居宅介護支援とは、自宅で生活する高齢者や障害を持つ人を対象とする介護保険制度におけるサービスのひとつ。
ケアマネジャーが介護を必要とする高齢者やその家族と面接して、その人に合わせたさまざまなサービスを組み合わせたマネジメントを行うことから、ケアマネジメントとも呼ばれています。
ケアマネジメント(居宅介護支援)について、わかりやすく簡単に解説します。
「居宅介護支援」ってどんな意味? 漢字ばかりでなんだか難しそうね……。
居宅介護支援には、要介護者が適切な介護保険サービスを利用できるように、計画の作成や見直しを行って、サービスを提供する事業者などにつなげてくれる役割があるっポ。
厚生労働省によると、居宅介護支援は介護保険では次のように定義されています。
「居宅介護支援」とは、居宅の要介護者が居宅サービス等を適切に利用できるよう、心身の状況、置かれている環境、要介護者の希望等を勘案し、居宅サービス計画を作成するとともに、サービス事業者等との連絡調整を行い、介護保険施設等への入所を要する場合は、当該施設等への紹介を行うことをいう。
引用:厚生労働省「居宅介護支援(参考資料)」
ここでいう「居宅」とは自宅だけを指すのではありません。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、軽費老人ホームなども「居宅」に含まれます。
居宅介護支援では、介護サービスが適切に利用できるような支援が行われますが、これを行うのが、居宅介護支援事業所に所属する介護支援専門員(ケアマネジャー)です。
居宅介護支援では、ケアマネジャーは主に次の3つの仕事を行っているんだっポ。
ケアプランの作成
利用者ごとにケアプラン(居宅サービス計画)を作成します。この計画によって、利用する介護サービスの種類や利用頻度が決まります。
関係機関との連絡調整
サービス利用にあたり、サービス提供事業者などの調整を行います。
モニタリング
ケアプランを作成したあとも、利用者の状態に変化はないか、計画を見直す必要がないかなどを定期的に確認します。
この3つ以外にも、要介護認定の新規申請や更新などの申請代行も居宅介護支援の一環として行われています。
ケアマネジャーの役割の中でも、もっとも重要といえるのがケアプラン(居宅サービス計画)の作成だっポ。
介護サービスを受けるためにはケアプランが必要になるんだよ。
要介護者や家族はケアマネジャーと面接や相談を行ったうえで、ケアプランを作成してもらいます。ケアマネは要介護者本人の心身の状態や環境、希望などを把握し、その人に合わせたケアプランを立案。
この計画書に沿って介護保険サービスの提供が行われるため、ケアマネジャーは大変重要な役割を担っているといえるでしょう。
ケアプランは介護保険サービスを受けるうえで大切な役割が2つあります。
ケアプランには、介護を必要とする人の基本的な情報以外に、援助の方針や解決すべき課題、それに対する目標などが記載されています。
ケアプランというかたちで文書化することで、本人も家族も状況の把握や目標を確認しやすくなり、安心してサービスを受けることができるのです。
また、一週間の計画表や実際のサービス利用状況など、その人を取り巻くサービスの状況がすべてまとめられています。
ケアプランで作成された目標やサービスは、本人とその家族にモニタリングを行ったうえで、すべて本人の選択のもとに作られます。
要介護者本人に関わるすべての人が共通認識を持ち、役割分担を明確にできます。
要介護認定を受けている人の多くは複数のサービスを利用しています。関わる人が多くなると一貫したサービスの提供が難しくなるため、それぞれに共通認識を持つことが必要です。
ケアプランがあれば、解決すべき課題や目標を共有することができます。また、介護士や看護師、ボランティアなどさまざまな職種の人が関わっている場合には、ケアプランがあることで役割分担が明確となります。
結果として、適切なサービスを無駄なく利用することにつながります。
ケアプランってとっても大事なものなのね!
気になるのは費用だよね。料金は必要なのかな?
ケアマネジメント(居宅介護支援)は自己負担がかからず無料で利用できます。
介護保険サービスを利用するには、利用者は所得に応じた割合を自己負担する必要があります。通常であれば1~3割の負担です。
しかし居宅介護支援は、介護保険から10割、つまり全額が給付されるため、利用者の自己負担は0円です。
実は、ケアプランの作成自体は、やろうと思えば利用者本人や家族でもできます。しかし、本人や家族の意向に偏りやすく、結果として状態の維持や改善が行われないこともあります。
専門的な知識を持ったケアマネジャーが介入することで、より本人に適したサービスの計画を立てられるのです。
対象者ができる限り自立した生活を送ることができるよう総合的・一体的な支援を行うために、居宅介護支援の役割が重要だと国は考えています。
利用を推進する意味合いもあり、居宅介護支援は実質無料なのです。
ただし、次回の介護保険改正でケアプランの有料化を求めるような声も上がっています。介護保険改正のニュースには耳を傾けておいたほうがよいかもしれません。
お金がかからないのはありがたいわね!
居宅介護支援を利用したい場合は、主に以下の流れになるっポ。
居宅介護支援を利用するためには、要介護認定で要介護1~5の認定を受けている必要があります。
まだ認定を受けていない人は、まず要介護認定の申請を行ってください。申請は、お住まいの市町村の窓口で受け付けています。
要介護認定が下りたら、各市町村の窓口や地域包括支援センター、かかりつけ医がいる病院の地域連携室に相談すると、お住まいの地域を担当する居宅介護支援事業所を紹介してもらえます。
居宅介護支援事業所は自分で選ぶことができるので、本人に合うところを選ぶとよいでしょう。一度決めた事業所であっても、合わなければ途中で変更も可能です。
事業所を決めたら契約書を交わし、居宅介護支援サービスの開始となります。居宅介護支援を受けるには担当のケアマネジャーが選任されますが、事業所と同様に利用者がケアマネを選択することも可能です。
ただし、一人のケアマネが担当できる人数が法律で決まっているため、すでに上限まで担当を抱えている場合には希望が通らないこともあるでしょう。
担当のケアマネジャーは、利用者とその家族にアセスメントを行ってケアプランの原案を作成し、サービス担当者会議を開催します。ケアプランに問題がなければ関係機関との調整が行われ、サービスの提供がはじまります。
サービス提供が開始されたあとも定期的なモニタリングによって、サービスが適切に提供されているかを確認。必要に応じてケアプランの変更が行われる流れとなっています。
ケアマネジメント(居宅介護支援)を利用するならまず要介護認定ね!
居宅介護支援とよく似たサービスが、介護予防支援だっポ。
介護予防支援も居宅介護支援と同様に、ケアプランの作成や関係機関との連絡調整などを行います。利用する際の費用もかかりません。
居宅介護支援と介護予防支援の違いは以下の3つです。
居宅介護支援では、要介護1~5の認定を受けた人が対象となりますが、介護予防支援を利用できるのは要支援1・2の認定を受けた人に限られます。
要介護認定で「自立」の判定を受けた人は、どちらのサービスも利用することができません。
居宅介護支援は、居宅介護支援事業所が提供するサービスです。居宅介護支援事業所でも一部委託されることがありますが、介護予防支援は基本的に地域包括支援センターがサービスを提供しています。
要支援者が介護予防支援を受けたいときには、まずお住いの地域にある地域包括支援センターに相談しましょう。
ケアマネジャーは、担当する利用者を定期的に訪問することが法律で義務付けられています。介護保険法では、定期訪問の間隔についても明確に示されています。
居宅介護支援では最低月1回以上、介護予防支援では最低3か月に1回以上は本人の住まいを訪問しなければなりません。
なお、状態に変化があるときやケアプランに組み込まれていないサービス利用の希望があるときには、その都度訪問する必要があります。
居宅介護支援は介護保険サービスの要だっポ。
介護保険は本人の自立を支援するもの。この目的に合致するように、また本人の心身の状態にあわせて、計画書はその都度、見直しが行われるんだ。
新たに利用したい介護サービスが出てきた場合にも、担当のケアマネジャーに相談するといいよ。
*自治体や事業所により、ここで説明した内容と異なる場合があります。詳細に関しては、必ず各自治体・事業所にお問い合わせください。
著者:中村 楓
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