要介護認定を受けると、少ない自己負担で介護保険サービスを利用できるメリットがあります。つまり、介護保険サービスを利用するなら要介護認定が欠かせません。
この記事では、要介護認定を受けるときの流れ、要介護認定がおりるまでの期間、その後に必要な手続きなどについて、わかりやすく解説します。
要介護認定では、介護サービスの必要度を判断するっポ。
要介護認定とは、介護がどれくらい必要な状態にあるのかを判断するものです。本人への調査、コンピュータによる一次判定、市区町村に設置される介護認定審査会での二次判定を経て決定されます。
要介護認定の判定結果は、要支援1・2、要介護1~5、自立(非該当)です。
同じ病気や障害なら同じ要介護度になるというわけではなく、あくまで必要とする介護の量で判定されます。重い病気や障害があっても、自分でできることが多く介護の手間が少ないときには要介護度が低く出ることもあります。
要介護の認定を受けると必要に応じた介護サービスを利用でき、要支援に認定されると介護予防サービスを利用できます。
要介護認定の結果がおりるまではどのくらいかかるのかな?
要介護認定の結果は、介護保険法の規定により原則として申請から30日以内に通知されます。認定結果通知書と認定結果が記載された介護保険被保険者証が郵送で届きます。
住民票のある住所に送付されるため、他の住所への送付を希望するときはあらかじめ伝えておかなければなりません。
原則として30日以内に届きますが、要介護認定調査の状況や意見書の作成などにより日数を要するケースもあります。
期日内に認定結果を通知できない場合には、認定が遅れている理由といつ結果が届くのかの見込みが記載された延期通知が郵送されます。
要介護認定の結果が出るまではおおむね30日、またはそれ以上かかる可能性があるため、介護保険サービスの利用を希望するときは早めに申請手続きをしたほうが安心でしょう。
要介護認定の申請からサービス利用までの流れを詳しく解説するっポ。
要介護認定の申請から介護サービスを利用するまでは、以下の流れで進めます。
要介護認定を受けたいときには、まずは市区町村の担当窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。
要介護認定を受けられるのは65歳以上の方ですが、以下の特定疾病と診断された40歳以上64歳以下の方も要介護認定を受けられます。
要介護認定の申請先は、市区町村役場や地域包括支援センターなどの担当窓口、または郵送、マイナポータルです。
要介護認定の申請には以下の書類が必要です。
本人が要介護認定の申請をできないときは、家族やケアマネジャーなどが代理で申請することもできます。
本人以外の代理申請には以下も必要となります。
必要書類については、お住いの市区町村のホームページなどで確認しておくと安心です。
申請書を出すと、しばらくして市区町村の調査員から調査日についての電話連絡があります。
要介護認定調査は日頃の様子を知るための調査なので、基本的に要介護認定を受ける本人の自宅で実施されますが、本人が入院している場合には病院での実施も可能です。
調査の時間は30分から1時間くらいが目安でしょう。
認定調査の調査項目や基準は全国一律で、主な内容は以下のような動作確認や面談です。
要介護認定の判定には、コンピュータによる一次判定と介護認定調査会による二次判定があります。
認定調査員が作成した調査書と主治医による意見書をもとに、コンピュータによる一次判定を行います。
全国共通の要介護認定ソフトで介護に必要な時間(要介護認定等基準時間)を算定し、その時間の合計をもとに要介護度が判定されます。
以下のように、基準時間が長いほど要介護度が高くなります。
要介護度 | 要介護認定等基準時間による判定基準 |
---|---|
非該当(自立) | 25分未満 |
要支援1 | 25分以上32分未満またはこれに相当する状態 |
要支援2 要介護1 |
32分以上50分未満またはこれに相当する状態 |
要介護2 | 50分以上70分未満またはこれに相当する状態 |
要介護3 | 70分以上90分未満またはこれに相当する状態 |
要介護4 | 90分以上110分未満またはこれに相当する状態 |
要介護5 | 110分以上またはこれに相当する状態 |
医療、保健、福祉の学識経験者で構成される介護認定審査会で二次判定が実施されます。一次判定の結果と主治医の意見書などをもとに審査・判定が行われます。
各専門家が、心身の状態の維持・改善の可能性や介護の手間などについて審査・判定を行い、総合的に判断して要介護度を確定します。
要介護度の判定結果は原則として30日以内に自宅に送られます。要介護区分や有効期間などが記載された認定結果の通知書や介護保険被保険者証、介護保険負担割合証が郵送で届きます。
介護保険被保険者証や介護保険負担割合証は介護サービスを利用するときに必要です。なくさないように大切に保管しておきましょう。
なお、認定結果は、要介護1~5、要支援1・2、自立(非該当)のいずれかで、要介護5がもっとも介護が必要な状態、要支援は介護予備軍、自立はまだ介護の心配がない状態です。
介護保険サービスを利用するためには、事前にケアプランの作成が必要です。
ケアプランは介護の計画書のことで、以下の内容が記載されます。
など
介護保険サービスはケアプランをもとに提供されます。ケアプランは自分で作ることも可能ですが、基本的にはケママネジャーに作成してもらいます。
ケアマネジャーは介護が必要な人や家族の相談を受け、最適なサービスを受けられるようにサポートする介護の専門家です。
誰に頼むかは選ぶことができるため、市区町村の介護保険課や地域包括支援センターでケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所のリストを受け取り、そこから自分で探すのが一般的です。
要支援1・2の認定を受けた方は、介護予防サービスの対象となります。お住まいの地域にある地域包括支援センターに相談して、介護予防ケアプランを作成してもらいます。
なお、2024年4月からは指定を受けた居宅介護支援事業所でも、介護予防ケアプランを作成できるようになりました。
ケアプランを作成したら、介護サービス事業者と契約してサービスの利用を開始します。
サービスはケアプランの内容に沿って提供されるため、記載のないサービスは利用できません。
サービス開始後はケアマネジャーが利用者宅を定期的に訪問して、「設定した目標を達成できそうか」「利用しているサービスの内容が適切か」「利用者の状況に変化がないか」などを確認します。
目標の達成が難しかったり、提供されているサービスが利用者の状況に合っていなかったりする場合はケアプランの見直しが必要です。
適切なサービスを受けるために、サービス内容が合わないときや健康状態の悪化・改善、生活環境に変化があったとき、心配ごとや困りごとがあるときはケアマネジャーに相談しましょう。
要介護認定は一度受けたら終わり、というわけではないっポ。
高齢者の心身の状態は変化しやすく、時間の経過とともに一度受けた要介護の認定結果が実態と合わなくなることもあります。
常に適切なサービスを受けるためには更新手続きや区分変更申請が必要です。ここでは、要介護認定を受けたあとに必要な手続きについて解説します。
要介護認定には有効期間があるため更新手続きが必要です。
有効期間は新規や区分変更で原則6カ月、更新申請で原則12カ月です。ただし、有効期間は一人ひとりの状態により決まるため一律ではありません。
更新手続きは有効期間満了前に届く更新申請の書類に必要事項を記入し、返送して申請します。または、市町村役場や地域包括支援センターに提出して申請することも可能です。
要介護認定の更新は、有効期間の満了日60日前から手続きできます。有効期限が切れると介護サービスが保険適用外となり、利用料が全額自己負担となるため注意が必要です。
申請後は改めて訪問調査が行われ、認定結果が出るまでには30日程度かかります。申請が必要になったら早めに手続きするようにしましょう。
病気や障害などにより心身の状態が悪化したときは、更新時期を待たずに区分変更申請ができます。
区分変更で要介護度が上がれば利用できるサービスが増え、状態に合った適切なサービスを受けられます。
区分変更は、区分変更申請書などの必要書類を市区町村の窓口に提出することで申請が可能です。
申請後は改めて訪問調査が行われ、原則30日以内に結果が届きます。
ただし、区分変更の審査をしても必ずしも要介護度が上がるとは限りません。
要介護認定の疑問に回答するっポ。
要介護認定について、以下の疑問を持つ方もいるかもしれません。
ここでは、要介護認定に関するよくある質問に回答します。
実態に沿った認定結果を得るためには、本人の日頃の状態を認定調査員に正しく把握してもらわなければなりません。そのためにも調査当日には家族も同席すると安心です。
要介護認定の申請書には同席者を記入する欄があります。記入していなくても電話連絡のときに伝えれば問題ありません。
要介護認定調査の日程調整では家族が同席できる都合の良い日程を決めましょう。
普段の様子が正確に伝わらないと要介護度が低く出るかもしれません。調査時の様子が普段と異なるのであれば、家族が実態を正確に伝える必要がありますが、介護認定調査の時間は限られています。
伝えたいことを上手に伝えるためには、事前にメモをしておくのがおすすめです。
「普段はどのような症状があるのか」「どのような介護にどれだけの時間がかかっているのか」「どのようなことに困っているのか」などを記入し、メモをもとに実情を伝えたり、調査員にメモそのものを渡したりするのもよいでしょう。
また、認知症の症状は夕方悪化するといわれています。認知症の症状がある方は、調査の時間を夕方に設定すると実態を把握してもらいやすくなります。
本人や家族は介護が必要な状態だと思っていても、要介護にも要支援にも認定されないことがあります。
要介護・要支援に認定されないのは、自分の力で日常生活を送れる自立した状態です。
もし自立と判定されたら、自立した生活をできるだけ継続するためにも介護予防に努めることが大切です。自立の人でも利用できる介護予防サービス(総合事業)もあるので、詳しくは役所や地域包括支援センターに問い合わせてみるとよいでしょう。
要介護認定の判定結果に不服があるときは、結果を知った日の翌日から3カ月以内であれば不服の申し立てができます。
都道府県に設置された介護保険審査会に対して申し立てを行い、要介護認定の結果が不当であると認められた場合は改めて調査されます。
ただし、再度調査したからといって必ずしも要介護度が変わるとは限りません。結果が出るまではまた30日程度待つ必要があることも理解しておきましょう。
要介護認定の申請後であれば、認定結果が出る前でも介護保険サービスを利用できます。
要介護認定の有効期間の開始日は申請日にさかのぼるため、申請日からサービスの利用が可能です。
介護度の見込みを立て、暫定のケアプランを作成してもらうことでサービスを利用できます。
ただし、認定結果が見込みより低かった場合は、限度額を超えた分の差額が全額自己負担となることに注意が必要です。
また、非該当の結果になると利用したサービスはすべて自己負担となります。
介護保険サービスを少ない負担で利用するためには、要介護認定の申請が必要です。
要介護認定は心身の状態に合った適切な介護サービスを提供するために、どの程度の介護が必要かを判定するものです。
要介護の認定を受けると、日常生活に必要な介護、リハビリテーション、施設入居などさまざまな介護保険サービスを利用できます。
要介護認定の結果は原則として申請から30日以内に通知されますが、調査の状況や意見書の作成などによりさらに日数がかかるケースもあります。
介護保険サービスを利用したいときは、時間に余裕をもって申請しましょう。
<参考>
厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」
著者:ハートページナビ編集部
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