8月のレクに迷ったら風船バレー!デイサービスや介護施設におすすめ

暑~い8月におすすめのレクリーションは風船バレーだっポ。風船バレーにはいろんなメリットがあるんだよ。
デイサービスや老人ホームのレクに取り入れてみてね!

熱中症のリスクが高い8月は、屋内で運動系レクを

気温が高い8月は熱中症のリスクがあります。そのため、買い物や散歩などの外出を控える高齢者は少なくないですし、デイサービスや高齢者施設でも外出レクを控える傾向にあります。

しかし、外出の減少で体を動かす機会が少なくなれば、身体機能の低下につながります。熱中症のリスクは避ける必要がありますが、体を動かす機会もしっかり確保することが重要です。

8月のレクリエーションは、熱中症を避けられて外出レクの代わりとなるような「室内で体を動かす運動系レク」を積極的に取り入れることが望ましいでしょう。

しかし、デイサービスを利用する高齢者の身体機能はさまざまです。転倒などのリスクには十分に気をつけなければいけませんし、認知症のあるご利用者にもわかりやすく簡単なルールのレクリエーションがよいでしょう。

たくさんのご利用者が参加できる内容にすれば、会話でのコミュニケーションがなくてもレクを通して楽しめます。

8月レクには風船バレーがおすすめ!そのメリットとは?

8月におすすめのレクリエーションは風船バレーです。
風船バレーは暑い夏に屋内でできるほか、実にさまざまなメリットがあります。

まず、椅子に座ってできるので転倒のリスクが減少します。
腕や背中、腹筋などを使うので上半身の運動になるだけでなく、風船は上からくることが多いので、自然に背筋を伸ばして、胸を開いた姿勢になります。

また、非常に軽くゆっくりと動く風船は、利き手でなくても容易に打ち返すことが可能です。
風船の行方を目で追いかけるため、動体視力や物体の位置・方向などを把握する空間認知能力の訓練にもなります。

楽しみながら高いリハビリ効果を期待できるのが、風船バレーの大きなメリットでしょう。

メリットはそれだけではありません。
風船バレーは、単純にラリーを続けるだけでなくチーム戦や個人戦などの対戦形式にして、ご利用者の状態に合わせることができます。いろいろなやり方に変えて楽しめるのも魅力です。

風船バレーを安全に楽しむための注意点

風船バレーは手軽にいろいろな楽しみ方ができますが、体に痛みが出てしまっては本末転倒です。油断すると思わぬ事故につながる危険もあるので、注意しましょう。

例えば、風船をキャッチしようと大きく手を動かして筋肉や筋を痛めてしまう、そのときは気づかなくても、あとになって痛みが出るなどが考えられます。

体を動かすレクリエーション全般にいえることですが、風船バレーの前には十分な準備運動をして体をほぐしてから始めましょう。

風船がとりにくいところは職員がフォローするなど、高齢者が大きな動きになりすぎないような工夫も必要です。

また、熱中するあまり椅子から転落してしまった、隣の人とぶつかり怪我をさせてしまったなどの事故にも要注意です。

車椅子のブレーキの確認や、隣の人との間隔をしっかりとるだけでなく、常に参加者の様子を気にして、事故を未然に防げるようにしておきましょう。

風船バレーでデイサービスに一体感が生まれた事例

風船バレーは、片麻痺があっても認知症があっても楽しめるレクリエーションです。
一例として、デイサービスを利用するサチコさんの事例をご紹介しましょう。

サチコさんには認知症があり、デイサービスで他の利用者とうまくコミュニケーションがとれずに孤立。しかし、風船バレーを通じて皆と一緒に楽しむことができました。

その日のデイサービスの利用者は歩行に介助が必要な方が多く、半分以上は認知症の診断を受けていました。
幸い他者に攻撃的な方はいなかったため、椅子に座って円陣を組み、風船バレーのラリーを20回以上続けることを目指してチャレンジすることに。

認知症のサチコさんは普段からあまり積極的にレクに参加しようとされませんが、介護職員に促されて円陣の中に入りました。ですが、自分の前に風船が飛んできてもなかなか打ち返そうとしてくれません。

サチコさんの方に風船がいくとラリーが途絶えてしまい、なかなか見えない目標の達成に不穏な空気が流れ始めました。

それでも何度か繰り返すうち、サチコさんは少しずつ目の前に来た風船に手を伸ばすようになってきました。別の人のところまで飛ばすまでには至りませんが、自分の上には風船をはじけるように。

そこで、職員はサチコさんのうしろに立ち、上に上がった風船をアシストして次の人にパス。ラリーの継続が可能になりました。

すると不穏な空気が一変。
サチコさんが打ち返すと、周囲の人は「上手!上手!」と応援モードに変化してきたのです。最終的には目標の20回を大きく上回り、36回まで記録を伸ばすことができました。

サチコさんは自分が打ち返すと周囲のご利用者が盛り上がってくれるので、とてもうれしそうな笑顔を見せていました。

デイサービスのレクが自宅でのQOLを上げることも

その日、職員はご家族あての連絡ノートに、サチコさんがデイサービスで風船バレーを楽しんだ様子を記載しました。
それを読んだご家族はとても喜ばれ、「お盆に孫が来るので、家でもみんなでやってみたいと思います」とお返事をくださいました。

ご家族は何を話しかけてもあまり反応がないサチコさんに少し悩んでいたようで、今後の接し方のヒントにもなったようです。

8月には夏休みやお盆があり、お孫さんが家に来られることもあるでしょう。風船バレーのような皆で一緒にできる遊びで楽しめば、よい思い出を作れます。

ご家族に遊び方などをお伝えして喜んでいただけたケースも多々ありました。風船バレーは、風船の種類や大きさで飛ばせる距離も変わるので、そのような情報もお伝えするとよいかもしれません。

このように、デイサービスを通して高齢者のQOL(生活の質)を上げることもできます。介護職員はご利用者の自宅での生活も視野に入れるとよいでしょう。

運動系レクで高齢者の食欲低下も防ごう

8月は暑さや体力の低下で食欲が落ちる高齢者も少なくありません。
食事の量が減ると脱水を助長して、熱中症のリスクが高まる恐れがあります。そして、高齢者の脱水は脳梗塞の発症や免疫力の低下にもつながるのです。

運動系のレクリエーションを取り入れると、このようなリスクを防ぐメリットもあります。
デイサービスや介護施設では、適度な運動系レクを定期的に取り入れて、高齢者が夏を乗り越えられるようにしていきましょう。

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著者:寺岡 純子

合同会社カサージュ代表
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、終活カウンセラー1級
8年間の臨床看護を経て、介護保険の開始に伴い介護業界へ転向。全国展開する大手介護事業者で部長職としてさまざまな介護サービスの運営・人材育成を経験する。医療・介護の幅広い知識と経験を多くの介護事業者に届けたいとの思いから独立。現場・事業者・利用者の視点に立ち、介護に特化した研修や事業者・介護者のサポートを行っている。

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