日本国内での新型コロナワクチン接種が2月17日にスタートしました。
まずは医療従事者への接種からはじまり、4月12日には高齢者へのワクチン接種が開始されています。
介護施設の入居者や、そこで働く職員へのワクチン接種も一部でおこなわれていますが、現場で働く介護職員はワクチンについてどう考えているのでしょうか。
独自のアンケート結果から、多くの介護士が不安を抱えていることが見えました。
新型コロナウイルスのワクチン接種は、誰でもすぐにできるわけではありません。
接種には国が決めた優先順位があり、以下の順番になっています。
優先接種のより詳細な順番は、ワクチンの供給量も鑑みて自治体ごとに決定されます。
介護施設に入所する高齢者とそこで働く職員の優先順位を高くしたり、高齢者の中でもより高齢の人を優先したりと、その対応は各自治体で異なっているのです。
多くの介護施設でクラスターが発生し、新型コロナは高齢者の重症化リスクが高いことからも、高齢者や介護従事者へのワクチン接種は優先順位が高くなっています。
では、新型コロナワクチンの接種に関して、現場で働く介護職員はどのように感じているのでしょうか。
介護職として働いている人65名に対して、筆者が独自アンケートを実施しました。
その結果が以下です。
新型コロナワクチン接種の意向アンケート
*介護職65人に対してアンケートを実施(調査期間:2021年3月30日~4月1日)
受けたい 42%
受けたくない 35%
迷っている 23%
「受けたくない」「迷っている」を合計すると58%です。意外に多くの介護職員がワクチン接種に消極的という結果でした。
では、ワクチン接種をしたい人、したくない人はそれぞれどのような意見を持っているのでしょうか。
ワクチンを接種したい人の意見で多かったのは、「自分が原因で高齢者に感染させたくない」というものでした。
高齢者に感染させてしまったら命に関わる可能性があるだけに、そう考える人が少なくないのもうなずけます。
一方で、受けたくない、迷っているという人からは以下のような意見がありました。
また、「職場でワクチンの接種に関する調査があったが、拒否できない雰囲気がある」「本当は受けたくないが受けると返事をしてしまった」という意見も見られました。
施設でのクラスター発生を避けるためにも、すべての職員にワクチンを接種してほしいという管理者の思いは理解できますが、接種は本人の意思に基づいて実施されるべきです。
ワクチンの接種を強制したり、接種していない職員に対して差別をしたりなどの事態が起こるようなことがあってはなりません。
厚生労働省のデータから、高齢者施設ではクラスターがたびたび発生していることがわかります。
3/22~3/28 18件
3/29~4/4 17件
4/5~4/11 19件
(4月16日時点)
直近、高齢者施設のクラスターは横ばい傾向にあります。
しかし現在では第4波と考えられるほどに感染者数が急増していることから、これからまた介護施設でのクラスターが増える可能性は十分に考えらます。
そうなる前に、いち早いワクチン接種が必要なのかもしれません。
新型コロナワクチン接種が3番目に優先される「高齢者施設等で従事している人」には、どのような人が含まれるのでしょうか。
具体的には以下です(障害者支援施設等除く)。
介護保険施設
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院
居住系介護サービス
特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
老人福祉法による施設
養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム
高齢者住まい法による住宅
サービス付き高齢者向け住宅
訪問サービス
訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、居宅療養管理指導
通所サービス
通所介護(デイサービス)、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーション(デイケア)
その他サービス
短期入所生活介護、短期入所療養介護(ショートステイ)
小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護
福祉用具貸与、居宅介護支援
ただし居宅サービスの優先接種には、「新型コロナウイルス感染症により自宅療養中の高齢の患者等に直接接し、介護サービス・障害福祉サービスの提供等を行う意思を有する場合」などといった条件があります。
厚生労働省のホームぺージによると、ファイザー社ワクチンを受けた人の新型コロナウイルス感染症の発症予防効果は95%だそうです。
ワクチンの供給は少しずつ増えるようですが、多くの国民が接種を終えて、コロナ前の日常生活を送れるようになるにはまだまだ時間がかかる見込みです。
高齢者施設の利用者や職員は、いまはまだコロナ対策で制限された窮屈な生活を送っています。
今後コロナワクチンの効果が出れば、クラスターの発生を抑制できるだけでなく、コロナ前の日常に近い生活を送れることでしょう。
ワクチンの早期普及は望まれますが、多くの人がワクチン接種に不安を抱いているのも事実です。安全性や有効性が納得できるよう、具体的な説明も求められているのかもしれません。
著者:寺岡 純子
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