介護で使用する車椅子の部位には、さまざまな機能が備わっています。それぞれの部位について、名称や役割、機能、選び方、注意点などをわかりやすく解説します。
介助用・自走用と車椅子の種類によっては備わっていない機能もありますが、一通りの機能を紹介しましょう。
車椅子の部位にはそれぞれ名称があるっポ。役割や機能、注意点を解説するよ!
アームサポート(アームレスト)は、車椅子の利用者が肘から先の腕を乗せるための部位です。
一般的な「固定タイプ」以外にも、取り外しができる「着脱タイプ」や角度を切り替えられる「はねあげタイプ」などがあります。
車椅子での移動中に腕を置く場所になるほか、立ち上がる際の支えとしても活用することが可能です。
車椅子からベッドやトイレに移動する際は、着脱タイプやはねあげタイプなどの可動できるアームサポートの方が邪魔にならないため便利です。
サイドガードは、アームサポートの下に張ってある布の部位です。
利用者が丈の長い衣服を着ていると、横から衣服がはみ出して車椅子に巻き込まれる可能性があり、非常に危険です。
しかし、サイドガードがあれば衣服が車椅子の外側へはみ出す恐れをなくし、巻き込み事故の発生を未然に防ぐことができます。
座シートは、車椅子の利用者が座る部位を指します。
通常タイプのほかにも、地面との距離が近い「低床タイプ」があります。通常タイプで足が浮いてしまう小柄な人は低床タイプがおすすめです。
また、座シートの高さが低いと車椅子の重心が安定するため、足こぎタイプの車椅子を利用する人にも低床タイプが適しています。
クッションは、座シートの上に乗せる部位です。「エアータイプ」や「ゲルタイプ」などさまざまな素材があり、車椅子を利用する人の負担を和らげることができます。
注意点として、クッションを使う場合は座面の高さが変わります。高さが合っていないと、車椅子利用者の首や腰へ負担を与えてしまいますので、クッション分の厚みを加味して座面の高さを調整しましょう。
また、長い期間クッションを使っていると、体重によって潰れることがあります。そのため、定期的に新しいクッションと取り替えるといった対応が必要です。
レッグサポート(レッグレスト)は、利用者の足を支える部位です。
硬いプレートや柔らかい布地などでつくられています。ふくらはぎ辺りを支えることによって、フットサポートから足がずり落ちる事態を防げます。
もしレッグサポートがなければ、足がずり落ちて地面や車椅子に巻き込まれる危険性があります。割れる・破れるなどの破損があった場合は、ただちに新しいレッグサポートに交換しましょう。
フットサポート(フットレスト)は、車椅子利用者の足を乗せる部位です。
一般的な「固定タイプ」以外にも、両側にひらく「スイングアウトタイプ」や上下に移動できる「エレベーティングタイプ」があります。
車椅子からの乗り降りが多い人には、邪魔にならない可動タイプが適しています。
キャスタは、車椅子についている前輪の部位です。
駆動輪(後輪)と比べると直径が小さく、車椅子によって3~7インチ程度とバラつきがあります。
付け根の部分は360度回転するようになっていて、車椅子の進行方向を変えるという重要な役割を担っています。
ブレーキは、車椅子の駆動輪を固定する部位です。
自動車でいうところのパーキングに当たる部分で、停止している車椅子が傾斜によって勝手に走行してしまう事態を防ぎます。
ブレーキの原理は自転車と同様で、駆動輪を押さえつけた際に発生する摩擦力で停止させます。
駆動輪は、車椅子についている後輪の部位です。
その名の通り車椅子へ駆動力を与える役割を持っています。直径はキャスタより大きく、用途によって異なりますが12~24インチ程度です。
駆動輪には一般的な「エアータイヤ」と空気を入れない「ノーパンクタイヤ」があり、屋外・屋内など用途によって使い分けられています。
ティッピングレバーは、介助者が車椅子を持ち上げる際に踏む部位です。
介助者がティッピングレバーを踏むと、てこの原理で車椅子の前方が作用点になり、斜めに持ち上がります。
ティッピングレバーを使って車椅子の前方を持ち上げると、わずかな段差を上ることが可能です。
ハンドリムは、駆動輪の外側についている部位です。
介助者がいなくても進める自走タイプの車椅子についています。手で駆動輪をまわす際は、指が巻き込まれないよう気をつけましょう。
ハンドリムの材質は、樹脂製やステンレス製などさまざまです。駆動輪をまわす力がない人は補助用のノブや滑り止めのチューブをつけることもあります。
介助ブレーキは、介助者が車椅子を停める際に使う部位です。
移動中の車椅子を一時停止させたり、スピードを調節したりするときに介助ブレーキを使用します。
介助ブレーキが壊れているといった理由でブレーキが効かないと、坂道でスピードが出すぎる、前方との衝突を避けられないなど、大事故につながりかねないため、故障していないか注意が必要です。
ハンドグリップは、介助者が車椅子を動かす際に使う部位です。
自転車と同じようなハンドルの形状で手に合わせたかたちのため、しっかりと握ることができます。
背シートは、車椅子の利用者が背中を預けて寄りかかる部位です。
長い時間座ることが多い車椅子では、正しい姿勢をずっと維持するのが難しく、次第に姿勢が崩れていきます。
しかし、正しくない姿勢は首・背中・腰を痛める可能性があるため、避ける必要があります。
背シートに寄りかかりながら正しい姿勢を維持することで、身体への負担軽減が可能です。
背張りが調整できるタイプやリクライニングタイプなどさまざまな種類がありますので、利用者に合わせた背シートを選びましょう。
車椅子は介助者や利用者にとって非常に便利な反面、ちょっとした油断が事故につながる恐れもある乗り物です。
しかし、きちんと部位や役割を認識していれば、介護では欠かせない存在といえます。
車椅子を正しく安全に使うためにも、各部位の名称や役割をしっかりと学んでおくことが大切でしょう。
著者:立石 芳樹
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