高齢者が“健康に”長生きするには?秘訣は生きがいと外出にアリ!

日本人の平均寿命は男女ともに年々長くなっているっポ。でもきっと、ほとんどの人は「“元気に”長生きしたい」と願っているんじゃないかな?

そうだね。わたしは死ぬまで元気でいたいなあ。

実は……高齢者が、病気の影響を受けず、介護を必要としない暮らしをするには、「生きがい」が重要だっていうデータがあるっポ。

「生きがい」が「健康な長生き」に関係するなんて、不思議な気がするけど……。

じゃあ、健康寿命を延ばす生きがい作りの重要性について、詳しいデータを参考にしながら解説するっポ!

平均寿命と健康寿命の差は小さくしたい

まずは、日本人の平均寿命と健康寿命につて確認するっポ!

厚生労働省が公表した2018年の簡易生命表によると、日本人男性の平均寿命が81.25年、日本人女性の平均寿命が87.32年と、男女ともに過去最高をマークしました。前年と比べると男性が0.16年、女性が0.05年長くなったとされています。

なお、2018年に生まれた赤ちゃんが75歳まで生きられる確率は男性75.6%、女性88.1%です。一方、90歳になると男性は26.5%、女性は50.5%の確率になります。女性の約半数の人が90歳になっても存命しているという結果に驚く人も多いかもしれません。

ただし、これはあくまでも平均的な寿命の話。「大事なのは健康寿命の方だ」という声が聞こえてきそうです。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間(厚生労働省の定義)」のこと。つまり、病気の影響を受けない、介護を必要としない元気な期間を指します。

誰もが病気になったり介護を必要としたりせずに生活を続けたいと願っていますし、健康寿命が長ければ長いほど、本人の幸福度にもつながります。
ですから、平均寿命よりも健康寿命の方が重要だと考える人も多いでしょう。

2016年に公表された日本人の健康寿命は男性72.14年、女性74.79年。データを見てわかる通り、平均寿命と健康寿命との差が大きいのが課題です。
計算上だと、男性は9.11年、女性は12.53年の間、何らかの介護を受けることになります。その結果、今後も日本では医療や介護にかかる給付費用の増加が予想されるのです。

日本人の平均寿命と健康寿命の差

そこで、政府は介護予防を含め、男性・女性ともに健康寿命を3年以上延ばすことを当面の目標として掲げています。

10年近くも健康じゃない期間があるのは困るよ!

生きがいの有無で変わる要介護率

じゃあ、高齢者が生きがいをもつことでどんな効果が生まれるのかをチェックしてみるっポ。

40~79歳の人を対象とした首相官邸「『生涯活躍のまち』構想中間報告」(2015年)によると、生きがいが「ある」人は、「ない」人に比べて、7年後の生存率が10%以上高いという結果が出ました。

生きがいと生存率

*「生涯活躍のまち」構想中間報告(首相官邸)より

さらに別の調査では、人生の目的の有無、つまり生きがいがあるかないかで、将来介護が必要になる確率にも違いが出たとされています。調査の結果、人生の目的が「ある」人は、「ない」と答えた人に比べて、6年後に介護を必要としている人が約40%も少なかったのです。

ここでいう「生きがい」とは、仕事であったりボランティアであったり趣味であったりと人それぞれですが、その人がもつ生きる意味こそが、生きる力につながっているのでしょう。特に、日本人男性の場合、高齢になっても働きたいという人は少なくありません。
その証拠に、一概にはいえませんが、各市町村の高齢者就業率と健康寿命は比例しています。つまり、「働く高齢者が多い市町村には元気で長生きの人が多い」といえるのです。

たしかに、わたしも定年後は心にポッカリ穴があいたようだったよ。またできる範囲で仕事をはじめてみるのも、いいかもしれないな。

健康で長生きするなら「外出」がポイント

健康寿命を延ばすなら、「生きがい」以外に「外出」やも心掛けるといいっポ。

同調査には、75歳以上の人の外出について5年間継続調査した結果も報告されています。これによると、外出の回数が多い高齢者ほど身体機能が維持され、介護を必要とする確率が低いことが判明しました。
たとえば、身体機能を維持している男性68.1%、女性42.5%が「毎日外出している」と答えています。反対に、身体機能が低下した人で「毎日外出している」のは、男性28.6%、女性23.8%にとどまっているのです。


*「生涯活躍のまち」構想中間報告(首相官邸)より

また、洛和会ヘルスケアシステムの資料によると、一人暮らしの高齢者のうち、健康を維持している人の83%が何らかの趣味をもっていると答えました。その中の61%の人が旅行やコーラスなど外出を伴う趣味があると回答しています。
一方、健康が悪化していると感じる人の59%が、外出を伴わないテレビ鑑賞や編み物などが趣味だという結果でした。


*第221回らくわ健康教室介護版(洛和会ヘルスケアシステム)より

生きがいがあるから外出する、もしくは外出が生きがいになる、どちらが先かはわかりませんが、外出は高齢者の健康寿命を延ばすことが、このアンケート結果からも読み取れます。

旅行も好きだけど、盆栽がいちばんの趣味だし……。もう少し外出の機会を増やす趣味を見つけようかな!

生きがい作りだけじゃない、外出のメリット

高齢者が外出することには、以下のようなさまざまなメリットがあるっポ。

  • 運動機能の維持向上
  • 認知機能の低下防止
  • 孤独感の解消
  • 精神の安定
  • 孤立化の防止

まず、運動機能の維持向上が挙げられます。外出をすることで体力がついたり、筋力の低下を防いだりすることができるでしょう。さらに、外出するには身だしなみを整えたり交通手段を考えたりと頭を使うため、認知機能の低下を防止します。

また、さまざまな人と交流するうちに「自分は1人ではない」とわかり、孤独感の解消につながります。もちろん、気分転換にもなるので精神的な安定も図れるでしょう。
加えて、外出は自分の存在を周囲に気にかけてもらえるキッカケにもなります。定期的に参加しているボランティア活動やサークルがあれば、突然顔を見せなくなったときに「何かあったのだろうか」と周りの人に心配をしてもらえるので、孤立化を防ぎます。

一方、「外出」というとハードルが高いと感じる人もいるかもしれませんが、まずは1日に1回外の空気を吸うことからはじめてもよいでしょう。たとえば、自宅の玄関先を毎日掃除する、花に水をあげる、新聞を取りに行くなどをしながら、日常的に近所の人と挨拶を交わすことが、老後の孤立化を防ぐこともあります。
このように、家から一歩出ることこそが介護予防の一歩につながるのです。

介護予防のために外出の機会を増やそうと、各自治体でもさまざまな取り組みがされています。特に、「通いの場」を作ることに重きを置いている自治体が多く、介護予防の体操やお茶会などを実施して、高齢者の外出を促しています。
居住する地域にどのような介護サロンやサークルがあるかを調べ、自分に合った居場所を見つけるとよいでしょう。

なるほど! 外出先がみつけられない場合は「通いの場」に行ってみるっていうのも手だね。

生きがい作りは健康寿命を延ばす重要なカギ

高齢者の介護予防は「生きがい作り」がカギを握っているっポ。役割や楽しみをもつことが生きる力になるから、まずは自宅から出ること、そして、自宅以外に自分の居場所を作ることが大切なんだ。
その結果、人とのコミュニケーションや外出が気分転換になることもメリットだよね。健康面の維持向上につながるから、長く元気に暮らせるんじゃないかな。

<参考資料>
「生涯活躍のまち」構想中間報告(首相官邸)
第221回らくわ健康教室介護版(洛和会ヘルスケアシステム)

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著者:柴田 まみ

介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉主事任用資格保有
特別養護老人ホームのユニットリーダーや、デイサービスの生活相談員に従事し高齢者福祉に携わる。特にデイサービスでは、介護をするご家族とのやり取りから在宅介護の難しさを実感。現場での経験を活かし、現在、介護関連の記事を執筆中。できるだけわかりやすい言葉を使って、介護の知識がない人でも理解しやすい文章を心がけている。座右の銘は、継続は力なり!

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