健康な人はデイサービスに通えるのでしょうか。
「まだ要介護状態ではないけれどデイサービスに通いたい」「最近引きこもりがちなので運動や外出の機会を増やしたい」。そんな高齢者もいるかもしれません。
この記事では、健康な人がデイサービスを利用するための条件や料金、メリットなどについて解説します。
まずは一般的なデイサービスの特徴と目的を簡単に紹介するっポ。
デイサービス(通所介護)とは、高齢者がデイサービスセンターなどの施設に通って受けるサービスです。基本的に要介護1〜5の認定を受けた人が利用できる介護保険サービスで、認定を受けている人は1〜3割の費用負担で利用できます。
デイサービスには職員による送迎があり、日帰りで利用するのが一般的です。施設ではレクリエーションや食事、入浴、機能訓練などのサービスを受けられ、必要に応じて職員が食事や排泄などの介護をします。
デイサービスの目的は、利用する人が可能な限り自立した日常生活を送れるようにすることです。
高齢者は足腰が弱ったり、体力が低下したりして自宅にこもりがちです。そんなときでもデイサービスに通えば、外出の機会を増やすことができるほか、他の利用者とのコミュニケーションの機会も得られます。
また、家族の介護負担の軽減にも役立つでしょう。
健康な人がデイサービスに通うにはどんな条件があるのかな?
介護保険のデイサービスは、要介護1〜5の方が対象です。そのため、要介護認定を受けていない健康な人は通うことができません。
ただし「介護予防・生活支援サービス事業」の対象者であれば、介護予防を目的としてデイサービスなどの通所サービスを利用できます。
「介護予防・生活支援サービス事業」とは、「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」のひとつです。通常の介護サービスや介護予防サービスとは異なり、地域の実情に合わせた内容や費用のサービスが提供されるものとなっています。
対象者は以下です。
「基本チェックリスト」とは、高齢者の心身の状態を簡易的に調査するもので、運動機能や栄養状態などに関する25の設問で構成されています。
チェックリストによる確認を実施した結果、生活機能の低下がみられた方については総合事業の対象となります。
介護予防・生活支援サービス事業のデイサービスには4種類あるっポ。
要支援1・2の認定を受けた人と基本チェックリストで対象となった人が利用できる通所サービス(デイサービスなど)には、サービス内容や提供者などの違いによって4つの種類があります。
具体的なサービス内容については特に決まりがなく、地域や施設によって異なります。
生活機能の向上や栄養改善など、利用する人の状態に応じて、要介護状態になることを防ぐための支援が行われるのが一般的です。
一般的なデイサービスによるサービスです。通常のデイサービスと同じようなサービスや生活機能向上のための機能訓練が提供されます。
集中的に生活機能を向上させるトレーニングをすることで状態の改善・維持が見込まれる人や、以下通所型サービスA~Cの利用が困難な人などを対象としています。
旧来の介護予防通所介護の基準を一部緩和したサービスです。民間の事業者やNPOが運営する事業所で、ミニデイサービスや運動、レクリエーションを中心としたサービスを受けられます。
利用する人の状態を踏まえて提供するサービスに違いがあります。
主に体操、運動などの活動をする自主的な通いの場で、ボランティアが主体となってサービスを提供します。
住民が中心となり、体操教室を開いたり定期的な交流会を開いたりします。
市町村の保健・医療の専門職が、生活機能の改善に向けて運動器機能向上や栄養改善などのプログラムを実施するサービスです。
ADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)の改善に向けた支援を、必要な方に対して3〜6か月の短期間で実施します。
健康な人がデイサービスを利用したいと思ったときの流れだっポ。
デイサービスの利用を希望するのであれば、お住いの地区を管轄する地域包括支援センターや市町村の役所窓口に相談することが最初の一歩です。
デイサービスの利用を開始するまでの流れはおおむね以下となります。
まずは、お住まいの地区の地域包括支援センターや市町村の窓口に相談してみましょう。
相談する際は利用する本人の身体の状態や望んでいることについて伝えると、担当者との相談がスムーズに進みます。
相談の結果、介護予防・生活支援サービス事業を利用する方向になれば基本チェックリストを実施します。担当者がチェックリストの質問項目について本人に確認し、その結果から対象者になるかどうかが判断されます。
要介護・要支援認定が出そうな人であれば、基本チェックリストではなく要介護認定の申請を進めることになります。その後は要介護認定調査などを経て要介護度が決定します。
基本チェックリストの該当者や要支援1・2に認定された方は、地域包括支援センターで介護予防ケアプランを作成してもらいます。
要介護1~5に認定された方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーにケアプランを作成してもらいます。
サービス利用についての計画が作成されたらサービスの利用を開始します。
要支援1・2、もしくは基本チェックリストの該当者は介護予防・生活支援サービス事業のデイサービスを利用することになります。
実際に利用していくうちに、想像と違っていた、違うサービスを受けたいなどの要望が出てくるかもしれません。気になることがあったときは、ケアマネジャーに相談すると解決策を検討してくれるでしょう。
健康な人が通えるデイサービスの料金と利用回数のめやすだっポ。
介護予防・生活支援サービス事業のデイサービスは、どのくらいの料金がかかり、1週間に何回通えるのでしょうか。
デイサービスの料金と通える回数について解説します。
介護予防・生活支援サービス事業におけるデイサービスの利用料金の目安(自己負担1割の場合)は次のとおりです。
ただし料金設定は自治体により異なるため、各市町村への確認が必要です。
事業対象者・要支援1(1か月) | 1,672円 |
---|---|
事業対象者・要支援2(1か月) | 3,428円 |
事業対象者・要支援1(1回) ※月4回まで |
384円 |
事業対象者・要支援2(1回) ※月5~8回 |
395円 |
このほかに、運動器機能向上や口腔機能向上などのメニューを追加で利用すると、各種加算が上乗せされます。
なお、一定額以上の所得がある方は、自己負担額が2〜3割となります。
介護予防・生活支援サービス事業のデイサービスに通える回数の目安は週1~2回です。
目安としては週1~2回程度ですが、利用者本人の状態などによっては、週2回以上通える場合もあります。
例えば、福島県いわき市では、サービスの利用回数の制限に関する質問に対して以下のように回答しています。
要支援1、2の通所介護には回数制限はありませんが、一定回数以上を利用した場合、支給区分に応じた上限月額での請求となります。
引用:いわき市「介護予防・日常生活支援総合事業報酬体系見直しに係わる質問集」
ただ、月当たりの回数制限は市町村によって基準が異なります。また、回数はケアプランで決められているため、個人の希望だけで増やすことはできません。
詳しくはケアマネジャーに確認してみるとよいでしょう。
健康な人がデイサービスに通う大きなメリットは介護予防や認知症予防ができることだっポ。
要支援の認定を受けた方や、基本チェックリストで対象となった方は、まだ介護が必要でない状態といえます。そういった健康な人がデイサービスに通う主なメリットとして以下が挙げられます。
デイサービスは、週の決まった曜日の決まった時間に通うのが一般的です。そのため、デイサービスに通うことで生活のリズムが整いやすくなります。
高齢になると、足腰が弱ったり気力が低下したりして、外出がおっくうになりがちです。車の免許を返納して、外出の足がなくなってしまうこともあるでしょう。
そんなときはデイサービスに通うことが、引きこもりを解消するきっかけになります。
高齢者は外出が減ることで社会生活や人とのつながりからも孤立しがちです。そのため、デイサービスの利用は社会との接点を増やす大きな手助けとなるでしょう。
デイサービスは多くの高齢者が集まる小さな社会といえます。そこで社会参加をすることで生活にも張り合いが出ます。
また、利用者同士や施設のスタッフなどとのつながりができるため、一人暮らしでももし異変があれば誰かが気づいてくれる可能性が高くなります。
デイサービスでは、レクリエーションや食事の時間などを通して、他の利用者とコミュニケーションの機会を得られます。
国立長寿医療研究センターが行った調査によると、「友人との交流がある」「地域のグループ活動に参加している」など5つのつながりがある人は、つながりが1つ以下の人と比べて認知症発症リスクが46%低いことがわかっています。
他者との交流は、認知症予防にも大きな効果が期待できるでしょう。
足腰の衰えや気力の低下が原因で外出しなくなると、ますます筋力が低下して引きこもりがちになるという悪循環に陥ってしまいます。
デイサービスで体操や軽い運動をして足腰を鍛えることで、健康を維持しやすくなるでしょう。
デイサービスでは、機能訓練を兼ねたさまざまなレクリエーションを実施しています。レクリエーションを通して利用者同士のコミュニケーションを楽しむことは、生活の中の彩りにもなるでしょう。
レクリエーションの内容は施設によって異なりますが、デイサービスで趣味を楽しむ時間ができれば、より充実した時間を過ごせます。生きがいが増えることもデイサービスに通う大きなメリットといえます。
筋力や認知機能の低下が進行すると、歩くことが難しくなったり、物忘れが多くなったりして、日常生活に介助が必要になります。
要介護状態にならないよう予防するためにも、定期的にデイサービスに通って社会参加をすることや、体を動かして健康を維持することが重要となります。
デイサービスを選ぶポイントを紹介するっポ。
デイサービスを選ぶポイントはさまざまです。利便性や雰囲気、レクリエーションの有無など、希望に合わせて選んでみるとよいでしょう。
健康な人がデイサービスに通うときには、下記のポイントを意識すると希望に合った施設を選べる可能性が高くなります。
自宅に近いデイサービスを選べば、通うときの負担が少なくてすみます。送迎の有無も施設によって違うため、希望や都合に応じて選んでみましょう。
送迎がないデイサービスなら、道順やどのような交通機関を利用するのかもチェックしておくと、通うイメージがしやすくなります。
デイサービスは9時から17時ごろまで利用できるところが一般的です。しかし、施設によっては午前のみ・午後のみなど短時間の利用しかできません。
利用時間の希望によって、選ぶ施設も変わってくるでしょう。
デイサービスでは運動や機能訓練、レクリエーションなどさまざまなサービスを実施しています。
どのようなメニューを実施しているかは施設ごとに異なるため、希望するサービスがあるかどうかはあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
せっかくデイサービスに通い始めても、スタッフや施設の雰囲気が合わなければ通うのが苦痛になってしまいます。
事前に見学や体験ができるデイサービスもあるため、気になるデイサービスがあればまずは見学をしてみましょう。実際に行ってみることで、スタッフとの相性や施設の雰囲気も確認できます。
介護予防の方法はデイサービス以外にもあるっポ。
デイサービスに通うことは介護予防・認知症予防に役立ちます。しかし、介護予防・認知症予防が目的であれば、デイサービスに通う以外にも以下のような選択肢があります。
趣味の活動を増やしてみたり、新しく習い事を始めたりすれば、社会参加の機会も増えて他者との交流の機会も得られます。
趣味や習い事に没頭することで、生活の楽しみや生きがいも生まれるでしょう。気力や活力の充実にもつながります。
ボランティア活動に参加してみるのも選択肢のひとつです。困っている誰かの役に立つという体験は、高齢者の自尊心を大きく回復してくれます。
何かを教えたり作業したりするなど、自分の持っているスキルを活かすタイプのボランティア活動なら、やりがいを得られつつ介護予防にも役立ちます。
本人が楽しく取り組めるものや、介助がなく始められるものなどを前提として、できる範囲で新たなチャレンジをしてみるのもおすすめです。
この記事では、健康な人のデイサービス利用について解説しました。
通常のデイサービスを利用できるのは要介護1~5の人ですが、要支援1・2の認定を受けた人や基本チェックリストで対象となった人も介護予防を目的としたデイサービスに通うことができます。
健康な人でもデイサービスの利用には大きなメリットがあります。ご本人や家族の希望を踏まえた上で、利用する際にはまず地域包括支援センターや市町村の窓口に相談してみましょう。
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