高齢者の介護をしていると「介護」と「介助」っていう言葉がよく登場するっポ。
でも介護や介助っていったい何…? 意味や定義の違い、具体的な内容を解説するね!
「介護」と「介助」ってよく似ているよね。それぞれに意味や定義があるのかな?
2つの言葉を比較するっポ。
まずは、「介護」と「介助」、それぞれの単語を辞書で引いてみましょう。
単語の意味だけを見ると、両者に大きな違いはないように見えます。しかし、介護と介助の定義には、明確な違いがあるのです。
介護の定義について、『介護福祉学事典(ミネルバ書房)』には、「介護とは、日常生活行為を成立させるための援助行為であり、実践行為である(※引用)」と書かれています。
つまり介護は、要介護者ができる限り自立した日常生活を送るために必要なすべての支援を指しています。
一方介助は、介護をするための具体的な手助けのこと。要するに、トイレを手伝ったり、入浴のサポートをしたりといった実際の行動を指します。
このような定義から、要介護者の日常生活を支える「介護」の中に「介助」が含まれているといった認識でよいでしょう。
ひと口に介護といっても、いろんな種類があるっポ。
主な介護について、以下で解説します。
身体介護は、要介護者ができる限り自立した日常生活を送るために必要なADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)のサポートをすることです。
具体的には、本人の体に直接触れる着替えや排泄、入浴などの介助を指します。
なかでも、食事介助・入浴介助・排泄介助の3つは「三大介護」と呼ばれ、要介護者の暮らしの軸となる介助だと考えられています。
生活援助は、要介護者ができる限り満足のいく日常生活を送れるよう、IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作)と呼ばれる洗濯や掃除、買い物などの援助を行うことです。
通院や選挙の投票、役所などへの付き添いも生活援助に含まれます。
精神的援助は、病気や怪我を抱える人の不安を解消、もしくは軽減するための援助のことです。
認知症やうつ病、統合失調症などの精神的な病気を抱える人も支援の対象としています。
また、その家族も支援対象者です。
社会的支援は、さまざまな問題を抱える人を福祉につなげて、必要な介護保険サービスを受けられるよう支援することです。
介護認定を受けられるよう段取りをしたり、社会参加を促したりすることも社会的支援に含まれます。
介助とは「介護をするための具体的な手助け」だったね。
介助にはどんな種類があるのかな?
介護をする上で必要な介助には、さまざまな種類があります。
以下で、ひとつずつ解説します。
食事介助とは、要介護者が安心・安全に食事ができるようサポートすることです。
食事は生きていく上で欠かせないものですが、その目的は栄養を摂るだけではありません。食事が、要介護者にとって「楽しみ」や「生きがい」になるよう配慮した介助が求められます。
食事介助の際は、正しい姿勢を保つことや、本人の嚥下(えんげ:飲み込み)・咀嚼(そしゃく:噛むこと)のレベルに合った形態の食事を提供することが必要です。
排泄介助とは、トイレの援助やおむつ交換のことです。
排泄介助は安全面およびプライバシーに配慮するだけでなく、要介護者の自尊心を傷つけないよう、パンツを下ろすとき、おむつを外すときなどは本人の羞恥心を意識した声がけが求められます。
特に、トイレが間に合わなかったときや、排泄物がおむつから漏れてしまったときなどは、要介護者自身が抱える情けなさや悲しみに寄り添うことも大切です。
入浴介助は、要介護者が安心・安全に入浴できるよう援助することです。
入浴には、全身の清潔を保つだけでなく、気分転換やリラックス効果が期待できます。
その一方で、高齢者にとって入浴は、転倒やヒートショックなどさまざまなリスクを伴います。そのため入浴の際は、利用者のADLに合った介助の仕方が必要です。
着替えの介助は、その名の通り、衣服を着替えるときに行う介助のことです。
要介護者の中には、認知症や麻痺、寝たきりなどさまざまな理由により、自分で着替えができない人も少なくありません。
なかには着替え自体を嫌がる人もいるので、着替えの介助はプライバシーに配慮した上で、本人に苦痛のないよう行うことが大切です。
特に、麻痺や拘縮(こうしゅく:関節が固まること)がある人の介助は、痛みへの気配りも求められます。
移乗介助は、ベッドから車椅子、車椅子からトイレなど、さまざまなシーンで必要となる介助です。
その介助方法は、手で支える、体を抱える、2人がかりで運ぶなど要介護者のADLによって異なります。
移乗介助は、転落・転倒の危険を伴うため、安全面に注意した介助の仕方が重要です。
また、移乗介助によって腰や腕を痛める介護者も多いため、介護者は無理のない介助方法を実践する必要があります。
歩く際にふらついたり、つまずきそうになったりする要介護者の歩行を援助することを歩行介助といいます。
歩行介助中は、一人ひとりに合った位置や方法で要介護者を支えることが大切です。
たとえば、片麻痺がある人の場合は麻痺のある方に体が倒れやすいため、麻痺側に立ちます。杖を使用している人なら、杖のない方に体が倒れやすいため杖とは反対側に立ちます。
さらに、転倒リスクの高い人の歩行介助をするときは、要介護者の脇の下に介護者の手を入れて支えるなど、安全に配慮した介助を行います。
口腔ケアの介助は、歯みがきや入れ歯のお手入れはもちろん、摂食・嚥下機能および口の動きが低下しないよう援助することです。
口腔機能の維持・向上には、食事がおいしく食べられたり、会話を楽しめたりする効果があります。
そのため口腔ケアの介助は、要介護者のQOL(quality of life:生活の質)向上にも関わるといえるでしょう。
清拭介助とは、何らかの理由で入浴ができない人の体を、蒸しタオルなどで拭くことです。
清拭には、体の清潔を保つだけでなく、血流を良くしたり、安眠できたりといったメリットがあります。
清拭介助は、要介護者のプライバシーや羞恥心に配慮し、寒くないよう手際よく行うことが大切です。
寝返りの介助は、要介護者の体の向きを変えることです。
要介護者の中には、自分で寝返りが打てない人もいます。長時間、寝返りを打たずに寝ていると、体に痛みが生じたり血流が悪くなったりします。
さらに、体の一部が長い間圧迫されることによって、褥瘡(じょくそう:床ずれ)ができる恐れも否定できません。
そのため介護者が、一定の時間ごとに要介護者の体の向きを変える必要があります。
認知症患者の中には、暴力行為や徘徊といった問題行動をする人がしばしばいます。
そのような人に対し、暴力行為をしないよう声を掛けたり、徘徊に付き合ったりするのも介助のひとつです。
問題行動への介助は、要介護者の行動によって本人や周りの人に危険が及ばないよう、臨機応変に対応しなくてはなりません。
介助の段階は、その人のADLレベルによって3つに分けられるっポ。
要介護認定の調査項目を参考に、以下で解説します。
要介護者の体に直接触れることはないものの、付き添いや確認、声かけを必要とする人への介助を「見守り」といいます。
たとえば要介護者に対して、次に何をすべきか指示をしたり、行動しやすいよう準備したりすることなどが挙げられます。
要介護者が何らかの行動をする際に、介護者が部分的な介助をすることを「一部介助」といいます。
トイレのときにズボンの上げ下げを手伝ったり、食事のときに食べ物を細かくしたり、着替えの一部を手伝ったりすることなどが一部介助に当たります。
要介護者の行動のすべてを援助することを「全介助」といいます。
たとえば、介護者が食事を食べさせる、車椅子からベッドまで抱きかかえて移乗する、おむつで排泄する人のおむつ交換をする、などが全介助に当たります。
普段何気なく使っている「介護」と「介助」は、似ているようでまったく別の言葉です。
介護は、要介護者の生活を支えるすべての支援のこと、そして介助は、介護をするために必要な手段のことです。
さらに、これら介護・介助にはさまざまな種類や段階があるので、介護者は、要介護者のADLに合わせた介護・介助を行うことが求められます。
著者:柴田 まみ
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