気持ちも新たになる1月は、お正月関連のレクリエーションが盛りだくさん。
今回は、福笑い、コマ回し、書初め、あとは初詣の成功事例を紹介するっポ。
1月は年始からさまざまな行事やイベントがあり、24時間365日切れ間のない介護が行われる特別養護老人ホームなどにとっては特に忙しい時期かもしれません。
元旦にはいつもの食事を少し豪華なおせち料理に変更するなど、新年早々からいろいろなお正月イベントを計画する施設も多いと思います。
年末年始に休業するデイサービスなどでは、休み明けにご利用者のお正月の出来事について話に花を咲かせることも多いのではないでしょうか。
新しい年の始まりは誰にとっても感慨深く、新たな気持ちになるものです。施設に入所している、介護サービスを利用して生活をする高齢者にとってはなおさらでしょう。
そんな新しい年の始まりにぴったりの1月のレクリエーションを3つご紹介します。
福笑いは、日本の伝統的なお正月遊びです。ルールは簡単で、目隠しをして、顔の輪郭を描いた紙の中に目・鼻・口といった顔のパーツを置いていきます。
昔は家庭内でもよく遊ばれていたので、高齢者にも福笑いの遊び方は浸透しています。簡単ですし、ルールをイチから説明しなくてもすぐに理解していただけるメリットもあるでしょう。
たくさんのご利用者がいるデイサービスや老人ホームでは、一般的にされている遊び方以外にいろいろな楽しみ方が可能です。
たとえば、さまざまな顔の輪郭や髪型、パーツの形を準備しておくと、いろいろな顔が出来上がります。それぞれを見比べてコンテストをするのもよいでしょう。
少し大きめの部品を作り、チーム戦で競い合う方法も盛り上がります。
周囲の人が「もうちょっと上」「右、右」などと教えながら、時間を決めてパーツを置いていきます。時間を決めることで焦って熱も入りますし、ちょっと変な顔になるのも楽しめます。
このほか、体を動かす要素を取り入れることもできます。床の上に置いた顔の輪郭に向かって顔のパーツを投げて、福笑いを作っていくものです。
遠くまで飛ばせるように、顔のパーツは段ボールなど少し重みのあるもので作るのがコツです。
ひとりずつでもいいですし、複数の人が顔の輪郭の周囲から参加することもできます。体を動かしながら、笑って季節感も感じられるお正月におすすめのレクリエーションです。
コマ回しは男の子の遊びのように思えますが、誰でも目にしたり遊んだりしたことがあるのではないでしょうか。昔懐かしいコマ回しの遊びは回想法の役割も果たします。
紐を巻き付けるタイプのコマは回し方にコツがあるため難しいかもしれませんが、手で回すタイプであれば少しの練習で回せるようになります。
コマを回す練習は手先の機能訓練としても効果的です。
木製のコマはマジックや絵具、マニキュアなどで簡単に色付けできます。
お手本に沿って製作するだけでなく、ご利用者が自分だけのオリジナルのコマを作ることもできます。自分で色付けしたコマには愛着もひとしおでしょう。
お盆の上やテーブルに囲みをつくり回っている時間を競い合ったり、複数で対戦したりするなど、コマ回しにはいくつもの楽しみ方があるので、大いに盛り上がるレクになることでしょう。
「1年の計は元旦にあり」といいますが、書初めは年の初めに1年の抱負や目標を書くお正月の文化です。
基本的な字の読み書きや計算といった「読み書きそろばん」の教育を受けてきた高齢者のなかには、字の上達を願って子どものころから書初めをしていたという方もいらっしゃるでしょう。
書初めに書く言葉には決まりがなく、何でも好きな文字を書いてよいとされています。ご利用者一人ひとりがその年の目標を定め、目標に合った言葉を書くのもよいでしょう。
手が不自由で文字を書くのが難しい場合は、思いを込めた一文字だけにする方法もあります。あらかじめ決めてもらった文字を印刷して切り抜いておき、それを半紙に貼ってもらう工作もよいかもしれません。
また、ただ書初めをするだけでなく、その言葉を選んだ理由やその年の抱負、目標を聞いてみるのも、年の始まりの1月にふさわしいレクとなります。
ただし、なかには文字が思い浮かばないという方もいらっしゃいます。あらかじめいくつかの四字熟語や抱負・目標をイメージしやすい文字をピックアップしておきましょう。
お正月に欠かせない代表的な行事、初詣にまつわる事例を紹介します。
デイサービスに通うヨシコさんはある理由から外出を拒否されています。そんなヨシコさんですが、孫のために気持ちを切り替えて初詣に行くことができました。
ヨシコさんは、娘さんとお孫さんと暮らしている76歳の女性です。2年前に転倒して大腿骨頸部を骨折しましたが、手術とリハビリを経て現在は在宅で生活されています。退院直後は要介護3だった介護認定は現在、要介護1まで改善しました。
ヨシコさんは人のために世話を焼くのが好きで、もともとは外交的な性格だったといいます。しかし、転倒で要介護状態となったことをきっかけに、非常に消極的になってしまいました。
「また転倒してはいけないから」と、外出レクに参加されることはありません。
娘さんが言うには、要介護状態になってから自分でできないことが増えて、排泄など介助してもらわなければ生活できない状況がとてもショックだったようです。だから二度と転倒や骨折をしたくないという思いが強いのではないか、とのことでした。
退院後に娘さんが出かけようと誘っても応じることはなく、デイサービスに行く以外は自宅に閉じこもっているのだそうです。
そんなヨシコさんのお正月の書初めは「合格祈願」でした。何の合格を祈願するのかを尋ねたところ、お孫さんが大学受験をされるとのこと。
小さいころからよく面倒を見てかわいがってきたお孫さんは難関の大学を目指しているが、自分には何もできなばかりか、体が不自由になり迷惑をかけていると話してくれました。
お正月にはみんなで初詣に行く外出レクが控えています。そこで、「初詣に行ってお孫さんのためにがんばって参拝しませんか」とお誘いしました。
普段であればすぐに断られるのですが、そのときは少し考えた様子で、「孫のためにがんばってみたいけど、やっぱり怖い」と、不安な心のうちを教えてくれました。
話を聞いたスタッフは「怖いという思いを消せれば背中を押せる」と考え、初詣をする神社の下見で、駐車場から参拝する神社までの経路を写真に撮って、ヨシコさんに見せました。
そして、人が少ない日や時間を選んでいくこと、歩く場所の状況、危険と思われる場所でのスタッフの対応など、ヨシコさんが気になりそうな点を細かく説明しました。
説明を聞いたヨシコさんは「当日に気をつけるべき点が明確になった」と、少し不安が解消されたようです。
機能訓練指導員の「介護スタッフと一緒なら安全に外出できると思う」との声も後押しとなったようで、初詣への参加を決断されました。
デイサービスに通所するようになってから、初めて外出レクに参加することができました。
初詣のあとは、「久しぶりに外の空気が吸えて気持ちよかった。孫のためと思えば力が出た」と話され、少し自信がついたようでした。
1月は元旦に始まり、おせちや七草がゆ、鏡開きと、食べ物関係の行事も続きます。食事関係のレクをしてもいいですし、コマまわしや羽根つきなど、お正月の風物詩といえる遊びを取り入れやすいのも1月の特徴です。
昨今では、お正月の行事を家族で行うことも少なくなってきました。デイサービスや老人ホームのレクリエーションではお正月の行事をたくさん取り入れて、懐かしい思い出話も引き出しましょう。
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