厚生労働省は30日、介護事業所の経営状況を把握する実態調査の結果を公表した。【青木太志】
収支差率の低下が明らかになった。昨年度の全サービスの平均は2.4%。一昨年度の3.1%から0.7ポイント下がった。特に訪問介護や居宅介護支援、グループホーム、看護小規模多機能などの下げ幅が大きい。結果は以下の通り。
人件費率の高まりが大きな要因とみられている。一昨年度と比べると、全サービスの平均で0.4%上昇。例えば看護小規模多機能では1.2%、グループホームでは2.4%上がっていた。
第31回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会資料
深刻な人手不足を背景に、事業所が職員の確保に向けた投資を増やしている構図。支出では「委託費」も膨らんでおり、人材紹介などを行う企業への支払いが影響を与えている可能性もある。
厚労省の担当者は、「事業所の収支は総じて悪化した。経営環境はより厳しくなっている」との見方を示した。
この調査は介護保険の全サービスが対象。3万超の事業所に昨年度の経営状況を尋ね、1万4376事業所から有効な回答を得ている。
結果が及ぼす影響はかなり大きい。来年4月に控える次の介護報酬改定をめぐり、各サービスの単位数などを見直す際に重要な指標として使われるためだ。今後、データが出たことで水面下の調整も本格化していく。
今回の「総じて悪化」という結果は、次期改定での報酬増を訴える勢力にとって1つの論拠になるかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大が及ぼした影響もあり、現場の関係者らは更に攻勢を強めそうだ。全体の改定率は年内に、新たな単位数は年明けに公表される予定。
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