要介護認定を受けるメリットとは?認定後に受けられる介護サービス一覧つき

要介護認定を受けると、少ない費用負担で介護サービスを利用できるメリットがあります。
この記事では、要介護認定を受けることのメリット・デメリットや、要介護に認定されたときに利用できる介護サービスなどについて解説します。
要介護認定を受ける際のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

要介護認定とは

そもそも要介護認定とは?

要介護認定とは、日常生活でどのくらいの介護が必要かを客観的に判断したもので、要介護1~5、要支援1・2、自立のいずれかの判定結果が出ます。
判定結果で介護が必要と認定されるのが要介護、支援が必要と認定されるのが要支援です。

要介護に認定された方は、できるだけ自立した生活を送るために介護サービスを利用できます。要支援に認定された方は、要介護状態になることを防ぐために介護予防サービスの利用が可能です。

要介護認定の申請から通知までの流れ

要介護認定の流れを簡単に解説するっポ。

要介護認定の申請から判定結果が出るまでの主な流れは以下の通りです。

1.要介護・要支援認定の申請をする
2.調査が実施される
3.コンピューターによる一次判定が行われる
4.介護認定審査会で二次判定が行われる
5.判定結果が郵送で通知される

要介護認定の申請ができるのは原則として65歳以上の方ですが、特定疾病により介護が必要になった40~64歳の方も申請が可能です。
お住まいの市区町村へ要介護・要支援認定の申請したあとは、介護認定調査員が自宅などを訪問して調査を実施します。心身の状態や生活環境を調査しますが、調査内容は全国一律です。

その後は、調査結果と主治医意見書に基づきコンピューターによる一次判定が行われ、二次判定で介護認定審査会が開催されて要介護度が決まります。

判定結果は郵送で通知され、申請から要介護認定の通知にかかる日数は原則30日以内です。通知が遅れる場合には、理由と通知見込み時期を記載した延期通知書が届きます。

要介護認定を受ける流れについて詳しくはこちら

要介護認定を受けるメリット

介護が必要な人にとってはメリットが大きいっポ。

要介護認定を受けるメリットは主に以下の2つです。

・介護サービスを少ない負担で利用できる
・必要に応じた介護サービスを利用できる

介護サービスを少ない負担で利用できる

要介護認定を受けると、介護サービスを少ない負担で利用できます。負担割合は収入によって異なり1~3割負担です。

介護サービスの利用が増えると家計への負担が大きくなりがちですが、介護保険なら3万円分のサービスを利用しても実際に支払う金額は1割負担で3,000円です。これなら家計への影響も少なくてすむでしょう。

ただし、要介護度ごとに支給限度額が設けられているため、介護サービスはその範囲内で利用する必要があります。限度額を超えると、その分は全額自己負担となってしまいます。

必要に応じた介護サービスを利用できる

要介護に認定されると、在宅介護や施設入居に関するサービスを利用できます。
要介護者の状態によっては家族だけでの介護に限界があります。介護サービスを適切に利用することで、要介護者はプロによる介護を受けられ、家族は介護負担を減らせるメリットがあります。

要介護者が利用できる介護保険サービスには、以下のような種類があります。

介護保険サービスの種類一覧
介護計画(ケアプラン)を作成する ・居宅介護支援
自宅で受ける ・訪問介護
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導
・夜間対応型訪問介護 ※地域密着型
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ※地域密着型
施設に通う ・デイサービス
・通所リハビリテーション(デイケア)
・地域密着型デイサービス ※地域密着型
・療養デイサービス ※地域密着型
・認知症対応型デイサービス ※地域密着型
施設に宿泊する ・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護(ショートステイ)
訪問・通い・宿泊を組み合わせる 小規模多機能型居宅介護 ※地域密着型
看護小規模多機能型居宅介護 ※地域密着型
施設に入居する ・特別養護老人ホーム ※地域密着型あり
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設
・介護医療院
・特定施設入居者生活介護 ※地域密着型あり
・グループホーム ※地域密着型
福祉用具やリフォーム ・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
・住宅改修

要支援者が利用できる介護予防サービスはこちら

介護保険サービスごとの詳細は以下です。

ケアプラン(介護計画)を作成するサービス

介護サービスを適切に利用できるようにケアプランを作成するサービスです。

サービス名 サービス内容
居宅介護支援 ケアマネジャーがケアプランの作成等を行う

介護が必要な本人や家族、ケアマネジャーが必要な介護サービスを検討し、ケアプランに盛り込みます。実際のサービス利用は作成したケアプランに沿う必要があり、それ以外のサービスの利用を希望する場合には計画の見直しが必要です。
ケアプランの作成は無料で、状況に応じた計画の見直しもされます。

自宅を訪問するサービス

ヘルパーや看護師などが自宅を訪問し、必要な介護や援助を受けられるサービスです。
具体的には以下のサービスがあります。

サービス名 サービス内容
訪問介護 ホームヘルパーが訪問し、身体介護や生活援助を行う
訪問入浴 介護職員と看護職員が訪問し、持参した浴槽で入浴介護を行う
訪問看護 看護師などが訪問し、医師の指示書に基づいた看護を行う
訪問リハビリテーション 理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが訪問し、リハビリテーションを行う
居宅療養管理指導 医師や歯科医師、薬剤師などが訪問し、療養上の管理や指導を行う
夜間対応型訪問介護 夜間帯にホームヘルパーが訪問し、身体介護や安否確認を行う
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 日中・夜間を通して介護職員が定期巡回・随時通報の対応をし、看護師などが訪問看護を行う

住み慣れた自宅でヘルパーや看護師のサポートを受けられるため、高齢者は安心して生活できます。ヘルパーや看護師、リハビリの専門家が自宅まで来てくれることで、家族の介護負担を減らせるメリットもあります。

施設に通うサービス

高齢者が日帰りで施設に通い、介護やリハビリテーションなどを受けるサービスです。
具体的には以下のサービスがあります。

サービス名 サービス内容
デイサービス 施設に通い、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどのサービスを受ける
通所リハビリテーション(デイケア) 施設に通い、生活機能向上に向けたサービスのほか、運動機能・口腔機能・栄養改善に関する訓練を受ける
地域密着型デイサービス 上記デイサービスとサービス内容は同様。利用定員は19人未満と小規模
療養デイサービス 看護師による観察が必要な重度要介護者やガン末期患者などが施設に通い、日常生活上の支援や機能訓練などのサービスを受ける
認知症対応型デイサービス 認知症の利用者が施設に通い、日常生活上の支援や機能訓練などのサービスを受ける


デイサービスでは、食事や入浴、必要な介護サービス、レクリエーション、機能訓練などが提供されます。身体や頭を動かす機会は心身機能の向上につながり、職員や他の利用者とのコミュニケーションは心の健康につながるため、生活にハリが出やすくなります。

一方で、デイケアで提供されるサービスのメインはリハビリです。デイケアで提供されるリハビリには医師の指示が必要となるため、より専門的なリハビリを受けられます。

高齢者がこれらの通所サービスを利用している間は、家族は介護の心配をせずにすみます。家族は仕事や家事に集中できるほか、介護負担を軽減することも可能です。

宿泊するサービス

施設に短期間宿泊するサービスとしてショートステイがあります。
ショートステイの種類は以下の2つです。

サービス名 サービス内容
短期入所生活介護 特養などに短期間宿泊し、日常生活上の支援や機能訓練などを受ける
短期入所療養介護 医療機関や老健などに短期間宿泊し、日常生活上の支援や医療・看護、機能訓練などを受ける

ショートステイとは、短期間施設に宿泊して日常生活上の支援や機能訓練などを受けるサービスです。家族が出張や冠婚葬祭で外泊する際や、介護家族のリフレッシュなどを目的として利用できます。
また、近い将来の施設入居を考え、施設での暮らしに慣れるためにショートステイを利用する人もいます。

訪問・通い・宿泊を組み合わせたサービス

ひとつの事業所が訪問・通い・宿泊を一体的に提供するサービスもあります。
具体的には以下2つのサービスです。

サービス名 サービス内容
小規模多機能型居宅介護 施設への通い・短期間の宿泊・自宅への訪問を組み合わせて利用でき、日常生活上の支援などを受ける
看護小規模多機能型居宅介護 施設への通い・短期間の宿泊・自宅への訪問のほか、訪問看護を組み合わせて利用できる

同じ事業所が複数のサービスを提供するので、なじみのスタッフに対応してもらえます。人見知りの方でも安心して利用しやすいサービスです。

施設に入居するサービス

介護保険を利用できる施設入居サービスには以下があります。

サービス名 サービスの内容
特別養護老人ホーム 在宅介護が困難な要介護者が入居し、日常生活上の支援や機能訓練、健康管理、療養上の世話などを受ける
介護老人保健施設 在宅復帰を目指す要介護者が入居し、リハビリテーションや必要な医療・介護を受ける
介護医療院 長期療養を必要とする要介護者が入居し、医学的管理や日常生活上の支援を受ける
特定施設入居者生活介護 有料老人ホーム・軽費老人ホームなど。特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設に入居し、日常生活上の支援や機能訓練などを受ける
グループホーム 認知症の診断を受けた方が入居し、家庭的な環境のもとで日常生活上の支援などを受ける

各施設への入居条件は、特別養護老人ホームで原則要介護3以上介護老人保健施設・介護医療院が要介護1以上グループホームは認知症の診断を受けた要支援2以上の方です。
有料老人ホームなどの民間施設は、自立や要支援から、要介護者のみなど施設により異なります。

基本的にはどの施設でも職員による介護や見守りの体制が整っているため、入居者は安心して毎日を送れます。
レクリエーションや季節ごとのイベントもあり、毎日の生活にハリが出やすいでしょう。

福祉用具を使う・住宅環境を整えるサービス

自宅でできるだけ自立した生活を送れるように、福祉用具の購入やレンタル、リフォームができるサービスも利用できます。具体的には以下のサービスです。

サービス名 サービス内容
福祉用具貸与 福祉用具のレンタル。福祉用具を選ぶための援助や取り付け、調整なども行う
特定福祉用具販売 福祉用具の販売。レンタルに向かない入浴や排せつなどに関わる福祉用具を購入できる
住宅改修 介護が必要になっても自宅での生活を継続できるように、手すりの取り付けや段差の解消などを行う

自宅での生活が困難になっても、歩行器や介護用ベッドなどを借りることで自立した生活を送りやすくなります。
住宅改修では自宅をバリアフリーにするための工事や手すりの設置ができ、20万円までは1~3割の負担で利用できます。

介護保険サービスの種類について詳しくはこちら

要介護認定のデメリット

要介護認定にデメリットなんかあるのかな…。

要介護認定を受けることによるメリットがある一方で、以下の点には注意が必要です。

・申請から認定まで時間がかかる
・実態と異なった判定を受ける可能性がある

申請から認定まで時間がかかる

要介護認定はすぐに結果が出るものではありません。申請から結果の通知までは原則30日以内ですが、それ以上かかることもあります。
しかし要介護認定の効力は申請日にさかのぼるため、認定結果が届く前でも申請した時点から介護サービスの利用が可能です。

ただし、思ったとおりの判定結果が出るとは限らないため注意が必要です。
たとえば要介護3を想定していたのに要支援2の判定結果が出た場合、要支援2の支給限度額を超えてサービスを利用していると超えた分は全額自己負担となります。

(上記の例)
・想定していた要介護3の支給限度額:27,048円
・実際に認定された要支援2の支給限度額:10,531円
※10,531円を超えて利用した分が自己負担となる

介護保険の支給限度額一覧(1割負担のケース)
要支援1 5,032円
要支援2 10,531円
要介護1 16,765円
要介護2 19,705円
要介護3 27,048円
要介護4 30,938円
要介護5 36,217円

また、自立だと介護保険の対象にはならないため、すべてが自己負担になってしまいます。
介護サービスが必要だと感じたら、早めに認定を受けておくのが安心です。

実態と異なった判定を受ける可能性がある

要介護認定を受ける本人の状態が調査員に正しく伝わらないと、実際の心身の状態にそぐわない判定結果となる可能性があります。

たとえば、認知症の方のなかには、他人の前ではしっかりと受け答えできたり、普段できないことができたりする人もいます。また、家族による介護負担を正確に伝えられないと誤解が発生するかもしれません。

実際の状況が反映されない判定結果になれば、必要な介護サービスが受けられなくなることもあるでしょう。実態と一致した判定を受けるには、事前の準備や確認が欠かせません。
要介護認定を受けるときのポイントは以下で紹介しています。ぜひご確認ください。

要介護認定の結果に不服があるときの対処方法

要介護認定の結果が想定と違ったら困るっポ。

要介護認定の結果に納得できないときは、各都道府県に設置されている介護保険審査会に審査請求(不服の申し立て)ができます。

不服の申し立てをできる期間は要介護認定の結果を知った翌日から3か月以内です。
再調査では調査をやり直すため時間がかかります。また、不服の申し立てをしたからといって必ずしも希望通りの結果になるとは限りません。

もし認定された要介護度の有効期間中に状態が悪化した場合には、区分変更の申請をして再度認定調査を受けることもできます。

審査請求・区分変更について詳しくはこちら

要介護認定で正しい判定を受けるための5つのポイント

要介護認定で実態に沿った結果を得るためのポイントだっポ。

要介護認定の結果が納得できないときには不服の申し立ても可能ですが、時間も手間もかかってしまいます。
実態と合った判定を受けるためには、以下の要介護認定で正しい判定を受けるためのポイントをチェックしてみてください。

01.訪問調査に家族も同席する
02.普段の生活に関する記録をしておく
03.質問項目を事前に把握し回答を準備する
04.訪問時間は夕方以降にしてもらう
05.かかりつけ医にも状況を説明しておく

01.訪問調査に家族も同席する

なかには訪問調査の際に、できないことを「できます」と答えたり、いつもできないことができてしまったりする高齢者もいます。また、認知機能が低下している場合は現状を正しく伝えられないこともあるでしょう。
実態に沿った認定結果となるように、認定調査には家族も参加して正確な情報を伝えるようにしましょう。

02.普段の生活に関する記録をしておく

介護で困っていることや大変だったことがあっても、記憶を頼りに伝えきるのは難しいものです。たとえ普段よくある困りごとでも、とっさに説明ができないこともあります。また、本人の前では伝えにくいこともあるでしょう。

できないことを伝え忘れてしまうと、間違った判定を受ける恐れがあります。
調査時に伝え漏れがないよう、介護で困ったことなどは事前にメモをしておき、調査員に渡すのがおすすめです。
記録には介護の困りごとの頻度や時間帯なども記入しておくと事情をわかってもらいやすくなります。

03.質問項目を事前に把握し回答を準備する

介護認定調査員による調査項目は全国統一で決まっており、全部で74項目(参考:大阪府八尾市「訪問調査項目について」)あります。
なにを聞かれるのかわからないまま出たとこ勝負で回答しようとしても、うまく伝えられないかもしれません。
質問内容は厚生労働省でも公開していますので、事前に把握して回答を準備しておくのがおすすめです。

04.訪問時間は夕方以降にしてもらう

朝に比べると夕方は疲労が出やすく、認知症の場合は機能低下しやすい時間帯でもあります。
正しい現状を伝えるためにも、訪問調査の時間帯はできるだけ状態が悪化しやすい夕方に設定しましょう。

05.かかりつけ医にも状況を説明しておく

介護認定の判定の過程では主治医意見書が必要になります。これは、疾病や認知症の状態から、介護の手間がどのくらいかかるかを医学的観点から判断するためです。

主治医意見書は基本的にかかりつけ医が作成しますが、日頃の状態をあまり把握していないと情報量の少ない意見書になってしまいます。その結果、医学的には介護がそこまで必要な状態ではないと判断されてしまう恐れがあります。

誤解をなくすためにも、かかりつけ医には事前に要介護認定を受ける本人の普段の状態を伝えておくことが大切です。

要介護認定で「要介護」と判定されたら

要介護に認定されると、1~3割の負担で介護保険サービスを利用できるようになります。
サービスの利用にはケアプランの作成が必要になるので、まずはケアマネジャーを探しましょう。
ケアマネジャーが在籍する居宅介護支援事業所は、役所の介護保険課や地域包括支援センターで紹介してもらえます。

担当のケアマネジャーが決まったら、要介護者の状態や家族の要望に合わせたケアプランを作成します。なお、ケアプランの作成は全額介護保険で賄われるため費用はかかりません。

ケアプランが完成したら介護サービス事業所と契約し、サービスの利用を開始します。事業所と契約するまでの連絡や調整は担当のケアマネジャーが段取りをしてくれるため、手続きの心配などはほとんどないでしょう。

介護が必要だと感じたら、早めに要介護認定の申請を

要介護認定を受けるメリットは、必要に応じた介護サービスを1~3割の負担のみで利用できることです。
介護サービスには、在宅介護で利用できる訪問介護やデイサービス、終身で入居できる特別養護老人ホームなど、さまざまな種類があります。

家族だけでの介護はいずれ限界を迎えてしまうかもしれません。介護サービスの利用は、家族が介護疲れを起こさないだけでなく、介護を受ける本人もプロから介護を受けられるメリットがあります。

できるだけ早めに介護サービスの利用を検討したいところですが、要介護認定は申請から認定までは30日前後かかります。介護が必要だと感じたら、しっかりと事前準備をしたうえで早めに要介護認定を申請したほうが安心でしょう。

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著者:ハートページナビ編集部

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