実際にデイサービス利用者の家族から受けた相談や、デイサービスの利用を検討する家族からよく聞かれる質問をランキング形式で紹介します。
在宅介護をする家族の中には、介護に関する悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
介護は、出口の見えないトンネルのようなもの。介護の悩みは一人で抱え込まず、周りの人に相談し、助けを求めることが大事です。
デイサービスの生活相談員として活躍した著者が、ランキング形式で紹介するっポ!
デイサービスでよくある相談を紹介する前に、デイサービスについて簡単に解説するっポ。
デイサービス(通所介護)とは、要介護認定を受けた高齢者を対象とした介護サービスのひとつです。
デイサービスでは、スタッフが送迎し、食事・排泄・入浴などの日常的なケアはもちろん、リハビリ・レクリエーションなどの介護サービスを提供します。
高齢になると外出する機会が減り、自宅にこもりがちになる人も珍しくありません。
そのためデイサービスへの通所は、引きこもりやADL(日常生活動作)の低下、認知症などを予防する効果も期待できます。
また、他者との関わりが増えることで身だしなみに気を遣ったり、生きがいができたりする人も多いです。
デイサービスには、高齢者の日常生活に変化を与え、QOL(生活の質)が向上するメリットもあります。
高齢者の在宅生活をサポートするだけでなく、家族の介護疲れを軽減することもデイサービスの役割のひとつです。
在宅介護をする介護者は、多かれ少なかれ身体的・精神的なストレスを抱えています。介護をしながら仕事や育児をする人、高齢者が高齢者を介護する老老介護の人なども多いです。
デイサービスに通所している時間は介護から解放されるため、介護疲れやストレスを感じたら、無理をせずにデイサービスなどの介護サービスを積極的に利用しましょう。
デイサービスの生活相談員だった著者が、よく相談を受けた内容とアドバイスや解決方法を教えるっポ!
デイサービス利用者の家族や、デイサービスの利用を検討している家族からの質問・相談をランキング形式でまとめました。
車椅子を利用している人や認知症の人の場合、自分ではデイサービスの準備が難しかったり、一人で外に出られなかったりする人も少なくありません。
そのため、一人暮らしの高齢者や、同居する家族が働いていると、「デイサービスに送り出す人がいない」と相談されることも多いです。
この場合、デイサービススタッフのみで対応困難なときは、訪問介護の送り出しサービスが利用できます。
送り出しサービスとは、デイサービスの日の朝、ホームヘルパーが利用者宅を訪問し、着替えから持ち物の準備、送り出しまでを行うものです。
利用者本人が送り出しサービスの利用を希望し、利用が妥当と判断された場合は、ケアマネジャーを通して居宅サービス計画書に位置付けられます。
訪問介護を組み合わせればいいのね。困ったときはケアマネに相談してみるわ。
デイサービスの利用を検討する高齢者の中には、夫婦での通所を希望する人もいます。
利用したいデイサービスに空きさえあれば、もちろん夫婦利用も可能です。
ただし、夫婦で通所する場合は2つの注意点があります。
1つ目は、両者が夫婦一緒の通所を望んでいるのかどうかです。
夫婦のうちどちらかが「一緒には行きたくない」と話しているのであれば、同じ曜日に同じデイサービスを利用すべきではないでしょう。
2つ目は、デイサービス内での夫と妻の距離感についてです。
たとえば、「夫婦なのだから席も近い方がいいだろう」と隣の席にした結果、夫婦喧嘩が始まったり、かえってストレスになったりすることがあります。
デイサービスを利用する際は、本人たちがどのような距離感で過ごしたいかを確認し、デイサービススタッフに伝えることをおすすめします。
わたしは妻と一緒がいいなあ。反対されなければいいけど……(笑)。
外出が億劫な人や他者に会う予定がない人は、身だしなみへの興味が薄れてきます。
中には、「髪を切られたくない」と1年以上にわたって理美容室に行かずに、伸ばしっぱなしで放置している高齢者もいます。
また、認知症の人の中には、体に触れられることを極端に嫌う人もいるため、無理やりカットに連れて行くことは難しいでしょう。
このような場合は、本人に自ら「身だしなみを整えたい」と思ってもらうことが大切です。
たとえば、外出の予定を入れたり、人と会う約束をしたりといった他者と関わる機会を設けます。
もちろん、デイサービスの通所を検討するのもおすすめです。
人から見られることが、身だしなみを整えるキッカケになります。
わたしも一人だったら外見に気を遣わなくなっちゃうかもしれないわ。
高齢者の中には、デイサービスに対してネガティブなイメージをもつ人も少なくありません。
そのため、デイサービスのレクリエーションには参加したくないと話す高齢者もいます。
確かに、レクリエーションの一環として手遊びや歌、簡単なゲームなどを行うデイサービスも多いので、これらを「子どもじみている」と感じる人もいるでしょう。
しかし、レクリエーションへの参加はあくまで自由なので、無理に参加する必要はありません。
実際、利用者の中にはレクリエーションに参加せず、テレビを見たり読書をしたりして過ごす人もいます。
一方、デイサービスの中には、個別レクリエーションに力を入れているところもあります。
将棋や囲碁、散歩や土いじりなど、利用者一人ひとりの希望に沿ったレクリエーションを行うので、誰もが楽しみながら参加できるでしょう。
それぞれのデイサービスによってアピールポイントや特徴、雰囲気は違うので、利用の前には複数のデイサービスを見学することをおすすめします。
事業所によっては、見学だけでなく1日体験利用できるところもあるため、利用すればレクリエーションの様子もわかりますし、本人に合ったデイサービスをより一層探しやすいでしょう。
将棋や囲碁の仲間ができたらデイサービスで楽しく過ごせそうだなあ。
こちらは、男性利用者の家族からよく受ける相談です。
デイサービスには、男女問わずコミュニケーションが苦手な人がいます。
しかし、無理をする必要はありません。
無理をして話をしたり、輪に入ったりすればストレスになるので、デイサービス利用中はマイペースに過ごしましょう。
ただ、さまざまなレクリエーションを通じて他の利用者と話をするようになり、距離が縮まることも珍しくありません。
人とのつながりは脳を活性化し、認知症予防やQOL(生活の質のこと)向上にも役立つため、「私は人付き合いが苦手だから」と決めつけるのではなく、前向きにコミュニケーションを図ることをおすすめします。
なお、利用者間でトラブルがあった場合は、介護スタッフが間に入りきちんと対応するので心配いりません。
人見知りだから初めての場所はちょっと怖いわね。でも気の合う友達ができたら嬉しいわ。
自分の家族には、いつまでも元気でいてほしいものです。
そのため、「もっとリハビリをしてほしい」と思う家族もいるのではないでしょうか。
ただ、リハビリは痛みや疲労を伴うので、やる気が出ない人、そもそもやりたくない人もいます。
顔を合わせるたびに家族から「リハビリしないの?」と言われ、「もう絶対やらない」と意固地になってしまう高齢者も多いのです。
リハビリを嫌がる人にリハビリをしてもらうには、以下の3つの方法があります。
第三者から助言する
家族から「リハビリ!リハビリ!」と口うるさく言われると、本人がリハビリに対して嫌悪感を抱く可能性があります。
そのため、かかりつけ医や看護師、ケアマネジャーなど第三者を通じて、リハビリの重要性を伝えるとよいでしょう。
通所リハビリ・訪問リハビリを利用する
介護保険サービスの中には、デイケアに通所してリハビリを受ける通所リハビリテーション(デイケア)や、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が自宅に訪問する訪問リハビリテーションがあります。
これらのサービス利用によって、リハビリへの意識向上やモチベーションアップが期待できます。
日常的な動作にリハビリ的要素を入れる
リハビリと聞くとトレーニングのようなものを思い浮かべる人も多いでしょうが、意識的に体を動かすだけでも立派なリハビリです。
庭の花木の水やり、玄関まで新聞を取りに行くなど、無理なくできることから始めてみてはいかがでしょうか。
そんな簡単な動きでもリハビリになるなんて驚きだよ。
介護をする家族からは、介護疲れの相談を受けることも多いです。
介護者の中には終わりの見えない介護のストレスによって、体を壊したり、うつ病を発症したりする人も少なくありません。
また、夫が妻を介護する、もしくは妻が夫を介護するなどの老老介護では、要介護者と介護者が共倒れになる恐れもあります。
介護サービスなら、介護者の疲れを軽減するための利用、いわゆるレスパイト利用ができます。
介護疲れを感じたときは、無理をせずケアマネジャーに相談し、ショートステイやデイサービスなどの介護サービスを上手に活用しましょう。
介護サービスは介護をする家族のためのものでもあるのね。
浴室は、在宅生活を送る高齢者にとってもっとも危険を伴う場所といっても過言ではありません。
浴室は足元が滑りやすかったり、段差があったりするため転倒リスクが高く、さらに冬は急激な温度変化によってヒートショックを起こす恐れもあります。
そのため、一人暮らしの人はもちろん、家族と同居している人であっても入浴に不安がある高齢者は多いです。
このような場合は、以下の介護サービスが利用できます。
訪問介護
訪問介護を利用し、ホームヘルパーによる介助を受ければ、自宅で安心して入浴ができます。
ただし訪問入浴は、自力で浴槽をまたいだり、浴槽内で立ったり座ったりの動作ができるような比較的要介護度が低い人を対象とするサービスです。
また入浴介助の際は、浴室に介護スタッフが入らなくてはなりません。したがって、介助者が無理なく入れるような浴室でなければ訪問介護サービスの利用は難しいでしょう。
デイサービス
デイサービスの中には、大浴場を設けていたり温泉を引いていたりするところもあり、入浴を楽しみに通所する高齢者も多いです。
そのほか、車椅子の人や寝たきりの人が安心して入浴できる機械浴を備えているところもあります。
他の人と一緒にお風呂に入りたくない人のために、個浴を用意しているデイサービスもあるので、きっと好みの浴室を見つけられるはずです。
デイサービスを検討する際は、浴室見学を希望する旨をケアマネジャーに伝えておくとスムーズです。
訪問入浴介護
自宅のお風呂が狭くて介助者が入れないケースや、寝たきりの人など、何らかの理由で自宅での入浴が難しい場合は、訪問入浴介護を利用する方法があります。
訪問入浴介護とは、利用者宅に看護師と介護スタッフが特殊浴槽を持って訪問し、入浴介助を行うサービスです。
訪問入浴介護は、入浴後の体調変化が著しい人や、寝たきりでデイサービスの利用が難しい人など、比較的要介護度の重い人が利用しています。
高齢者の中には「寒い」「面倒くさい」などの理由で入浴を嫌う人も多く、「お風呂は転びそうで怖い」と入浴を拒否する人もいます。
ですが、上記で紹介した訪問介護やデイサービスを利用すれば、プロの入浴介助が受けられます。
利用者に気持ちよく入浴してもらえる声掛けや上手に浴室まで誘導する方法など、介護スタッフにはさまざまな技術があるため、嫌がる高齢者でも無理なく入浴できるはずです。
入浴を拒否する要介護者に対し、「今日こそはお風呂に入ってもらわないと」と思うこと自体が介護者のストレスになります。
困ったときは、迷わずプロの手を借りましょう。
お風呂の介助は大変だものね。困ったときはぜひプロの手を借りたいわ。
自宅で生活をする高齢者の中には、1日中テレビを見て過ごしている人も少なくありません。
家で引きこもっている高齢者は、足腰が弱ったり、認知機能が衰えたりする恐れがあるため、なるべく外に出るよう促すことが大切です。
外出すると他者から見られる意識が働き、身だしなみにも気を遣うようになります。
昔好きだったことや、興味がもてそうなことがあれば、本人も楽しみながら外出できるはずです。
そのほか、デイサービスやデイケアなどの通所サービスを利用したり、高齢者を対象とした地域のイベントに参加したりするのもよいでしょう。
外に出たくなるような楽しみがあるといいわよね!
この手の相談は、男女問わずとても多いです。
これは、高齢者がもつ「デイサービス=つまらない場所」というネガティブなイメージが原因でしょう。
特に認知症を患っている利用者の場合、自宅に迎えに行っても、本人から「行かない」と拒否されることも珍しくありません。
ただ、介護スタッフはこのような状況に慣れているので安心してください。
通所拒否のある利用者のお迎えは時間を長めにとったり、利用者と相性の良いスタッフを配置したりして対応します。
また、デイサービス利用中は、あの手この手を使って利用者の気持ちをほぐし、できるだけ楽しい時間を過ごしてもらえるよう工夫しています。
そのため、デイサービスへの通所を嫌がっていた利用者から「こんなに楽しいなら、もっと早く来ればよかった」と言われることも多いです。
そうはいっても、本人が行きたくないと言っているのに、無理やり通わせるのはどうだろうと悩む家族もいるでしょう。
しかし、デイサービスには必要な介護を受けるだけでなく、引きこもりの防止や本人のQOL向上の目的もあります。
デイサービスの通所によって楽しみや生きがいができ、性格が明るくなる高齢者も多いです。
何歳になっても、他者との交流は人をいきいきとさせる効果があるので、引きこもりがちの人こそデイサービスを利用してもらいたいものです。
デイサービスによっては将棋や囲碁、お風呂も楽しめるみたいだからちょっと行ってみたい気もするなあ。
在宅介護をしている介護者の中には、さまざまな悩みや不安に押しつぶされそうな人もいるでしょう。
そのようなときは、ケアマネジャーをはじめとする介護のプロに相談しましょう。
介護サービスには、介護される人だけでなく介護をする人の生活を支える目的もあります。
在宅介護をしている人は、本人や家族のニーズに合わせて適切なサービスを利用し、無理をしないことが大切です。
著者:柴田 まみ
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