要介護認定の判定結果は、要支援1・2、要介護1~5の7段階です。それぞれの段階の目安について、要介護認定区分の早わかり表つきでわかりやすく解説します。
要介護認定の基準や申請方法なども詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
介護が必要かな…と思ったらまずは要介護認定を受けるっポ。
要介護認定とは、日常生活を送るうえでどのくらい介護が必要か判断するものです。要介護度は「介護の手間」を量ることで決まります。
要介護認定を受けられるのは、原則として65歳以上の方です。そのほか、特定疾病により介護を必要とする40~64歳の方も対象となっています。
要介護認定の判定結果は全部で7区分です。要支援1・2と要介護1~5に分かれ、日常生活に支援や介護が必要ないと判断された方は、自立(非該当)となります。
要支援は、日常生活の基本動作はおおむね自分でできるものの、家事などには多少の支援が必要な状態です。たとえば「自分でトイレは行けるけれど、負担のかかる掃除には手助けが必要」といった方などが該当します。
また要介護は、日常生活での基本動作に何らかの介護が必要な状態です。「誰かの力を借りなければトイレで排泄ができない」といった方などが該当します。
要介護認定を受けると、1~3割の自己負担で介護保険サービスを受けられます。負担割合は所得に応じて決まります。
介護保険サービスの種類は、ヘルパーが自宅に来てくれる訪問介護や施設に通うデイサービスなどの在宅介護で利用できるもの、特別養護老人ホームやグループホームなどの施設に入所するものなどさまざまです。
介護保険サービスを利用することで、要介護者は安心した生活を送れ、家族は介護負担を減らせるといったメリットがあります。
要介護認定の判定結果は、要支援1・2と要介護1~5の7区分だっポ。
要介護度は “この心身の状態なら必ずこの介護度”という明確な目安はないため、簡単に判断できるものではありません。認知症の症状、持病による影響、身体機能の低下レベルなどを総合的に判断して判定されます。
以下でそれぞれの介護度の目安や状態について解説しますが、必ずしもすべての人に当てはまるわけではないことをご了承ください。
認定の目安 | 具体例 | |
---|---|---|
要支援1 | 基本的に一人で生活できるが、一部の家事など援助が必要 | 排泄や入浴は一人でできるが、立ち上がるときに支えが必要 |
要支援2 | 基本的に一人で生活できるが、要支援1より援助を必要とする範囲が広い | 入浴時に背中が洗えない、移動時に杖が必要 |
要介護1 | 要支援2よりも身体機能や思考能力が低下し、日常生活の一部に介護が必要 | 排泄や入浴時に見守りや介護が必要 |
要介護2 | 基本的な日常生活動作に介護が必要 | 食事や排泄に介護が必要。認知症により清潔が保てない、お金の管理が困難 |
要介護3 | 日常生活動作の多くに介護が必要 | 排泄・食事・更衣など生活全般に介護が必要。認知症により異食などの問題行動がある |
要介護4 | 日常生活のほとんどに介護が必要 | 生活全般に介護が必要で、立位が保てず車椅子が必要。認知症によりコミュニケーションが困難 |
要介護5 | 介護なしには日常生活を送れない | 生活全般に介護が必要で、寝たきりの状態。意思疎通が困難 |
要支援1は、基本的な日常生活は一人で送れるものの、生活の一部に支援が必要な状態です。
たとえば、立ち上がりでの支えや、段差・階段で手すりが必要な状態ですが、排泄や食事は一人でできます。
適切にサービスを利用すれば、改善が見込まれます。
要支援2は、基本的な日常生活は一人で送れるものの、要支援1よりも必要とする支援の範囲が広い状態です。
たとえば、移動時に杖やシルバーカーを利用したり、複数の福祉用具を利用したりするような方です。
軽度の認知症の症状がみられる場合も一人で生活できる程度であれば、要支援2の判定を受けることがあります。
要支援1と同様に、要介護状態にならないための適切な支援が必要です。
要介護1は、要支援2より身体的な衰えや理解力・判断能力の低下が進んでいる、または短期的に進む見込みがある状態です。
たとえば、一部の家事や日常生活に部分的な介護が必要だったり、自己管理能力の低下によって金銭管理に助けを要したりします。
しかし自分でできる動作も多いため、一人暮らしを継続する方もいます。
要介護2は、日常生活に関わる動作全般に介護を必要とする状態です。
食事やトイレに介護が必要になったり、清潔を保てなかったり、歩行時に歩行器が必要だったりします。
認知症により、これまでできていた行動ができなくなることもあるでしょう。
要介護3は、日常生活を送るための動作が困難になり、多くの場面で介護が必要な状態です。
一人では立ち上がりや起き上がりができず、排泄や入浴・更衣・歯磨きなどに一部または全面的な介護が必要です。
認知症による問題行動が増え、目が離せない状態の方もいます。
要介護4は、日常生活のほとんどに介護が必要な状態です。
たとえば支えがなければ立位や座位を保てず、移動には車椅子を利用します。寝返りが困難な方もいるでしょう。
重度の認知症により、コミュニケーションが取れない方もいます。
要介護5はもっとも重い要介護度で、介護なしには日常生活を送れない状態です。
嚥下機能が低下して飲み物や食事の摂取が困難だったり、寝たきり状態になったりすることで、全面的な介護が必要です。
認知症の進行により、意思疎通が困難な方、問題行動が多い方、寝たきりになる方もいます。
要介護度は主に「介護の手間」で判断されるっポ。
要介護認定の基準は全国一律で決まっています。
「介護の手間」を分単位で算出した要介護認定等基準時間が基準のひとつです。生活に関わる8つの行為に対して、どれくらい時間がかかっているかを判断材料としています。
この算出された時間は、「介護の手間」を表す「ものさし」として数値化されたものです。そのため、実際にかかる時間とは限りません。
要介護認定等基準時間の8つの行為区分は以下の通りです。
行為の区分 | 具体的な内容 | |
---|---|---|
直接生活介助 |
食事 | 食事にまつわる行為 |
排泄 | トイレ・排泄にまつわる行為 | |
移動 | 移動にまつわる行為 | |
清潔保持 | 入浴、衣類の着脱等 | |
間接生活介助 | 洗濯、掃除等の家事援助等 | |
BPSD 関連行為 | 徘徊に関する探索、不潔な行為に関する後始末等 | |
機能訓練関連行為 | 歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練 | |
医療関連行為 | 輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助 |
上記に加えて、認知症の症状がある方には状態に応じて認知症加算を合計します。
これらは訪問調査の結果や主治医意見書をもとに、コンピュータによる一次判定で算出されます。
要介護認定等基準時間は、対象者の状態を総合的に見て算出されます。
たとえば、身体は健康で歩行や食事摂取に問題がなくても、認知症の症状が顕著で徘徊や不潔行為などに対する介護の手間が多いと、介護に長い時間を要すると判断されるのです。
要介護認定等基準時間と要介護度の関係は以下の通りで、介護の手間が多いほど要介護度が上がります。
要介護認定等基準時間 | |
---|---|
非該当 | 25 分未満 |
要支援1 | 25分以上32分未満 またはこれに相当する状態 |
要支援2 | 32分以上50分未満 またはこれに相当する状態 |
要介護1 | |
要介護2 | 50分以上70分未満 またはこれに相当する状態 |
要介護3 | 70分以上90分未満 またはこれに相当する状態 |
要介護4 | 90分以上110分未満 またはこれに相当する状態 |
要介護5 | 110分以上 またはこれに相当する状態 |
要介護度によって介護サービスを利用できる料金の限度額が決まっているっポ。
要介護認定を受けると1~3割の自己負担で介護サービスを利用できますが、利用できる限度額は要介護度ごとに定められています。
要介護度別の支給限度額は1か月あたりで以下の通りです。
自己負担は1割が基本ですが、所得によっては2~3割となります。
支給限度額 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
※1単位=10円として計算
要介護度が上がると支給限度額も増えるため、介護サービスの利用も増やせます。
なお注意点としては支給限度額を超えないようにすることが挙げられます。支給限度額を超えて介護サービスを利用すると、超えた分は全額自己負担です。
要介護認定を受けるためには申請が必要だっポ。
要介護認定を受けてから結果が届くまでは、簡単に説明すると以下の流れになります。
要介護認定の申請は、本人の住所がある市区町村の窓口で行います。本人が申請できない場合は、家族やケアマネジャーなどによる代理申請が可能です。
訪問による認定調査の結果などをコンピュータで判定する一次判定と、医療や福祉の学識経験者で構成された介護認定審査会での二次判定を経て、要介護度が決まります。
判定された結果は原則として申請から30日以内に通知されますが、30日を超える際はその理由と見込み時期が記載された延期通知書が届きます。
要介護の認定を受けるとさまざまな介護サービスを利用できるっポ。
介護保険サービスを大きく分類すると、自宅で暮らしながら利用する「居宅サービス」と施設に入居する「施設サービス」の2つにわけられます。
在宅で利用できる介護サービスには、以下のようなものがあります。
自宅で受ける | 訪問介護、訪問看護 など |
---|---|
事業所に通う | デイサービス、デイケア |
施設に泊まる | ショートステイ |
通い・訪問・泊り | 小規模多機能型居宅介護 |
その他 | 福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修 |
介護サービスを利用するためには、ケアプランの作成が必要です。ケアマネジャーに作成してもらうのが一般的ですが、可能な場合は本人や家族が作成しても構いません。
ケアプランには、ご本人の目標や利用するサービス、時間・回数などが記載され、計画に基づいて介護サービスが提供されます。
要支援認定を受けた方は、地域包括支援センターで介護予防ケアプランを作成してもらいます。また、2024年4月からは指定を受けた居宅介護支援事業者も担当できるようになりました。
介護保険を利用して施設に入居するサービスは以下です。
特養では原則要介護3以上、老健や介護医療院では要介護1以上など、施設種類によって入居条件が異なります。
また、老健では退院後の自宅復帰を目指すことを目的としているなど、利用の目的によってはご本人の状態に向かないこともあります。
ケアマネジャーや市区町村の介護保険課などに相談して、利用したい施設が決まったら見学や面談などを経て入居となります。
なお、特別養護老人ホームなどの人気の施設では、入居までに数か月かかるケースもあります。入居の希望があれば、できるだけ早く申し込みをしておくのがおすすめです。
要介護認定を受けたあとの手続きや注意点だっポ。
要介護認定の判定結果が出ても、その結果に納得がいかないケースがあるかもしれません。また、数か月後に状態が悪化して、実状と要介護度が合わなくなくなることもあるでしょう。
以下は、要介護認定を受けたあとの手続きで知っておくと役立つことです。
要介護認定の結果に納得できないときは不服の申し立てができます。申し立てできる期間は、要介護認定の結果を知った日から3か月以内です。
受理されると改めて認定調査を行います。再調査した認定の結果が出るまでに時間がかかるうえ、必ずしも希望の要介護度になるとは限らないので注意が必要です。
不服の申し立ては、各都道府県に設置されている介護保険審査会で受け付けています。
要介護認定を受けると、介護保険被保険者証に要介護度や有効期限が記載されます。
有効期限は、原則として新規申請で6か月、更新の場合で12か月です。有効期間は本人の状態に応じて変わります。
更新するには手続きが必要となり、有効期間が切れる2か月前から申請できます。
更新時も要介護認定を受ける必要があり、新規申請のときと流れは同じです。市区町村役場などの窓口に申請書を提出し、初回と同じように要介護認定調査員による調査が実施されます。
なお、有効期間が切れると介護サービスは保険適用されません。要介護認定の結果は申請日に遡って適用されますが、早めに更新申請しておいたほうが安心でしょう。
前回の要介護認定調査のときと比べて、手助けを必要とする場面が増えたり心身の状態が悪化したりしたときは、更新の時期を待たずに要介護度の変更申請が可能です。これを区分変更といいます。
市区町村の窓口に必要な書類を提出すると、初回と同じように調査員による要介護認定調査などを経て新たな要介護度が決まります。認定の結果が出るまではおよそ1か月です。
要介護者の状態に変化を感じたら、まずはケアマネジャーに相談するとスムーズです。
区分変更により要介護度が上がれば、介護サービスの利用を増やせます。
要介護認定は、日常生活を送るうえでどのくらい介護の手間がかかるかを判断したものです。
要介護認定を受けると、少ない負担で介護サービスを受けられるメリットがあります。
介護が必要な方にとって介護サービスは欠かせません。ご本人が安心した生活を送れることはもちろん、家族の介護負担の軽減にもつながります。
要介護認定の結果は、申請から通知まで30日程度かかります。「介護が必要かも」と思ったら、早めに要介護認定の申請をしておくと安心です。
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