今回の介護報酬改定で新設される「科学的介護推進体制加算」− 。国の新たなデータベース「LIFE」への情報提供などが要件だ。
新年度が目前に迫るなか、厚生労働省は算定ルールの詳細を明らかにする通知を重ねて発出している。その内容を伝えるこれまでの記事を改めてまとめた。【Joint編集部】
利用者の状態やサービスの内容などの情報を幅広く蓄積していくデータベース。今は「CHASE」と呼ばれているが、従来の試行段階を脱する新年度からより分かりやすい名前へ変えられる。Long-term care Information system For Evidenceの頭文字が用いられた。政府はこのLIFEを、自立支援・重度化防止の効果が高い「科学的介護」の基盤として育てたい考え。
LIFEの活用には利用申請が必要。専用のWebサイトから基本情報などを送り、IDとパスワードの発行を受けることがファーストステップだ。今年度中に利用申請を出すなら、既存のCHASEのサイトから基本情報などを送る。新年度からはドメインの異なるLIFEのサイト(https://life.mhlw.go.jp)で行う。
厚労省は通知で、利用申請を受けたらパスワードなどを明記した圧着はがきを簡易書留で送ると説明。そのうえで以下のようにアナウンスしている。
「通常、毎月25日までに利用申請があった分のはがきを翌月上旬に発送する」「4月からLIFEの利用を開始する場合は、3月25日までに利用申請を行う必要がある」
介護の新データベース「LIFE」、まず利用申請を 早期対応なら来月25日まで
LIFEの活用を現場に促す新たなインセンティブ。特養や老健、特定施設、グループホーム、通所介護、小規模多機能など多くのサービスが対象だ。ミニマムで利用者1人あたり40単位/月となっている。
科学的介護の新加算、利用者ごとに40単位 施設や通所など対象 最大60単位
算定要件は大きく2つ。1つ目は、全ての利用者の心身の基本的な情報をLIFEへ送ること。情報提供の項目をまとめた様式の確定版も既に示されている。
情報提供の期日はサービス提供月の翌月10日まで。LIFEのサイトでデータを直接入力する方法のほか、請求ソフトからCSV連携で送信する方法もある。情報提供すべき時期の詳細は以下の通りだ。
○ 既存の利用者については、加算の算定を始める月の翌月10日まで
○ 新規の利用者については、サービスを始めた月の翌月10日まで
○ 2回目以降の情報提供は、少なくとも6ヵ月ごとに翌月10日まで
○ サービスを終了する利用者について、その月の翌月10日まで
※ 情報提供すべき月にできない時は、直ちに届け出が必要。この場合、利用者全員について加算を算定できない。
新年度に限った猶予措置も以下の様に設けられた。
○ 今年4月から9月末日までに加算の算定を始める場合は、その月の5ヵ月後の翌月10日までに情報提供することも可能
○ 今年10月から来年2月末日までに加算の算定を始める場合は、来年4月10日までに情報提供することも可能
※ 猶予措置を使う場合、その理由や提出予定時期などを記載した計画の策定が必要。この計画の届け出は不要だが、指定権者に求められた場合は提出しなければならない。
介護報酬の“LIFE加算”、情報提供は6ヵ月ごと 猶予措置も 厚労省通知
2つ目の要件は、LIFEからのフィードバックなどを活用し事業所内でPDCAサイクルを回していくこと。事業所は、利用者の自立支援・重度化防止を図る「サービス計画」を作らなければいけない。実践したサービスを多職種共同で検証し、「サービス計画」の見直しにつなげる取り組みも不可欠となる。この“PDCA要件”の概要は以下の通りだ。
○ Plan(計画)
利用者の心身の状況などに関する基本的な情報に基づき、適切なサービスを提供するための「サービス計画」を作成する
○ Do(実行)
サービスの提供にあたっては、「サービス計画」に基づいて、利用者の自立支援・重度化防止に向けた介護を実施する
○ Check(評価)
LIFEへ提出する情報、フィードバックの情報なども活用し、多職種が共同して、事業所の特性やサービスのあり方について検証を行う
○ Action(改善)
検証結果に基づき、利用者の「サービス計画」を適切に見直し、事業所全体として、サービスの質の更なる向上に努める。
厚労省は通知で、「PDCAサイクルにより、質の高いサービスを実施する体制を構築するとともに、その更なる向上に努めることが重要」と指摘。LIFEへの情報提供だけでは加算は取得できない、と記載している。
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