「今後の福祉政策を考えるにあたり、従来の枠組みの延長・拡充のみでは限界がある」。基本的な認識としてそう明確に書いている。
多様化・複雑化が進む地域の福祉ニーズに対応していく方策を話し合ってきた厚生労働省の有識者会議が、16日の会合で中間報告をまとめた。
その人の課題を分野横断的に受け止める「断らない相談」や、社会とのつながりを保ってもらう伴走型の「参加支援」を、国として後押ししていく方針を打ち出している。あわせて、住民らが相互に支え合う様々な関係性が地域で自然に生まれていく環境の整備、コミュニティ形成の支援にも一段と力を入れるとした。
これらの全国的な展開に向けて、「新たな制度的枠組み」の創設を検討していくと明記。介護、障害、子育て、生活困窮といった従来の縦割りを超えた包括的な体制を市町村などが作りやすい土壌を作る意向を示した。
具体策の柱として、既存の各制度の範囲内だけに縛っている国の交付金の使途についてルールを見直し、現場の実情に応じてより柔軟に、一体的に使えるようにすることを掲げている。
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横断的な「断らない相談」の展開へ新制度を創設 厚労省、来年にも法改正へ
厚労省はこれから年末にかけてディテールを詰めていく考え。中間報告には当面の検討課題として、「断らない相談」の担い手の人員配置・資格要件のあり方、既存の各種計画(例えば介護保険事業計画)との関係の整理、都道府県が担うべき役割などをあげている。
年内には「新たな制度的枠組み」の骨格を固め、来年の通常国会に関連法の改正案を提出する計画。早ければ2021年度にも実現できるよう調整にあたるという。
「個人や世帯を取り巻く環境は大きく変化した」。中間報告にはそう記載されている。
1人暮らしや1人親が増え、伝統的な共同体の機能が徐々に弱体化していくなかで、雇用の不安定化や経済格差の拡大が進行した。直面する生きづらさは千差万別。生活のリスク・課題が複合化し、いわゆる「8050問題」やひきこもり、子どもの貧困など、既存の制度だけでは必ずしも十分にカバーしきれないケースが顕在化してきた。
今回、厚労省はこうした状況に対応すべく動き出した形だ。
各制度の交付金の使途が弾力化されれば、例えば地域包括支援センターの社会福祉士やケアマネジャーらが子育てや生活困窮の相談を受ける自由度も増す。少なくない専門職、関係者の活動の幅が広がる可能性があり、その意味でこの改革はパラダイムシフトのきっかけとなるポテンシャルを秘めている。厚労省は中間報告で以下のように構想を説明した。
「より包括的な支援体制を、各自治体の状況に合わせて整備することを後押しする観点から、属性や課題に基づいた既存の制度の縦割りを再整理する」
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