介護現場の頭痛の種となっている事務負担の軽減に向けて、厚生労働省は介護保険被保険者証のペーパーレス化に乗り出す。【Joint編集部】
利用者、自治体、介護事業所らがそれぞれ必要な情報を閲覧・把握できる「介護情報基盤」を整備する。ここに被保険者証、負担割合証に記載されている情報も格納し、マイナンバーカードで速やかに引き出して使えるようにする。
8日に開催した審議会(社会保障審議会・介護保険部会)で構想を説明。2026年4月からの運用開始を目指し、より具体的な議論を進めていく方針を示した。
厚労省の担当者は、「紙媒体の被保険者証の廃止は念頭にない」と強調。マイナンバーカードと紙媒体を併用していく構えをみせ、「高齢者、自治体、介護事業所などの意見を聞きながら、それぞれの事情に丁寧に配慮していかなければいけない」と述べた。
今の紙ベースのアナログなやり取りをデジタル化し、業務の効率化につなげることが目的。マイナンバーカードに一本化すれば、利用者は被保険者証などを忘れずに管理しておく面倒がなくなる。自治体も紙の印刷・郵送の作業を大幅に削減できる。
介護事業所のメリットも大きい。被保険者証、負担割合証を確認・入力する手間を簡略化でき、利用者が紛失した際の対応に追われることも少なくなりそうだ。
実際に運用が始まれば、介護事業所は利用者のマイナンバーカードを読み取る端末の導入など環境整備が必要となる。厚労省はイニシャルコスト、ランニングコストを考慮した事業所向けの支援策を立案する構え。担当者は「多くの事業所に参画してもらえれば利便性が高まる。皆さんが対応しやすいような支援策を考えたい」と話した。
厚労省は今後の検討課題として、マイナンバーカードを持っていない高齢者への対応、既に交付されている被保険者証の取り扱いなどを提示した。会合では委員から、認知症の高齢者らに十分に配慮するよう釘を刺す意見が相次いだ。また、自治体や介護事業所の人材不足、新たな仕組みに対応する負担も踏まえたスケジュール設定、ルール作りとするよう求める声も続出した。
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