夜間対応型訪問介護は、夜間帯にヘルパーが自宅に来てくれる介護サービスです。
昼間に利用できる介護サービスはたくさんありますが、夜中や早朝に利用できるサービスは限られます。特に要介護度が高くなると、夜の時間帯に対する不安は少なくありません。
夜間対応型訪問介護とはどのようなサービスなのか、利用できる対象者や料金、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。
夜間対応型訪問介護は、不安な夜に対応してくれる介護サービスだっポ。
夜間対応型訪問介護とは、昼間の訪問介護サービスと同じように、夜間帯の要介護者の在宅生活を支えるための介護サービス。
介護に関する夜間の不安を和らげたり、家族の介護の負担を軽減することが可能です。
なお、夜間サービスの「夜間」とは最低限夜22時から朝6時までを含みます。実際のサービス提供時間は各事業所に委ねられており、事業所によって異なるため確認が必要です。
昼間の介護サービスと併用し、夜間対応型訪問介護サービスを利用することで24時間体制での見守り介護、在宅介護が可能となります。
夜間対応型訪問介護で提供されるサービスは大きく分けて、以下の3つです。
決まった時間に巡回する訪問介護サービスです。
1回の訪問は30分程度となり、排泄介護や寝返り介助、さらにバイタルチェックや安否確認など、利用者のさまざまなニーズに対応します。
定時の巡回訪問サービスを利用する場合は、あらかじめケアプランの週間サービス計画表に夜間対応型訪問介護を組み込むことが必要です。
利用者からの通報で夜間訪問が必要になった場合に、介護スタッフ等が訪問するサービスです。転倒して自力で起き上がれないときや体調不良の訴えなどに対応します。
一人暮らしの高齢者はもちろん、離れて暮らす家族も安心の通報システムです。
設定されている夜間の時間内なら何度でも利用可能ですが、「1回につきいくら」というように、その都度料金がかかります。
ケアコール端末を持つ利用者からの通報を受けて、オペレーターが対応するオペレーションサービスです。
必要に応じて自宅に介護スタッフを向かわせたり(随時訪問サービス)、主治医に指示を仰いだり、緊急時は救急車の要請をしたりします。
オペレーションセンターに配置されるのは、看護師や介護福祉士、医師や保健師などの有資格者なので安心です。
また、利用者の訴えに対しどう対処すべきかなどを提案したり、話を傾聴し利用者の不安な気持ちを受け止めたりすることもあります。
通報できるシステムもあるのね! それなら一人暮らしの高齢者も心強いわ。
どんな人が利用するといいのかな?
要介護度が重いと特に夜間が心配だっポ。
夜間対応型訪問介護サービスに向いている人は、一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦のみの世帯などです。家族が離れて暮らす場合、家族にとっても安心です。
また、夜間のおむつ交換といった介護負担が大きい同居家族も利用を検討するとよいでしょう。
夜間対応型訪問介護のメリットは主に2つあります。
夜間、何かあったときには通報することが可能です。
一人暮らしの要介護者にとって、昼間に比べて人の目が届きづらい夜間は、不安を抱える時間帯となります。
本人はもちろん、離れている家族も「夜、何かあったらどうしよう」と心配しているケースが少なくありません。
さらに、老老介護をしている家庭では、介護中に2人で一緒に転倒してしまったり、何かあったときにどうすべきか介護者が判断できなかったりという不安もあるものです。
近くに頼れる人がいないケースでは、助けを求めることすらできない状況も十分に考えられます。
困ったときや緊急時にいつでも通報できるオペレーションシステムのある夜間対応型訪問介護なら、「夜間であっても誰かに相談できる」という安心感が持てます。
ケアコール端末は要介護者にはもちろんのこと、介護者にも「心のお守り」となるはずです。
要介護者と同じように、介護をする家族にも生活があります。介護者が日中仕事をしていたり、子育てをしていたりするケースも少なくありません。
忙しい生活の中でおこなう夜間の排泄介護や寝返り介助などは、想像以上に介護者の介護疲れを引き起こします。
夜間の訪問介護サービスを利用すれば、要介護者だけでなく介護者も心身が安定した介護生活を送ることができるのです。
確かに夜間に家族が介護をすると思ったら大変よね……。家族を睡眠不足にさせないためにも、選択肢に入れたいサービスね。
ただし、メリットばかりに注目して夜間対応型訪問介護の利用を決めるのはおすすめできないよ。
デメリットにも目を向けるっポ。
利用者や家族の安心を得られる夜間対応型訪問介護ですが、利用する際には注意すべきデメリットもあります。
夜間対応型訪問介護は、「基本料金+訪問回数ごとに利用した料金」によって月々の利用料金が決まる仕組みです。
そのため、月に何度もヘルパーに来てもらうと、その分の料金が加算されて請求額が予定より高くなってしまうことがあります。
支給限度基準額を上回ってしまう恐れもあるので、計画的な利用が大切です。
夜間対応型訪問介護はその名の通り、夜間の利用を想定したサービスです。
そのため、18時から翌朝8時以外の日中にサービスを利用すると「24時間通報対応加算」が付加され、料金が高くなってしまいます。日中にサービスを利用する際は注意が必要です。
重度の認知症の人だと利用は、難しいような気がするわね……。
利用料金の仕組みをある程度理解していないと心配かもしれないね。
あとデメリットとして、夜間対応型訪問介護は事業所数が少なくて普及していないから近所に事業所がない可能性もあるんだ。
厚生労働省による2019年の調査によると、夜間対応型訪問介護を提供するのは172事業所のみだっポ。
どんな人が夜間対応型訪問介護を利用できるのかな?
まず、サービスの利用を希望する対象者が要介護認定で要介護1以上と認定されていることが、第一の利用条件です。
そのため、要支援や自立の人はサービスを利用できません。
つぎに、利用する夜間対応型訪問介護サービス事業所は、利用者が住む地域と同じエリアにあることが必要です。
夜間対応型訪問介護は「地域密着型サービス」です。
地域密着型サービスは、たとえばA町に住んでいる人であればA町内で利用できるサービスとなるため、B町に住んでいる人ならB町でサービスを受けなければなりません。
要介護認定を受けている高齢者が住み慣れた場所で生活をしていくためにある、より地域に根差したサービスが地域密着型サービスなのです。
夜間対応型訪問介護は夜中でも安心できるサービスだから、利用を検討したい人もきっと多いっポ。
気になる料金設定はどうなっているのかな?
夜間対応型訪問介護は、各事業所のオペレーションセンターの有無で利用料が異なります。
利用者が少なく、訪問スタッフだけで利用者の要請に対応できると判断される事業所では、オペレーションセンターの設置義務はありません。
ただし、原則として定期巡回サービスをおこなう訪問スタッフが、利用者の通報に対応可能である場合に限られます。
月額基本料金 | 989円 |
---|---|
定期巡回(1回) | 372円 |
随時訪問(1回/スタッフ1人) | 567円 |
随時訪問(1回/スタッフ2人) | 764円 |
出典:介護報酬の算定構造(厚生労働省)
*1単位10円、1割負担で計算。地域や負担割合により金額は異なる
オペレーションセンターを設置する事業者を利用した場合、月額基本料金に、定期巡回サービスの回数や利用者からの要請による随時訪問サービス費が加算されます。
たとえば1カ月の間に定期巡回サービスを4回、随時訪問サービスを1回利用した場合の料金は以下になります(1単位10円、1割負担の場合)。
月額基本料金 989円
定期巡回サービス 1,488円(372円×4回)
随時訪問サービス(スタッフ1人の場合) 567円(567円×1回)
1カ月の合計費用 3,044円
一方、オペレーションセンターを設置しない事業所を利用する場合は、1カ月の定額料金となります。
月額料金となるため、他の夜間訪問サービスを利用することはできません。
月額基本料金 | 2,702円 |
---|
出典:介護報酬の算定構造(厚生労働省)
*1単位10円、1割負担で計算。地域や負担割合により金額は異なる
また、夜間対応型訪問介護では、事業所のオペレーションセンターの有無に関わらず、利用者が通報する際に必要なケアコール端末の配布をするものとされています。
なお、ケアコール端末の貸与に関する利用者の費用負担はなく、設置工事も電話回線さえあれば無料です。
同じ地域の事業所しか利用できないなら、あまり選べないかもしれないわ…。
利用するときには、どんな事業所があるのか調べて料金を確認してみるのがよさそうね。
つぎに、月の途中で夜間対応型訪問介護の契約をしたときの料金についてです。
基本的にサービスの月額利用料は日割り計算となるため、上記の基本料金を規定の30.4日で割り、1日の利用料を計算します。
あり | 33円 |
---|---|
なし | 89円 |
*1単位10円、1割負担で計算。地域や負担割合により金額は異なる
月の途中からサービスを利用した場合には、上記の日割り料金に利用した日数をかけた金額となります。
月額料金を1カ月分支払うわけでないので、安心していつでもサービスをスタートすることが可能です。
これらの料金は、事業所の所在地やサービス提供体制なんかによって異なるよ。
それに、所得によっては自己負担率が2~3割になるから注意するっポ。
夜間対応型訪問介護を利用したいと思ったら、どんな手順が必要なのかしら?
(1)要介護認定を受ける
要介護認定を受けていない人は、市町村の介護保険担当窓口に要介護認定の申請をしましょう。
認定調査後、要介護1以上と認定されれば、夜間対応型訪問介護を利用することができます。
(2)ケアプランの作成
要介護に認定されると、担当ケアマネジャーがケアプラン(介護サービスの計画書)の作成や、必要な介護サービスを検討します。そのときに、夜間の介護サービスを利用したい旨を伝えましょう。
ケアマネジャーは利用者の状況を把握したうえで、適切なサービスや訪問回数、訪問時間などをケアプランに反映します。
(3)サービス事業所と契約
利用者やその家族が納得するケアプランが完成したら、夜間訪問介護事業者と契約を結び、サービス開始となります。
(4)サービス利用スタート
サービスがはじまると、必要に応じて夜間にスタッフが自宅を訪問します。
通常、深夜であれば利用者や家族は鍵を閉めて就寝します。そんなときにはスタッフが来るたびに鍵を開けて招き入れなければならないのでしょうか。
その場合は、キーボックスを貸し出すこともあります。
キーボックスとは、中に鍵を入れて暗証番号で管理するもので、これがあればスタッフは必要なときには自由に出入りができるため、家族を起こすこともありません。
事業所が鍵を預かるケースもあるので、詳しくは利用する事業所に問い合わせてください。
夜間利用できるサービスは、夜間対応型訪問介護のほかにも、
定期巡回・随時対応型訪問看護があるよ。
夜間サービスの利用を希望するなら、必要なサービス内容や料金を確認して、どのサービスが適しているかを担当ケアマネジャーに相談して検討するっポ。
*自治体や事業所により、ここで説明した内容と異なる場合があります。詳細に関しては、必ず各自治体・事業所にお問い合わせください。
著者:柴田 まみ
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