老人ホームの入居者は年末年始をどう過ごす?大晦日・お正月・レク事情

老人ホームに暮らす高齢者は、大晦日やお正月をどう過ごしているのかな?

外からは老人ホームの内部がわからないから、確かにちょっと気になるね。

老人ホームの年末は、餅つきレクでお正月の準備

年末の老人ホームでよく見られるレクリエーションのひとつに、お正月に向けた餅つきがあります。毎年恒例の行事になっている施設も多いようです。
高齢者にとって餅つきは季節を感じられるイベント。職員が餅をつくと、入居者からは自然と「よいしょー」との掛け声があがり、つきあがった餅はみんなで一緒に丸めて鏡餅を作ります。

餅つきはレクとしてもお正月の準備としても楽しいイベントです。比較的元気な高齢者が多い有料老人ホームなどでは、入居者も積極的に杵を持って参加される様子が見られます。
しかし、餅をつく作業は高齢者にとってかなりの重労働。特別養護老人ホーム(特養)といった介護度の高い入居者が多い施設では職員が餅をつくことが多いでしょう。

12月の老人ホームでは、ほかにも大掃除をしたり、しめ縄や門松といったお正月飾りを準備したりと、新年に向けて慌ただしくなります。

「起きて新しい年を迎えたい!」老人ホームの大晦日

お正月飾りの準備も終わり、いよいよ大晦日。新しい年を迎えられることに気持ちがワクワクされているな、と感じる高齢者がたくさん見られます。

老人ホームの入居前、高齢者はテレビを見ながら家族で団らんしたり、初詣に出かけて年越しをしたりされていたことでしょう。
そういったワクワク感からか、大晦日は起きて年を越したいと希望される方も少なくありません。

老人ホームでは、入居者お一人お一人の生活に合わせて、その人らしい日常が送れるように工夫しています。そのため希望があれば、自宅で過ごしていた頃と同様に、夜遅くまで起きて新年を迎えることが可能です。
ただ実際は、「途中で睡魔に負けて寝てしまった」と翌朝起きてこられる高齢者もけっこういらっしゃいます。

新しい年を迎えられる喜びは若い人以上でしょうし、夜勤のスタッフと談笑して夜更かしをするのも、高齢者にとっては生きがいにつながるのかもしれません。

老人ホームの入居者みんなでお正月料理を楽しむ

大晦日を過ぎると1月1日、元日です。お正月を感じさせる食事におせちは欠かせません。
老人ホームでは、高齢者にお正月の食事を楽しんでもらえるように、調理の担当者はさまざまな献立の工夫をします。

たとえば、噛む力が弱い方でもおせちが食べられるように、きざみ食やソフト食に対応してくれる施設もあります。みんなで一緒にお正月料理を楽しめる工夫がされているのです。

また、全国各地でそれぞれの特色が出るお正月のメニューといえばお雑煮です。
高齢者は餅をのどに詰まらせやすく危険ですが、ご飯やイモを混ぜる、白玉粉を使用するなどの粘りを減らす工夫をして、もしもの事態に配慮しています。

入居者みんなでお正月の料理を楽しめる、そのことに喜びの言葉が発せられることも少なくありません。
高齢者からの感謝の気持ち、そしてみんなが元気に新年を迎えられることは、お正月返上で仕事をする介護職員の励みになっています。

「昔の自分を取り戻した」お正月に向けた着物レクの事例

高齢になり健康状態に不安を抱えながら老人ホームに入居すると、それまでの楽しみや自分らしさを我慢しながらの生活となることもあります。
86歳のキクエさんもその一人でした。

キクエさんは車椅子で生活されています。半年前に自宅で転倒して足を骨折したことがきっけです。
もともと茶道の先生をされていたことから、以前は外出時には着物を着ることが多く、周囲の人のイメージは「着物姿のキクエさん」だったそうです。

しかし車椅子での生活となり、老人ホームに入居してからは着物を着る機会がなくなって残念に思っていたようでした。

ある年の瀬、そんなキクエさんに着物レクの知らせが届きます。着物を着てお化粧をし、お正月を前に記念撮影するという内容のものでした。再び大好きな着物を着られると楽しみにされていました。

着物レクの当日、業者からレクチャーを受けた施設職員によってキクエさんにも着付けがされました。
車椅子で立ち上がることも難しい自分がはたして着物を着ることができるのか、帯が苦しいのではないかなどの不安があったようです。

しかしその着物のウエスト部分にはゴムが入っていて、着崩れしない工夫がされながらも苦しくありません。
帯もマジックテープで止めるだけで簡単なのに、ちゃんと締めているように見えます。帯のうしろの部分にはクッションが入っていて、車椅子に座っていても痛くないようなアイデアまで。

長年にわたって着物を着てきたキクエさんは、この工夫に驚きと感動を受けたようです。
数分で着物姿に変身し、普段はしないメイクをして記念撮影をしてもらったキクエさんは、初めて振袖を着た少女のような笑顔ではしゃいでおられました。
久しぶりに着物を着たことで、昔の自分を取り戻されたようにも見えました。

それまでは「もう昔のような生活はできない」と、足が不自由になったことを落ち込んでいたキクエさんですが、「これからは、ときどきおしゃれをして出かけたい」と感想を聞かせてくれました。
そのときの写真を年賀状にして友人に送ったところ、とても好評だったそうです。

コロナ禍の年末年始、老人ホームの面会はオンラインで?

この年末年始は、移動を避けるなど新型コロナウイルスの影響を受ける方が多いと思います。それは老人ホームでも同じです。

通常の年末年始であれば、ご家族の面会が多くなったり、一時的に自宅に帰って家族と過ごしたりする入居者もある程度いらっしゃいます。

しかしコロナ禍のいまは、面会制限を設けている老人ホームも少なくありません。ご家族が来られても部屋には入れずに、ガラス越しの面会を余儀なくされることもあります。自宅に帰って家族と一緒に過ごすことも困難です。

少し寂しいかもしれませんが、コロナ禍でもオンライン面会であれば気軽に面会が可能です。移動の手間や移動中の感染リスク、高齢者に感染させる危険がないといったメリットもあります。
身内や友人が老人ホームに入居されているなら、オンライン面会が可能かを確認してみるのもよいかもしれません。

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この内容は一例だっポ。老人ホームによって年末年始の過ごし方は異なるから、詳しく知りたい場合は各施設に問い合わせてみてね。

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著者:寺岡 純子

合同会社カサージュ代表
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、終活カウンセラー1級
8年間の臨床看護を経て、介護保険の開始に伴い介護業界へ転向。全国展開する大手介護事業者で部長職としてさまざまな介護サービスの運営・人材育成を経験する。医療・介護の幅広い知識と経験を多くの介護事業者に届けたいとの思いから独立。現場・事業者・利用者の視点に立ち、介護に特化した研修や事業者・介護者のサポートを行っている。

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