7月のレクリエーションといえば七夕。ちょっとした工夫で利用者の満足度が上がるから、デイサービスや介護施設のレクで実践してみてほしいっポ。
梅雨の影響で雨の日が多い7月は、気温の高さから熱中症の心配もあります。
屋外でのレクリエーションは敬遠しがちになるため、7月は屋内でのレクを企画するデイサービスや介護施設も多いのではないでしょうか。
レクリエーションの企画で大切なのは、準備が大変過ぎないこと、そして何よりもご利用者に満足してもらえるがどうかです。
七夕レクはときに幼稚になりがちですが、実際に喜ばれた事例とアイデアをヒントに、ご利用者に満足してもらえるレクを考えてみてください。
七夕といえば、願い事を書いた短冊を笹に飾る「笹飾り」のイメージが強く、デイサービスや介護施設でも7月は笹飾り作りのレクリエーションを行う施設が多くあります。
しかし、七夕の笹飾りは小さな子供や幼稚園などをイメージさせることもあるため、高齢者に幼稚だと嫌がられてしまう心配もあるかもしれません。
ですが実は、七夕の笹飾りを作る過程にはいろいろなリハビリの要素が含まれています。
身体機能や認知症の症状に差があっても、ちょっとした工夫をすることで、リハビリをしながら幅広いご利用者に楽しんでいただけるのです。
ご利用者の拒否が心配だったある事例を紹介しましょう。
今回紹介するのは、拒否の心配があったデイサービスの利用者が、七夕レクに前向きに取り組めた事例です。
あるデイサービスに、やよいさんという女性がいらっしゃいました。
利用者の中でもボス的な存在のやよいさんは、スタッフが提案したレクリエーションを強く拒否されることがあり、予定していたレクができなくなったことが何度もありました。
スタッフは7月のレクリエーションで「七夕の短冊づくり」を検討していましたが、やよいさんに拒否されないかと心配です。
もし「そんな幼稚なことしないわよ」と拒否されてしまえば、周囲の仲良くしているご利用者も同調しかねません。
どうすれば拒否されないだろうかと、スタッフは頭を悩ませていました。
そこで、伝え方の工夫をしてみることにしました。
左手が少し不自由だったやよいさんに対しては、「短冊を結ぶこより作りや笹飾りの糊付けを、左手メインでやってみましょう」と提案。
そのほかのご利用者にもそれぞれに課題を出して、短冊作りは指先の巧緻性(こうちせい)向上のリハビリになると伝えました。
ちなみにこより作りは、親指とほかの4本の指を順番に使ったり、こより方を逆にしたりすると難易度があがります。
このような、簡単ではないけれども難しすぎず、時間をかければできそうな課題を設定しました。ご利用者が達成感を感じられるかどうかがポイントです。
簡単にできてしまう人には、数をたくさん作ってもらう、こより作りが困難な人をサポートしてもらうなどの役割を担ってもらい、七夕レクに皆が真剣に取り組める環境を作りました。
高齢になると、達成感や成功体験を得ることが少なくなります。利用者が成功体験を意識できるように、介護スタッフはその人を認めるような肯定的なことばを使うようにしました。
相手を認める「できてますよ」「いいですね」や、感謝を示す「ありがとう」などは、高齢者にとって魔法のことばになることもあるのです。
デイサービスでの成功体験が、高齢者のその後の生活に活かされることもあります。魔法のことばを使えば、その効果をさらに増強できるのです。
これらのことを注意して行った七夕レク。ご利用者が書いた短冊には「リハビリをがんばって旅行に行けますように」「まだまだ人の役に立ちたい」などの前向きな願いが多く見られました。
七夕のレクリエーションは、短冊づくりのほかにもクイズや連想ゲーム、折り紙、歌、昔を回想する会話、夏らしい涼しげなメニューでの食事レクなどを取り入れることができます。
7月14日のゼリーの日にちなんで、涼しげなゼリー作りのレクリエーションはいかがでしょうか。
ゼリーはのど越しがよく、食欲が低下しがちな夏にはぴったりで、嚥下もしやすいため高齢者にもおすすめのおやつです。
作り方は、野菜や果物のジュースに溶かした寒天やゼラチンを混ぜたあとは、型に入れて冷やし固めるだけ。少ない材料で簡単に作れます。
七夕をイメージして星の型を使ったり、小さくカットしたスイカなどのフルーツを入れたり、工夫次第でいろいろな楽しみ方ができるのも魅力です。
ご利用者の状況に合わせて、一人ひとりに合ったオリジナルのゼリーを作るのもよいでしょう。
また7月は、『たなばたさま』や『海』をはじめとした七夕や夏をイメージする歌がたくさんあります。
童謡を歌うことに幼稚なイメージを持つ高齢者もいるかもしれませんが、いきなり歌うのではなく一言加えるだけで印象が変わります。
「子どもの頃の七夕の思い出を話して下さい」「子どもの頃を思い出して歌ってみましょう」といった一言で、幼稚なものではなく回想法に変えることができるでしょう。
七夕会や納涼会などのイベント時には、ご利用者に浴衣に着替えてもらうのも風情があっておすすめです。浴衣であれば帯結びが大きくならず、車椅子の高齢者でも十分に楽しめます。
地域によっては着付けの手伝いをするボランティアがいることもあります。スタッフだけでは人手が足りないようなら、お手伝いしてもらうとよいでしょう。
ときには思いっきりおしゃれをしてレクリエーションやイベントを楽しめば、ご利用者の満足感が上がります。
ご利用者に積極的にレクリエーションに取り組んでもらうためには、レクによって期待できる効果を説明するだけでも変わります。
どのようなレクリエーションでも、単に「こんなレクをしますよ」だけでは楽しさやメリットが伝わりません。
今回の事例では、「機能訓練になる」というメリットを伝えたことで、やよいさんだけでなくデイサービスの皆さんが七夕レクに積極的に取り組み、盛り上がるレクになりました。
また、高齢者の「がんばればできる」「人の役に立てる」という意識を顕在化させることで、自信を取り戻せた事例ともいえます。
レクリエーションの企画は職員が主体になりがちですが、ご利用者の意見を募りながら企画をすると、マンネリ化しがちなレクも違った視点からとらえることができます。
ご利用者の満足度を上げるために、ぜひさまざまなアイデアを取り入れてみてはいかがでしょうか。
著者:寺岡 純子
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