家族が介護施設に入居している人は、施設に対してさまざまな感情を抱いています。
「感謝の気持ちしかない」という人もいるでしょうが、なかには「思っていたのと違った」「もっとこうしてほしい」といった不満をもっている人もいるはずです。
家族として当然の感情ではありますが、一歩間違えると「モンスター」と呼ばれてしまうかもしれません。モンスターファミリー・モンスター家族にならないための注意点を解説します!
モンスターファミリーについて、特別養護老人ホームの元スタッフが教えてくれるっポ!
モンスター? なんか怖いわね…。
「モンスターペアレント」や「モンスターペイシェント」という言葉を耳にしたことはありませんか。
前者のモンスターペアレントは教育現場で、後者のモンスターペイシェントは医療現場において、理不尽な要求やクレームを訴える人のことです。
そしていま、介護現場でも「モンスターファミリー」「モンスター家族」と呼ばれる家族が増加傾向にあります。モンスターファミリーといっても、さまざまなタイプがいます。
モンスターファミリーは主にこの3タイプだっポ。
私が当てはまらなければいいけれど…。
介護施設で生活をする利用者の息子や娘は40~60歳代の人が多いので、介護職員より年上であることも珍しくありません。
そのうえ、いままで自宅で介護をしてきた人の場合、「自分の介護方法が正しい」と思う人も多いようです。
そのため、介護職員を信用しないで在宅での介護方法を押し付けたり、細かい要求をしたりする傾向があります。
普段は介護職員に任せきりで面会やケアプラン会議には顔を出さないのに、口ばかり挟むタイプの家族もいます。
たとえば、ほとんど面会に来ないために利用者の筋力低下に気づかず、たまに訪れた面会の際に「どうして車椅子を使っているの?」と大騒ぎするのがこのタイプです。
介護保険制度の創設以降、特に増えているのがこのタイプのモンスターファミリーです。
介護保険制度が創設される前、いわゆる措置の時代では必要な介護サービスを市町村が決めていました。そのため、「介護してもらっている」という意識が利用者はもちろん、家族にもあったようです。
しかし、介護保険制度が確立されていくうち、「利用者はお客様」というコンセプトの介護施設が増え、利用者の意識も変化していきます。
その結果、「お金を払っているのだから、やってもらって当然」と、理不尽な要求をするモンスターファミリーが増えたのです。
でも、お金を払って老人ホームを利用するんだから家族の希望も聞いてほしいわよね?
希望を聞いてあげたいと思っている介護施設だっていっぱいあるっポ。
でも現実的にできないこともあるんだよ。
「こちらはお金を払っているのだから」と、満足のいくサービスが受けられるだろうと考える家族もいるかもしれません。
しかし、介護施設はホテルや旅館とは違うので、過度な期待は禁物です。
特に、介護保険や税金を使い、限られた予算のなかで運営している介護保険施設(特養や老健など)では、有料老人ホームと違い希望通りのサービスが受けられる可能性は残念ながら低いです。
介護保険施設にはさまざまな条件が設けられているため、介護職員が利用者や家族の希望を叶えてあげたくても対応できないケースもあります。
そうよね。ホテルと違ってなんでも希望を叶えてくれるわけではないわよね…。
そうだっポ!
理不尽な要求をするモンスターファミリーにならないためにも、NG行動をチェックしてね。
「利用料をもっと安くしてほしい」「他の人とは違う特別なケアをして」「もっと良い部屋を与えてほしい」などの要求は、モンスターファミリーと呼ばれる理由に相当します。
自分や自分の身内だけが得をするような要求はしないようにしましょう。
在宅介護をするうえで「この方法が一番良い」と考え、実際にその方法で行ってきたという人も多いでしょう。しかし、自宅と同じように介護することを施設に求めてはいけません。
たとえば、「家では寝る前に入浴していたから、お風呂は夜に入れてほしい」「毎日散歩をさせてほしい」など、家にいたときと同じようにケアしてほしいという要求は難しいと考えた方が賢明です。
老人ホーム側とのコミュニケーションはとても大切です。
その証拠に、施設のなかには月1回の面会を入居条件にしているところもあります。面会には利用者の顔を見る以外にも、職員から利用者の近況報告や介護方針の相談をするなどの目的もあるからです。
できる限り施設に足を運び、施設に任せきりにしないようにしましょう。
ときには、施設側の対応に納得いかないと思うようなこともあるかもしれません。しかし、まずは冷静に話を聞くことが大切です。
施設側の言い分を聞かない、理解しようとしないなら、「モンスターファミリー」と呼ばれても仕方ありません。
施設内で大声を出したり暴力を振るったりし、職員や他の入居者に恐怖を与えた場合は、警察を呼ばれる可能性もあります。
「お金を払っているのだから」と介護職員を召使いのように扱ったり、理不尽な要求をしたりするのも間違っています。在宅介護に限界を感じて施設を選択した家族なら、きっと職員の大変さが理解できるはずです。
お客様と従業員という立場ではなく、共に高齢者本人を支える同志のような気持ちで接してみるのはどうでしょうか。
施設では面会時間や食事、持ち物などのルールが設けられています。病気の悪化を防ぐために医師から制限されている食べ物を食べさせたり、施設に持ち込んではいけない物を持ってきたりするのはルール違反です。
面会時に大声で騒いだり、小さな子どもが走り回ったりするなど、他の入居者の迷惑になる行為もマナーに反します。
施設は利用者にとって生活の場であることを忘れてはいけません。
なかには、施設見学をせず契約を結ぶ人や、疑問に思ったことを質問しないまま契約してしまう人もいます。このような人はモンスターファミリー化する可能性が高いです。
なぜなら、モンスターファミリーになるのは「こんなはずではなかった」「やってもらえると思っていた」という施設への期待を裏切られた家族がほとんどだからです。
契約前に見学をして、施設でできることとできないことをしっかり理解すれば過度な期待をもたずにすみます。さらに、わからないことはうやむやにせず質問をすれば、誤解や勘違いを防げるはずです。
介護施設にクレームや要望を伝えるときも、いったん冷静になることが大事たっポ!
まわりまわって高齢者本人や家族が困ることになるかもしれないよ。
後先考えずに口から出ちゃいそうだけど、困った事態にはなりたくないわ。
大切な家族が入居している施設です。意見を言いたくなることも、文句をつけたくなることもあるでしょう。しかし、要望やクレームを出す前に「自分の意見は適切なのか」を冷静に考えることが重要です。
自分だけでは判断できない場合は、他の家族や友人に相談してみるのもよいでしょう。
介護現場は常に人手が不足していますが、その原因の1つにモンスターファミリーが挙げられます。利用者家族の不合理なクレームや要望に耐え切れず、退職を余儀なくされた職員も少なくありません。
現場の介護職員が少なくなって困るのは、利用者やその家族。結局、自分自身に跳ね返ってくることもあるのです。
老人ホーム側の都合はよくわかったわ。
でも家族は要望や気になったことを伝えちゃいけないの?
そういうわけではないっポ!
伝えるべきことはしっかり伝えるべきだっポ!
「家族は何も言ってはいけない」というわけではありません。冷静に考えた結果、やはりおかしいと思うことや要望に関しては施設に伝える必要があります。
たとえば、利用者の怪我の原因が施設側の過失ではないかと感じたり、介護方法に違和感があったりする場合は遠慮せずに伝えましょう。
介護職員は利用者本人や家族の気持ちに寄り添った介護をしたいと考えています。ですから、多くの施設では家族の意見を真摯に受け止め、できる限りの対応をするはずです。
ただし、高圧的な態度をとったり、一方的に意見を述べたりすると誤解が生じる恐れがあるので、施設側の言い分も聞きながら冷静に話をすることが大切です。
自分の身内がより良く暮らせるよう施設に意見や要望を出したいと考えるのは、その人を大切に思うがゆえの当然の感情だといえます。
しかし、度が過ぎた要求やクレームは施設側を困らせ、「モンスターファミリー」モンスター家族」と呼ばれる結果となるかもしれません。
まずは、自分の考えが適切なのかを見極め、そのうえで冷静に話を進めましょう。
著者:柴田 まみ
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