来年度の介護報酬改定をめぐり、サービスごとに定められている運営基準の見直しの内容が15日に正式決定された。【Joint編集部】
武見敬三厚生労働相が社会保障審議会に改正案を諮問。同会はこれを「了承する」と答申した。
新たな運営基準は今月中にも公布される見通し。ここでは介護施設(特養、老健、介護医療院)の改正内容をまとめていく。施行は4月1日。
日頃から連携できる協力医療機関の指定の義務化が大きな柱。厚労省の狙いは、高まる医療ニーズに対応できる体制の構築につなげていくことだ。このほか、生産性向上を具体化する委員会の設置の義務化なども盛り込まれた。今回、老健と介護医療院に固有の見直しはない。改正内容は下記の通り。
(1)協力医療機関との連携体制の構築
以下の要件を満たす協力医療機関を定めることを義務付ける。その際、3年の経過措置期間を設ける。複数の医療機関を定めることで要件を満たすことも差し支えない。
◯ 入所者が急変した場合などに、医師、または看護職員が相談対応にあたる体制を常時確保していること
◯ 診療の求めがあった場合に、診療を行う体制を常時確保していること
◯ 入所者が急変した場合などに、当該施設の医師、協力医療機関の医師らが診療を行い、入院を要すると認められた入所者の入院を、原則として受け入れる体制を確保していること
1年に1回以上、協力医療機関との間で、入所者が急変した場合などの対応を確認するとともに、協力医療機関の名称などについて、指定権者に届け出なければならないこととする。
また、入所者が協力医療機関などに入院した後に、病状が軽快して退院が可能となった場合は、速やかに再入所させられるように努めることとする。
(2)新興感染症の発生時などに対応する医療機関との連携
新興感染症の発生時に、施設内の感染者の診療などに迅速に対応できる体制を平時から構築するため、あらかじめ、感染者に対応する協定締結医療機関(第2種協定指定医療機関)との間で、発生時の対応を取り決めるよう努めることとする。
また、協力医療機関が第2種協定指定医療機関の場合は、その医療機関との間で、新興感染症の発生時などの対応について協議することを義務付ける。
(3)ユニットケアの質の向上に向けた体制の確保
ユニット型施設の管理者は、「ユニットケア施設管理者研修」を受講するよう努めなければならないこととする。
(4)生産性向上の方策を検討する委員会の設置の義務付け
介護現場の生産性向上の取り組みを推進する観点から、現場の課題を抽出・分析したうえで必要な対応を検討し、事業所全体で継続的に業務改善に取り組む環境を整備するため、利用者の安全、サービスの質の確保、職員の負担軽減に資する方策を検討する委員会の設置を義務付ける。その際、3年間の経過措置期間を設けることとする。
(1)小規模特養の配置基準の緩和
離島や過疎地域の小規模特養の効率的な人員配置を可能とする観点から、以下の見直しを行う。
◯ 離島・過疎地域の定員30名の特養にショートステイが併設されている場合、そのショートステイの医師について、特養の医師によって利用者の健康管理が適切に行われると認められれば、置かないことができることとする。
◯ 離島・過疎地域の定員30名の特養に通所介護、地域密着型通所介護、ショートステイなどが併設されている場合、併設事業所の生活相談員、栄養士、管理栄養士、機能訓練指導員について、特養の生活相談員、栄養士、管理栄養士、機能訓練指導員によって利用者の処遇が適切に行われると認められれば、置かないことができることとする。
◯ 離島・過疎地域の定員30名の特養に小規模多機能、看護小規模多機能が併設される場合、特養のケアマネジャーについて、小多機、看多機のケアマネによって利用者の処遇が適切に行われると認められれば、置かないことができることとする。
(2)緊急時などの対応方法の定期的な見直しの義務付け
特養があらかじめ定めることとされている緊急時などの対応方法について、配置医師、協力医療機関の協力を得て定めることとする。また、1年に1回以上、見直しを行うことを義務付ける。
(1)管理者の兼務範囲の明確化
管理者の兼務について、一定の条件のもとで離れた場所にある事業所でも認められるようになる。
現行の運営基準で管理者は、兼務不可の常勤専従が原則。管理上支障がない場合は同一の敷地、または隣接する敷地にある事業所での兼務が可能とされている。
今回の改正では、同一・隣接の敷地の事業所でなくても差し支えないことがルール上明確になる。あわせて管理者の責務が、
“サービス提供の現場を適切に把握しつつ、業務・職員の一元的な管理、指揮命令を行うこと”
などと再定義される。こうした責務を果たすことを要件として、離れた事業所の管理者・職員としても従事できるようになる。
(2)「書面掲示」規制の見直し
運営規程の概要など、重要事項をウェブサイトで公表することが新たに義務付けられる。
現行では事業所内での書面掲示が求められるが、これに加えてネットでの情報提供も必須となる。1年間の経過措置を設け、2025年度から義務化が適用される。
重要事項の公表方法としては、法人のホームページや情報公表システムの活用などが想定されている。
関連記事
新着記事