地震や豪雨などの災害時、介護施設で暮らす高齢者にスムーズに避難してもらうためには何が必要か? 厚生労働省と国土交通省が共同で新たな検討会を立ち上げ、7日に初会合を開催した。【青木太志】
災害による混乱のさなか、寝たきりだったり認知症だったりする高齢者を素早く避難させるのは至難の業だ。現場の人員配置は平時からギリギリで職員に余裕はない。避難所はベッドもないなど環境が整っておらず、本当に連れていくべきか否かの判断すら極めて難しい。
今年7月にも惨事が起きたばかりだ。球磨川が流れる熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」。入所者65人のうち、逃げ遅れた14人が亡くなった。施設側は厳しい状況下で懸命に対応していたことが分かり、それが現行の支援策の不十分さを改めて浮き彫りにした。
厚労省と国交省はこの日、千寿園のケースも踏まえた課題として、
○ 有事にマンパワーを参集できないこと
○ 屋外の避難先への避難が現実的に難しいこと
○ 施設内の上層階への避難にも時間を要すること
などを提示。今後の論点として、その実効性を高める観点からの避難計画の見直し、あるいは作成のサポート、十分な人員体制の確保、施設のハード面の強化などを進める方策をあげた。施設で中心的な役割を担う「防災リーダー」を育成すること、地域の他の施設・事業所との連携を深めること、関係団体の更なる協力を得ることも議論していくとした。
「今後の防災対策で重要なのは避難と福祉の連結。災害は『弱いものいじめ』と言われるが、そういう社会と決別したい」。検討会の座長を務める跡見学園女子大学の鍵屋一教授はそう語った。国交省、厚労省は年度内に報告書をまとめ、その後の対策強化につなげたい考えだ。
関連記事
新着記事