根本匠厚生労働相は4日の閣議後記者会見で、認知症の当事者を支える施策の拡充に向けて新たに策定する「大綱」をめぐり、素案に盛り込んでいたKPIを取り下げる方針を表明した。
新たな大綱は「予防」を1つの柱に据えたもの。厚労省は先月16日に公表した素案で、「70歳代での認知症の発症を10年間で1歳遅らせる」と初めて打ち出していたが、これを数値目標として掲げることはやめる。あわせて、「70代の認知症の割合を2025年までに6%低下させる」といった素案の記載もなくす。
関係者の懸念に配慮した格好だ。やむを得ず認知症になった人が落第者とみなされてしまう − 。そんな指摘が相次いでいた。例えば認知症の人と家族の会。鈴木森夫代表理事は先月22日の会見で、「予防、予防とあんまり強調されると、認知症になった人が『努力が足りなかった』とか『自己責任だ』とか捉えられないか」と心配していた。
根本厚労相は4日の会見で、新たな大綱に認知症の予防の定義を書き込むと説明。「認知症にならないという意味ではなく、認知症になるのを遅らせる、認知症になってからの進行を緩やかにする、という意味であることを明記する」と述べた。加えて、「予防の取り組みは、認知症の人の尊厳を守り、認知症の人とそうでない人が同じ社会でともに生きる『共生』の理念のうえで進めることが大前提」と強調した。
新たな大綱は既存の国家戦略「新オレンジプラン」に代わるもの。政府は予防とともに「共生」を大きな柱に位置付ける考えだ。4日夕の自民党の部会に修正案を提示する。今月中の閣議決定を目指し詰めの調整を進めていく。
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