親が年齢を増してくると、頭によぎるのは「介護」の2文字。どんなに健康だった人でも、高齢になると病気や障害を抱えることは少なくありません。その結果、介護を必要とする状態になることもあります。
介護生活は突然訪れるかもしれないからこそ、「介護の心構え」が重要です。前もって準備をしておけば、もしものときも慌てずにすむでしょう。
うちのお義父さんとお義母さんって元気よね。高齢者とは言っても、介護の「か」の字もないわ。
いやいや、ある日突然「介護が必要になった!」なんて場合もあるっポ。そんなふうに考えていたら、いざというときに苦労するかもしれないよ。
え? 介護って突然始まることもあるの?
そうだっポ! もしかしたら、病気やケガをして介護や看護が必要になるのは、今日か明日かもしれない。だからこそ、いつ介護が必要になっても慌てないために準備が必要なんだよ。
たとえば、準備金。介護はお金がかかるうえに、いつまで続くか分からないのが現実。家族の生活を大きく変えることもあるんだよ。
家族の生活も?
うん。たとえば、ご両親が認知症になって、家で1人にしておけなくなったらどうするの? 中には仕事を辞めてしまう家族もいるんだよ。
えーっ。介護にはお金が必要なのに!?
退職はしないにこしたことはないけど、そんな事態も踏まえて介護の準備金が必要なことがわかるよね。
いつ介護が必要になるかわからないから、後回しにせず、準備をはじめないといけないってことなのね。
その通り! 介護の準備をしておくことで、家族の介護負担を軽減できるかもしれないというわけだっポ。
ところで、介護保険にはどんなサービスがあるか知ってる?
デイサービスやショートステイ、特別養護老人ホームくらいならは聞いたことがあるけど……。
その他にも、介護保険にはさまざまなサービスがあるんだよ。在宅介護で利用できるサービスや地域にどんな施設があるのかを、ざっくりでもいいから把握しておくと、いざというときに慌てなくてすむんじゃないかな。
なるほど。勉強しておきます!
じゃあ、介護保険サービスを使うにはどうしたらいいかは知ってるかな?
申し込めば誰でも利用できるわけではないの?
実は介護保険サービスは、要介護認定というものを受けないと利用できないんだ。要介護認定は、介護の必要度を数字化したもの。
要支援1・2、要介護1~5まであって、要介護5が一番介護を必要とする状態なんだ。自立と認定されたら全額自費じゃないとサービスは使えないんだよ。
その要介護認定はどうしたら受けられるの?
地域包括支援センターや、市町村役場にある高齢福祉課で申し込むことができるよ。
「介護が必要かも」と思ったら、まずは要介護認定を受ければいいってことね。
そうだっポ! 要介護認定の申請をすると、介護サービスのプロであるケアマネジャーが必要なサービスを検討してくれたり、アドバイスをくれたりするメリットもあるよ。それからケアプランという介護の計画書を作ってくれるんだ。
それは心強いわね。
要介護認定の受け方は「要介護認定を受けるには?」の記事を確認してね。
その様子だと老後のこと、特に介護についてご両親としっかり話をしているわけではなさそうだけど……。
まったくしていなかったわ! だって、まだ先のことだと思っていたし。それに、なんだか「縁起でもない!」って言われてしまいそうで。
確かに、親御さんに介護の話はしづらいよね。義理の両親だとなおさらだろうね。でも、ご両親が高齢になればなるほど介護が必要になる確率は高まるものだし、本人や家族が介護にどう備えるかはとても大切。だから、介護の話はもっと積極的に家族ですべきなんだっポ。
確かにお義父さんやお義母さんの希望を知っておいた方が、家族は介護しやすいかもしれないわ。できる限り、意見を尊重してあげたいものね。
そうだっポ。子どもが親の介護について勝手に決めるべきではないよね。金銭面や病気、家族の状況によっては希望通りにならないことがあるかもしれないけど、だからこそ、元気なうちからしっかり話し合うことが大切なんだよ。
なるほど。
さらに、ご両親の財産などについても子どもは把握しおく必要があるっポ。
うーん。それは、ますます聞きづらいわ。
でもね、今後の介護計画を立てるうえでも、貯蓄額や所得、保険関係は親子で共有しておくべきことなんだよ。
確かに! でも、どう切り出したらいいの?
相手の性格にもよるけど、単刀直入に切り出すのがポイントだっポ。こういうデリケートな話題は、オブラートに包むとかえって複雑になるから、「お義父さんとお義母さんが大切だから今後のことをちゃんと話しませんか?」でいいんじゃないかな。
よし! せっかくだから、とことん話してみようっと。
「介護」と一口に言っても、さまざまなパターンがあるっポ。たとえば、在宅介護のケースと施設に入居するケース。介護が必要となったら、まず、どこで介護をするかを決めなくちゃいけないよね。
自宅なのか、施設なのかを決めていくということね。
在宅介護を選択した場合は、もし離れて暮らしているなら「同居するのか」「老老介護なのか」「家族の中で誰がメインの介護者になるのか」まで考えておくといいよね。
うちは同居だから私たち家族が介護することになると思うけど、お義姉さんたちにも協力をお願いできると安心よね。
そうそう。他の姉弟家族にも声を掛けて、みんなで話し合うのが理想だっポ。1人で抱え込むのはよくないよ。介護は「家族全員で行う」という意識を持って、メインの介護者が無理をして体調を崩すことのないように、お互いにサポートできるといいよね。
「準備して損した!」ってくらい両親には、元気なままでいて欲しいな。
もちろん、それが一番の理想。そのために、今できることもあるっポ。
今できることもあるの?!
それは介護予防をすることだよ。そのためには、筋力や機能の低下を防いだり、趣味を見つけたりすることが重要。だから、各自治体では「今は介護を必要としない人」を対象にした介護予防事業にも力を入れているんだよ。
へぇ。どんな取り組みが行われているの?
たとえば、介護予防のための体操やトレーニングとか、引きこもりを防止するために高齢者を対象としたさまざまなイベントを開催しているよ。
他人と会うことは刺激にもなるし、認知症予防にも効果がありそうね。
まさにその通りだっポ! 外出することで、身だしなみに気を遣ったり、筋力アップにつながる効果にも期待できるよね。
いつまでも、元気で長生きしてほしいものね。早速、近くに介護予防のできる場所があるかを調べて、両親に提案してみるわ。
年齢が高くなると、介護が必要になる確率は確かに上がるっポ。でも、日頃から介護に備えておけば、本人はもちろん家族も心構えができるし、いざというときの介護負担も軽減すると思うよ。
それに、介護を身近に感じることで、介護予防も視野に入れることができるから、結果的に介護のタイミングを遅らせることにもつながるんじゃないかな。
著者:柴田 まみ
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