

step3. 介護保険サービスを使うなら!要介護認定を受ける

介護保険サービスを受けるためには、要介護認定を受けることが必要だっポ。

要介護認定には、要支援1~2、要介護1~5の7段階があり、利用者の心身状態がどの程度介護を必要としているかによって判定されます。
この介護度によって、受けられるサービスや介護保険の支給限度額が変わるのです。

市町村窓口で要介護認定の申請手続きをすると、自宅に介護認定調査員が訪れ、聞き取り調査を行います。質問内容は、身体機能や認知機能、社会生活への適応などさまざま。

並行して、心身の状態に関する「主治医意見書」をかかりつけの医師に依頼しましょう。もし、かかりつけの病院がない場合は地域包括支援センターに相談し、近隣の医師を紹介してもらうとよいでしょう。

認定調査の結果と主治医意見書をもとに審査が行われ、自宅に結果が郵送されます。なお、要介護認定は結果が出るまでに1カ月程度かかります。

ただし、介護サービスをすぐに利用したい人が困らないよう、要介護認定の効力は申請日までさかのぼれる仕組みになっています。つまり、介護認定の申請をすれば結果を待つことなくサービスを受けられるのです。

ただし、暫定の要介護認定でサービスを受ける場合には、実際の要介護度が想定と異なっていると費用面で負担が増えるケースがあるなど、いくつかの注意点があります。
このようなリスクを避けるためにも、介護が必要かもしれないと思ったら、早めに介護認定の申請をしましょう。

要介護認定の流れについて詳しくはこちら

step4. 介護の一番の理解者ケアマネジャーを決める

介護にはケアマネジャーの存在が欠かせないっポ!

要介護認定の結果が要介護もしくは要支援であれば、介護サービスや介護予防サービスの利用が可能となります。
しかし「介護サービスを使いたい」と思っても、実際どのようなサービスがあるのか、どう申し込めばよいのかなど、わからないことも多いでしょう。

そんな介護にまつわるさまざまな不安を相談できるのがケアマネジャー(ケアマネ:介護支援専門員)です。

在宅介護を支援するケアマネは居宅支援事業所に在籍し、介護保険の利用に必要なケアプランの作成や各種手続きを代行してくれます。要支援であれば地域包括支援センターが担当となります。

ケアマネは、要介護者や家族の不安な気持ちに寄り添う一番の理解者である必要があります。話をしっかり聞いてくれる、豊富な知識を持ち合わせているなど、信頼できそうな人を選びましょう。

step5. 必要な介護サービスは何?ケアプランを作成する

担当のケアマネジャーが決まったら、ケアプランを作成するっポ!

担当のケアマネジャーが決まったら、次は介護保険を利用するための「介護サービス利用計画書」、いわゆるケアプランを作成します。
介護保険サービスは通常1~3割で利用できますが、ケアプランがないと利用した介護サービスはすべて自己負担になってしまいます。

家族でもケアプランの作成は可能ですが、ケアマネによるケアプランの作成には費用がかかりません。また、ケアマネは介護のプロですから、お任せるのがよいでしょう。

ケアプランは、訪問介護やショートステイなどの介護サービスを「いつ」「どこで」「どのくらい」利用するかを記すものです。

ケアマネは、高齢者が生活のどのようなところに不自由を感じているか、家族の負担になっていることはなにかなどを聞いたうえで、要介護者ができる限り自立した生活を継続できるようケアプランを作成します。
なお、身体機能や家族の状況に変化が生じた場合は、いつでもケアプランの変更が可能です。

介護保険サービスの利用料は所得によって異なるものの、原則1割負担です。ただし、介護度によって介護保険の支給限度額が定められているため、その分を超えた利用料は全額自己負担になります。
ですから、必要なサービスを必要なだけ利用することが大事です。

要支援1~2の人は要介護にならないように介護予防サービスを利用するための「介護予防サービス計画書」を作成します。介護予防サービス計画書の作成は、地域包括支援センターが行います。

step6. 介護サービスを利用する

ケアプランを作成する前には、どんな介護サービスがあるか知っておくといいっポ。これから紹介するサービスを組み合わせて利用することになるんだよ。

介護保険サービスにはさまざまな種類がありますが、主に「訪問サービス」「通所サービス」「宿泊サービス」「施設サービス」の4つに分類されます。

介護保険サービスは要介護者の自立を促す目的以外に、介護者の負担軽減の効果も期待できます。
ケアプランは、これらの介護保険サービスを組み合わせて作成します。ケアプランが完成したら、ようやくサービス利用の開始です。

職員が自宅を訪問してサービスを提供する「訪問サービス」

訪問介護[ホームヘルパー]
要介護のみ
ホームヘルパーが要介護者の自宅を訪問し、調理や掃除などの家事援助のほか排泄や入浴の介助といった身体介護を行います。通院時に身体介護が必要な場合は通院介助も可能です。

(介護予防)訪問入浴介護
要支援・要介護
介護職員と看護師が自宅を訪問し、持参した特殊浴槽での入浴介助を行います。車椅子の人や寝たきりの人でも安心して入浴できるサービスです。

(介護予防)訪問看護
要支援・要介護
在宅酸素やカテーテル管理などの医療的ケアが必要な利用者のために、看護師等が自宅を訪問して処置を行います。

(介護予防)訪問リハビリテーション
要支援・要介護
利用者が自立した生活を継続できるように理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問してリハビリを行うサービスです。

夜間対応型訪問介護 ※地域密着型
要介護のみ
利用者の在宅生活を24時間サポートするため、夜間、ホームヘルパーが訪問して必要なケアを行います。決められた時間に訪問する「定期巡回サービス」と、配布されたケアコール端末で随時ホームヘルパーを依頼できる「随時訪問サービス」に分けられます。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ※地域密着型
要介護のみ
利用者の自宅を訪問看護師やホームヘルパーが訪問して適切な処置を行います。病気を抱えていても24時間365日安心して在宅生活を送ることができます。看護師が在籍しないタイプのサービスもあります。

利用者が施設に通ってサービスを受ける「通所サービス」

デイサービス[通所介護]
要介護のみ
利用者がデイサービスセンターに通い、食事や入浴、レクリエーションなどの支援を受けるサービスです。要介護者の引きこもりを防止して、気分転換を図る目的もあります。他人との関わりをもつことでQOL(生活の質)向上にも期待できます。

デイケア[(介護予防)通所リハビリテーション]
要支援・要介護
通所リハビリテーション施設にて、食事や入浴などの日常生活の支援やリハビリを日帰りで受けます。

地域密着型デイサービス[地域密着型通所介護] ※地域密着型
要介護のみ
利用者が地域密着型通所介護の施設に通い、日常生活の援助やレクリエーション等を受けるサービスです。

療養デイサービス[療養通所介護] ※地域密着型
要介護のみ
看護師による医療的ケアを常時必要とする難病や認知症、脳血管疾患後遺症などを抱える重度要介護者を対象にしたデイサービスです。医師や訪問看護ステーションと連携してサービスを提供します。

認知症対応型デイサービス[認知症対応型通所介護] ※地域密着型
要支援・要介護
認知症患者を対象にしたデイサービスです。日常生活の支援やリハビリ、レクリエーション等を行います。認知症の進行を遅らせる効果にも期待がもてるサービスです。

短期で施設に宿泊する「ショートステイサービス」

ショートステイ[(介護予防)短期入所生活介護]
要支援・要介護
介護老人福祉施設などに短期間(連続30日まで)入所し、日常生活の援助やレクリエーション等のサービスを受けます。家族の介護負担を軽減する目的でも利用可能です。

ショートステイ[(介護予防)短期入所療養介護]
要支援・要介護
医療機関や介護老人保健施設などに短期間入所し、日常生活の援助以外に医療的ケアや介護、リハビリなどを受けます。

施設で生活をする「施設サービス」

特別養護老人ホーム[特養]
原則要介護3以上
常に介護が必要な状態にある人を受け入れ、日常生活の援助やリハビリ、レクリエーション等を行う終身利用が可能な施設です。やむを得ない事情があるケース以外は、要介護3以上の人しか入れません。

介護老人保健施設[老健]
要介護のみ
在宅復帰を目指す人を対象とし、主にリハビリや医療的ケアなどを提供する施設です。在宅復帰を目標としているため、原則3カ月間しか入所できません。

(介護予防)特定施設入居者生活介護
要支援・要介護
指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホームなどを指し、日常生活の援助やリハビリなどの提供があります。ほとんどの場合、施設のスタッフが介護サービスを提供します。

介護療養型医療施設[療養病床]
要介護のみ
長期の療養が必要な要介護者を受け入れ、医療やリハビリ、介護を提供します。介護療養病床は2024年3月に廃止予定です。

介護医療院
要介護のみ
2018年4月に創設された施設形態で、廃止予定の介護療養病床の代わりとなる施設です。長期の療養を必要とする要介護者に対し、医療やリハビリに加え日常生活の支援も行います。

自宅の環境を整えるサービス

(介護予防)福祉用具貸与[介護用品レンタル]
要支援・要介護
車椅子や介護ベッド等をレンタできるサービス。福祉用具がレンタルできる事業所には福祉用具専門相談員が配置され、利用者の状態や自宅の状況に合った福祉用具の選択を支援してくれます。

特定(介護予防)福祉用具販売[介護用品購入]
要支援・要介護
衛生面でレンタルに向かない腰掛便座や入浴用いす等が介護保険の対象です。適切な福祉用具の利用は、利用者の自立を促すとともに介護者の負担軽減にも役立ちます。

(介護予防)住宅改修[介護リフォーム]
要支援・要介護
住宅改修では、廊下に手すりをつけたり段差をなくしたりができます。住宅改修は要介護者のできることを増やし、ひいては家族の介護負担軽減にもつながるサービスです。

必要なサービスは同じじゃない!親や家族の状況で選択しよう

必要なサービスは人それぞれ違うっポ。親や家族の状況によって選択してね。

上記で解説した介護保険サービス以外にも、保険外サービスや自治体の取り組みがあります。組み合わせて利用するとよいでしょう。

主な保険外サービス一覧

自治体による主なサービス一覧

  • ​生活支援サービス・ヘルパー派遣(ゴミ出し、買い物同行など)
  • 介護用品の支給(紙おむつ、尿取りパッド、おしりふき、マスク、防水シートなど)
  • 寝具乾燥消毒サービス
  • 緊急通報装置の貸与
  • 火災安全器具給付
  • 家具転倒防止器具の取付
  • 認知症対策(GPS貸与、徘徊高齢者探索サービス)
  • 介護リフォーム(介護保険外)
  • 除排雪サービス
  • バスなどの割引・無料券配布
  • 保険外サービス助成

高齢者の一人暮らし、老老介護のケース

高齢者の一人暮らしでは、何かしらのサービスを利用しない限り、家のことや自分のことはすべて自分自身でやらなければなりません。老老介護だと、自分のことに加えて配偶者(夫・妻)の世話も必要です。

このようなケースでは、訪問介護や通所系サービス、ショートステイなどの介護サービスを利用しながら、不足分は保険外サービスや自治体のサービスを利用するとよいでしょう。

要介護者の食事の用意が難しい場合は、配食サービスの利用もおすすめです。配達時の安否確認にもなる人気のサービスです。

また各自治体では、紙オムツの支給や緊急通報システムの貸し出し、送迎サービスなど高齢者を対象としたサービスを実施しています。
ただし、住んでいる地域によって提供しているサービスは異なるので、市町村窓口への問い合わせをおすすめします。

一人暮らしの人や老老介護世帯の場合は、老人ホームへの入居も検討する必要があります。ただし、施設への入居には本人の意向を確認することが大事です。

要介護者本人や家族が納得できる介護方法を選択しましょう。

家族と同居する在宅介護のケース

一人暮らしや老老介護の世帯でもいえることですが、家族が同居する在宅介護は、まずは自宅の環境を整えることを検討しましょう。

住宅改修(介護リフォーム)は、要介護者のできることを増やします。自宅内だけでなく玄関アプローチの段差を解消したことで、引きこもりがちだった親が外出するようになったという事例もあります。

また、適切な福祉用具を利用すれば、高齢者の自立を促すとともに介護者の負担軽減にも役立つでしょう。

また、日中家族がいない時間帯はデイサービスや訪問介護を利用したり、センサーやカメラを活用した保険外の見守りサービスを利用したりすることも有効です。

ただし、親の要介護度や認知症の有無、家族の介護の関わり方などによって、必要なサービスは違います。

老人ホームに入居するケース

家族の事情や親の希望、要介護度によっては、老人ホームを検討することもあるでしょう。
老人ホームには種類が多く、自立から入居できる有料老人ホームや、公的な介護施設である特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、高齢者住宅であるサービス付き高齢者向け住宅などさまざまです。

入居費用や月々の費用など、それなりにお金はかかるので、十分に検討したうえで入居施設を決定しましょう。

いずれにしても、介護保険サービスの利用にはケアプランが必要です。気になるサービスがある場合は、担当ケアマネに相談しましょう。

介護保険サービスを活用して、無理のない介護生活を

親に介護が必要になっても介護保険サービスを有効に使えば、家族の介護負担を軽減できるっポ。さらに、介護のために仕事を辞めること、いわゆる介護離職の回避も可能になるよ。

初めての介護ではわからないことも多いし、先の見えない介護生活は、親だけでなく家族にとっても大きなストレスになるんだ。
無理のない介護ができるように、さまざまな介護サービスを上手に活用してね。

*自治体や事業所により、ここで説明した内容と異なる場合があります。詳細に関しては、必ず各自治体・事業所にお問い合わせください。

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著者:柴田 まみ

介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉主事任用資格保有
特別養護老人ホームのユニットリーダーや、デイサービスの生活相談員に従事し高齢者福祉に携わる。特にデイサービスでは、介護をするご家族とのやり取りから在宅介護の難しさを実感。現場での経験を活かし、現在、介護関連の記事を執筆中。できるだけわかりやすい言葉を使って、介護の知識がない人でも理解しやすい文章を心がけている。座右の銘は、継続は力なり!

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