デイサービス開業について、詳しくわかりやすく解説するっポ!
デイサービスは介護保険法上の「通所介護」に該当する介護サービスだっポ。
デイサービスは、病院や医師の指導に基づく通所リハビリテーション(いわゆるデイケア)と似ていますが、デイサービスは高齢者の医療ケアというよりは生活支援を目的にした施設なので、比較的参入しやすい分野であるのが特徴です。
また、ビジネスとしてみると、デイサービスの報酬は介護保険法上で決められた単価となっています。そのため、全国どこでも価格は同じ。いわば価格競争のないビジネスモデルなのです。
そのかわり、価格以外の面で特色を打ち出して入所者を集める必要があります。この点で、デイサービスの開業では起業家自身のビジネスセンスがかなり問われることになるでしょう。
実際に医療や介護の分野以外から参入して成功しているパターンも多い分野です。
また、ビジネスモデルとしては比較的安定した収益構造を作りやすい点もメリット。そもそも収入は介護保険料から支払われるので未回収リスクはほぼありません。
さらに、2017年に厚生労働省が発表している「介護事業経営実態調査結果」によれば、デイサービス、つまり「通所介護」の収支差率(収入-支出の割合)は4.9%と、介護ビジネス全体の平均(3.3%)と比べると高くなっています。
ただ、2015年の介護報酬改定の影響が業界を直撃しており、2015年以前は収支差率が10%台だったことと比べると、ビジネスとしての難易度は上がっているといえます。
この2015年の介護報酬の改定についてですが、政策的な評価はさておき、デイサービスにとってはかなり厳しい改定となりました。
その理由は先述の通り、デイサービスは比較的開設しやすい介護サービスであるため、参入者が増えすぎて競合過多気味になってしまったという事情です(地域によっては必要数の3倍以上のデイサービスが開設されたところもあります)。
この改定によって業界が収支面で大きな影響を受けたことからもわかる通り、介護ビジネスは法律で定められた介護報酬によって収支がある程度決まってしまいます。
他にも遵守すべき法規や規定が細かく定められているため、儲かるか儲からないかは国のさじ加減ひとつ、というところもあるのです。
介護ビジネス自体は今後も成長を見込まれる分野ではありますが、政策的な判断に左右されるビジネスでもあるという点を前提に経営を行っていく必要があります。
デイサービスの立ち上げまでには、どんな手順があるのかな?簡単に説明するっポ。
通常の起業と似たところがありますが、デイサービスは収支予想の立て方と人材確保という点で、他のビジネスとの違いがあります。
デイサービスの開業では「ビジネスコンセプト」「立地の選定」「人材の確保」の3つについて、開設前に徹底的にリサーチして準備することが成功への大きなステップです。
サービス内容の充実だけでなく、競合の分析と立地予定地域で利用者やその家族層へ聞き取りを行ったうえで、どういった生活支援をコンセプトにしているのか一目で伝わるようなPR方法を考えるといった、競合に差をつけるための「マーケティング」が勝敗を分けます
そのうえで、次に重要なのは「立地」。デイサービスは通所者も職員も毎日通う施設なでので、最寄り駅からのアクセスや送迎事業者が存在するかどうかは重要です。
また、交通の利便性が良ければどこでもいいわけではなく、地域でのニーズや競合店の立地なども検討しなくてはなりません。
さらに、デイサービスの開設には法令による制限のかかっているエリアがあります。基本的には都市計画法に定められた「工業地域」や「市街化調整地域」といったエリアでは開設できません。
こういった情報は各自治体で細かく違ってくるので、開設予定の自治体の「都市計画課」などと事前によく相談しておく必要があるでしょう。
各自治体の「介護保険課」「福祉課」といった福祉関連の部署への挨拶や相談も必ず行いましょう。介護ビジネスは地域との連携が何よりも不可欠です。
また、自治体と仲良くなることで、ネット上には出ないローカルな実情やビジネスに必要となる支援や人材の紹介など、さまざまなメリットを享受できます。
デイサービスの開業では、他のビジネスと同様に開業費用がある程度かかります。
開業費用の目安ですが、事業形態や規模、立地などによってかなり違ってはくるものの、相場としてはトータルで700~1,500万円ほどの資金が必要です。
当然、金融機関の融資も利用することになりますが(デイサービスはきちんとした事業計画があれば比較的融資は下りやすい)、それでも自己資金として最低500万円以上は準備しておかなくてはならないでしょう。
また、運転資金についても開業後3カ月分くらいは確保しておきましょう。
デイサービスの収入の柱である「介護保険料」は利用者負担がおおむね1割で、残りは2カ月後に介護保険から給付されますので、開業後3カ月間は無収入に近い状態です。
ここを乗り切ったうえで利用者を集めることができれば、その後の収支はなんとか計算できるようになるので、まずはこの開業後3カ月が大きなヤマ場となります。
デイサービスの開業で必要となるのは、各都道府県自治体による通所介護事業者指定です。
賃貸物件の改装や人材の確保、設備の調達などの準備が整った段階で、自治体へ必要書類を提出して申請します。
なお、この指定を受けるためには法人でなければならないので、申請の前にまずは法人設立の手続きを済ませておく必要があります。
法人はどのようなかたちでも構わないのですが、設立までのスピード、資金調達の容易さを考慮すると「株式会社」を選ぶのが無難でしょう。
デイサービスを開設するのに資格や知識っているのかな?
デイサービスを開業するにあたって、基本的には特別な資格や経験は必要ありません(もちろん、事業者として介護事業者指定を受ける必要はあります)。
ただ、提供するサービス内容は専門性が高いものなので、介護業界や医療業界で経験のある方でないと、起業そのものが難しい面もあります。金融機関での融資審査や人材確保においてもかなり不利です。
デイサービスでの勤務を希望する求職者は、介護分野での経験が豊富で高いモチベーションを持っている人が多いので、業界のことをほとんど知らない経営者の下では働きたくないと考える傾向にあります。
デイサービスは常に人材不足に悩まされるビジネスだけに、人材確保面での不利は大きなハンディです。
このように、経営者自身が業界未経験だと不利な面が多いため、その場合は介護や医療分野に精通したパートナーを見つけて共同で経営に携わるなどの工夫が必要となるでしょう。
デイサービスの経営で必要となる知識は挙げていけばキリがないくらいありますが、経営者として絶対に頭に叩き込まなければならないのが介護保険法と介護報酬の算定の仕組みです。
デイサービスの収入はこれがベースとなって決まりますし、自身の年収などにも直結することなので、ここを理解しておかないとそもそも経営ができません。
また、介護に関する法規や仕組みは改定や変更が多いです。各自治体によっても違いがあるので、継続的に情報をアップデートし続けていく必要があります。
それに加えて、一般的な事業経営者に必要となる税務や経営、マーケティングといった内容も勉強していく必要があるでしょう。
デイサービスを立ち上げるなら、いろんな基準をクリアしなくちゃいけないっポ。
デイサービスを開業する際には、都道府県に対して「通所介護事業指定」を受けなければなりませんが、その指定を受けるためには定められた「設備基準」と「人員基準」を満たす必要があります。
細かくは都道府県ごとに違う点もあるので、実際には申請の窓口等でよく確認してください。
全国的に大まかな基準としてはほぼ共通なので、ベースとなる基準について、簡単に説明しておきます。
まずは設備基準です。広さに関しては以下に挙げる基準よりも、若干広めのスペースがあった方が評価されやすいです。
デイサービスの主要設備です。食堂と機能訓練室は広さに基準が設けられていて、「利用者1人当たり3平方メートル以上」というのが設備基準となります。
実際にはスタッフ数名と利用者が同時に活動していることがほとんどですし、備品を置くスペースも必要ですから、設置基準の1~2割程度広めのスペースを確保しておくことが望ましいでしょう。
特にキッチンについては冷蔵庫や台所のスペースを基準面積と認めない自治体も多いので、基準ギリギリの物件を選ぶことはおすすめできません。
ここは各自治体によって設置基準が異なるところです。
静養室は利用者が静養できるスペースのことで、少なくとも1人以上の静養スペースとベッドの設置が必須となります。
自治体によっては1室の確保を義務付けるところもあるので、よく確認しておきましょう。
相談室や事務室の設置も必要です。それぞれ仕切られた空間であること、事務室には「鍵付き書庫」があること、などが条件となっています。
トイレ、浴室はかなり重要な設備ですが、ここは自治体ごとに基準の違いが多く出てくる部分です。ただ、業界として共通認識とされている基準があります。
トイレの理想は駅やデパートなどにある障がい者マークのついている「多目的トイレ」程度の設備です。さらにいえば、できればこうしたトイレが2カ所以上あることが望ましいです。
そして、浴室はバリアフリーであること、介助者2~3人と共に入れる広さがあること、緊急呼び出し用のブザーがあること、などが必要になります。
浴室に関しては浴槽の深さや床面の素材、出入り口の広さ(たいていは80センチ以上の引き戸)なども自治体ごとに細かな指定があることがほとんどです。
トイレと浴室の設備を確認して入所を判断する利用者も多いので、設備投資をするならこのスペースを優先した方がいいでしょう。
「通所介護事業指定」のために満たす必要となる人員基準は以下の通りです。
資格はいりませんが常勤であることが必要です。他の「生活相談員」や「介護職員」との兼務は可能です。
資格が必要です。「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」の有資格者、またはこれらと同等の能力を有する人。サービス時間中は常に1人は配置しておく必要があります。
デイサービス業務での「相談業務」を担当する組織の核となります。
資格が必要です。「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」「看護師」「准看護師」「柔道整復師」「あんまマッサージ指圧師」のいずれかの人。
デイサービスでの機能訓練などを専門に行います。
資格は必要ありませんが人数の基準があります。
利用者15人までなら1名以上。15人以上だと15を超える人数を5で除した数に1を加えた人数。
利用者の日常生活の介助や送迎など、業務の幅は広いです。
原則としてサービス提供時間中は1人配置させておく必要があります。
もちろん「看護師」と「准看護師」のみ。機能訓練指導員との兼任は可。
なお、利用者10人以下の施設は設置義務がありません。
どれくらいの資金が必要になるかは施設の規模や立地によってかなり違いが出るっポ。
大まかな相場としては、700~1,500万円ほどが開業資金として必要です。これをすべて自己資金で調達することは難しいですが、いくつかその調達方法があります。
代表的なものは次の5つです。
このうち、まずは「1.金融機関からの融資」を中心に資金調達を行うことになりますが、ここでは「3.公的機関による創業融資」と「4.公的機関による補助金・助成金」の代表的なものについて簡単に紹介しておきます。
「2.縁故者からの資金協力」と「5.第三者による増資」については少し特殊な事例なので、今回は説明を割愛します。
日本政策金融公庫の実施している融資制度で、担保や連帯保証人が不要です。ただ、その場合の融資限度額は減ります。
新規開業者の多くが利用している制度で、金融機関の融資と比べると金額は低くはなりますが、開業資金の調達としては十分です。
金利が低めに設定されていることも大きなメリット。融資までのスピードも速く、最初に申請手続きを検討するべき融資といえるでしょう。
自治体と指定金融機関(銀行)、信用保証協会が協力して実施している融資制度です。こちらは会社の代表者が連帯保証人になることが条件になります。
自治体ごとに条件が違う上に金利なども差があるので、利用する場合は自治体に問い合わせてよく確認する必要があります。
補助金・助成金とは、一定の条件を満たした場合に、交付機関(自治体や厚生労働省など)が返済不要の資金を提供してくれる制度のこと。
返済不要なのは大きなメリットですが、審査基準が厳格で審査期間も長期になることがあるといったデメリットもあります。
こちらはある程度経営を始めてから、特に雇用関係の助成金などを申請することで経営の一助とする、といった利用の仕方でいいでしょう。
デイサービスの経営では雇用関係の助成金との相性がいいです(キャリアアップ助成金、特定求職者雇用開発助成金など)。
ただ、手続きが専門的で煩雑なので、補助金や助成金に詳しい社会保険労務士などに一任した方が手間を省けます。
せっかくデイサービスを開業するならちゃんと成功させたいよね。
失敗しないポイントを紹介するっポ。
デイサービスはビジネスモデルとしては比較的安定したスキームを持っていますが、介護ビジネスとしては参入しやすい分野であるため、2010年代に供給過多気味になってしまいました。
そのため、2015年度に介護保険制度が改定された結果、倒産件数が増加したという流れがあります。
とはいえ、今後も成長の見込める分野ではあるため、今後はよりニーズに合ったサービスを提供する施設が生き残っていくことになるでしょう。
では、デイサービスをビジネスとして成功させるため、失敗を避けるための「基本方針」を5つほど挙げてみましょう。
競合が多いということは、何か他とは違う特色を打ち出さないと生き残れない、ということです。
例えば、重度の障がいのある方や症状の重い方は、ニーズに合うデイサービスをなかなか見つけられずに困っているケースが実際に多く、そうした隠れたニーズに応える姿勢が重要になります。
他にも今後増加するであろう認知症などに特化した体制を組む、言語障害のリハビリに特化したプログラムを持っている、といった特色の出し方もあるでしょう。
こうしたわかりやすいコンセプトや理念を持ってビジネスに取り組むことは、デイサービスとしての差別化にもつながっていくので、開業に際してどのような施設を作りたいのかを明確にしておく必要があります。
デイサービスは単なるビジネスではなく、介助の必要な人を支える社会的使命を負っています。そのため、開業前、それから開業後も常に利用者目線に立った改善、サービスの提供が絶対に必要です。
利用者の満足できる施設運営を続けることは、利用者の増加や、ひいてはビジネスの拡大に直結する課題ですので、常に意識して運営していきましょう。
デイサービス事業はともかく人材の確保が大変です。
そのうえ、介護事業は職員やスタッフの働きがサービスのクオリティに直結するので、人材を大切に育てることや、チームの連携を高めるために融和させるといった取り組みが必須です。
見込みのある人材には、教育を受けさせて資格を取得してもらうことも重要になります。
利用者の送迎や食事の提供、他にも労務管理や経営管理などは思い切ってアウトソーシングすることも手です。
うまく利用すれば以下のようなメリットがあります。
そしてもう1つ大きいのが時間と手間の節約です。
デイサービス事業は業務量が非常に多いので、時間や手間の軽減はかなり大きなメリットといえます。
デイサービスでは事故は起こるものと思って準備しておいた方が賢明です。特に多いのが転倒事故です。
重大な事故にしないためには、普段からモニタリングを徹底する、事故が起こった場合、ヒヤリハットがあった場合の事例を集めて検証しマニュアルを作ってスタッフ全員と共有するなどの事前対策が重要です。
デイサービス事業は参入しやすいけど、施設の特色を出すことが必要みたい。
せっかく開業するなら、失敗しないようにしっかり準備をしてほしいっポ!
著者:かぼじん
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