「介護が必要になったら介護保険を使う」ってよく聞くけど、そもそも介護保険ってどんなものなのかしら?
介護保険制度はわかりにくいから、できるだけわかりやすく説明するね。
介護保険とは、介護が必要な状態になっても安心して生活が送れるように、社会全体で高齢者の介護を支えることを目的にはじまった制度だっポ。2000年に誕生した比較的新しい保険制度なんだよ。
これからの日本は高齢者の割合が増えていくから、子どもでも知っておいて損はないわ。たかしも一緒に聞いておいてね。
うん、わかった!
2000年に介護保険制度がはじまったのは高齢者が増えてきたからかしら。でも、それより前の高齢者はどうしてたの?
介護保険制度がはじまるまでは、1963年に誕生した老人福祉制度が高齢者の介護を支えていたんだっポ。
老人福祉制度では、市町村がサービスの種類や提供する機関を決めていたんだ。いまのように利用者がサービスを自由に選ぶことはできなかったんだよ。これを措置というっポ。
そういえば、お義母さんが「お舅さんが施設に入っていたけど、今みたいに手厚い介護ではなかった」って以前言ってたわ。
ママのいうとおり、老人福祉制度の時代はサービス内容も均一で、必要最小限のものしか提供されていなかったんだ。行政も限られた予算のなかで措置を行っていたから、利用もそれほど進んでいなかったんだよね。
高齢者の介護は家族が担うことがほとんどだったんだよ。
わたしたちの世代はウチのように親と同居している人が珍しいから、家族が介護するって難しくなってきているわよね。
そうなんだっポ。核家族化が進んで高齢の親と同居する人の数は少なくなってきているんだよ。それに、少子高齢化で高齢者は多いのに支える側の世代は減り続けていて、家族だけでは高齢者を支えきれなくなってきたんだ。
だから家族以外にもみんなで支えなきゃいけないってなったのね。
ボクも大人になったら支える側になるんだね。でも、おじいちゃんになったら逆に支えられる立場になるってことだよね。
そのとおりっポ。たかしくんは理解が早いっポ!
老老介護や介護離職なんかの問題が深刻化してきたこともあって、2000年に介護保険制度がはじまることになったんだよ。
介護保険がなぜはじまったのかは理解したけど、どんな仕組みなのかはまったくわからないわ。そもそも介護保険で使われるお金はどこからきているのかしら。
介護保険の財源は、半分は加入している人(被保険者)からの保険料なんだよ。残る半分は、国と都道府県、市町村の税金で負担しているっポ。
税金も投入されているの!? 無駄遣いしちゃいけないって気になるわね……。でもなんでそんなにもお金がかかるの?
介護保険サービスの利用は、利用者が全額支払う必要がないんだよ。収入に応じて、1~3割の負担でいいんだっポ。
1000円のサービスを利用したら、利用者の負担は100~300円ですむってことだね。
すごい! 介護保険っておトクなんだね~!
利用者負担が少ないから保険料や税金が必要なのね。
そうそう。ついでに介護保険のお金の流れを説明するね。まず、介護保険の加入者が自治体に保険料を納めるよね。で、利用者がサービスを使うと、利用した事業者が自治体からかかった費用の7~9割を受け取るんだ。残りの1~3割は利用者が支払うんだよ。
以下の図解がわかりやすいんじゃないかな。
国や都道府県の税金も使われているものの、介護保険は自治体ごとに成り立っているのね。
ボクの町でも介護保険が成り立ってるって考えると、ちょっと身近に感じるよ!
介護保険ってすごいんだね。病気とかになったらボクでも使えるの?
いやいや、たかしくんはまだ子どもだから使えないっポ。介護保険を利用できるのは、要介護・要支援認定を受けた65歳以上の高齢者、もしくは40歳から64歳までの特定疾病に該当する人で要介護・要支援認定を受けた人なんだっポ。
65歳以上の人を第1号被保険者、40歳から64歳までの人を第2号被保険者っていうんだよ。
40歳以上だとわたしもあてはまるわ。特定疾病ってどういうものなの?
特定疾病は、介護保険法で「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病」として定められている、次の16の病気なんだっポ。
たくさんあるんだね。
そうね。早々に介護保険のお世話になることがないように健康には気をつけないと!
あと興味本位で聞くんだけど、年齢以外で介護保険を使いたくても使えない利用対象外の人はいるのかしら?
外国に住んでいて日本に住所がない人は、介護保険の利用はできないんだ。それに、在留期間が短い外国人も使えないよ。
あとは、障害者支援施設とかの介護保険適用除外施設に入所している人も使えないんだよ。
でも、もし適用外の施設から退所したら、介護保険は使えるようになるの?
そうだね。退所したらその日から被保険者資格を得ることができるっポ。逆に入所した場合には、入所日の翌日から資格を失うことになるんだ。
介護保険は「保険」っていうくらいだから、保険料を納める必要があるのよね?
基本的に40歳以上の国民は加入者になるんだっポ。
えー! わたしは40歳を超えてるけど払っていないと思うわ。
ママは扶養内のパートだからじゃないかな。パパの給与明細には介護保険料の項目があると思うから、よく見てみるといいよ。
知らなかったわ……。でも、私たち夫婦には介護ってまだピンとこないし、加入はもう少し先にしたいわ。介護保険に加入したくないときはどうしたらいいのかしら。
残念ながら、介護保険は加入する・しないの意思に関係なく、全員が加入する「強制適用」なんだ。だから、介護保険の加入を拒否することはできないんだよ。
家計は大変だけど、仕方がないわね。
でも介護保険料を納めるからこそ、必要なときにはサービスを受けることができるんだっポ!
じゃあ、介護保険ではどんなサービスが利用できるの?
介護保険は大きくわけると、自宅で生活しながら利用する居宅サービスと、施設に入所する施設サービス、そして、住み慣れた地域でいつまでも生活するための地域密着型サービスの3種類があるっポ。
ヘルパーさんとかデイサービスは居宅サービスってことね。
そうだっポ。ヘルパーのように自宅に直接来てくれるサービスは訪問サービス、デイサービスのように施設に通って利用するサービスは通所サービスというんだ。
ほかには、短期間の宿泊ができるショートステイや、訪問・通所・泊りの3つのサービスを利用できる小規模多機能型居宅介護っていうサービスもあるんだよ。
施設サービスは特別養護老人ホームなんかよね。地域密着型サービスははじめて聞いたけど、なんなのかしら?
地域密着型サービスで代表的なのはグループホームかな。グループホームは認知症を持つ人のための施設なんだっポ。認知症は環境の変化で悪化することもあるから、地域密着サービスが適しているんだよ。
ほかにはなんかないの?
杖なんかの福祉用具も、介護保険を利用して買ったりレンタルしたりできるっポ。購入できるものとレンタルできるものは決められていて、杖はレンタルの対象だよ。
介護保険でいろんなサービスが受けられるのね!
介護保険でいろんなサービスを利用できるのはありがたいけど、問題は料金よね……。たしか1~3割の自己負担で利用できるのよね。
そうだっポ! だから負担割合は少なくてすむよね。
正直、支払いの負担が少ないのすごくは助かるわ。でも1割と3割の差は大きいわね。この差はなにかしら?
これは所得による差だっポ。現役並みの所得があると3割になるけど、ほとんどの人は1割負担だよ。
ウチは両親とも年金暮らしだから3割になることはなさそうね。
介護保険を利用する大きなメリットは、少ない費用で必要な介護サービスを受けれることだよね。ほかには、ケアマネジャーがケアプランっていう介護の計画書を作ってくれることもメリットじゃないかな。
もう、ボクには聞いたことがない言葉ばっかりだよ。
ケアマネジャーっていう専門家にケアプランを作ってもらわないと、介護保険でサービスを受けることができないんだよ。厳密にいうと誰でも作れるんだけど、やっぱり知識のあるプロにお願いするのがいちばんだよね。
詳しくは「ケアプランとは」で解説しているから、読んでみてね。
そっか、つまり介護サービスを使うなら、まず要介護認定を受けて、認定が下りたらケアマネジャーを探してケアプランを作ってもらって、それから介護サービスを利用するって流れになるのね。
カンペキだっポ!
ボクもだいぶわかってきたよ!
2人ともだいぶ理解が進んだようだっポ。担当のケアマネジャーは最低でも月1回は訪問するから、気軽に相談できて家族の精神的な負担も軽くなるんじゃないかな。
専門家にずっとサポートしてもらえるなら安心だわ。
介護保険制度ができたのが2000年だからもうだいぶ経つけど、時代が進むと日本国内の状況もいろいろ変わってくるわよね。同じ制度を続けて大丈夫なのかしら?
いい質問だっポ! 介護保険制度は3年に1回大きな見直しをしているんだよ。
へー。最近の見直しはいつだったの?
最近の改正は2018年度だっポ。この改正では、利用者の自己負担額の見直しや福祉用具レンタル価格の見直し、そして介護医療院の創設なんかが盛り込まれたんだ。自己負担に3割が設定されたのもこのときだよ。
主婦の立場からすると自己負担の割合がやっぱり不安ね。次の2021年には4割もできたりして……。
負担割合のことはいまの段階ではわからないけど、なにか大きな改正はあるかもしれないよね。2025年には団塊の世代が全員75歳以上になることもあって、介護を必要とする人がさらに増えると予想されているんだ。
介護業界の人材不足も長年問題になっているし、次の介護保険制度改正でも大きな動きがあるかもしれないね。
なるほど。改正についてもしっかりチェックしとかないといけないわね。
介護保険は誰もが利用する可能性があるっポ。40歳になったら保険料を支払う義務もあるしね。よく知っておくと、いざ必要となったときの不安を解消することにもつながるよ。
高齢化が進んで、今後ますます介護保険の必要性は高まるから、しっかりと理解してみんなで将来に備えようね!
ケアマネジャー・社会保険労務士・介護支援専門員
開業社会保険労務士として企業の労務管理に携わる他、介護支援専門員の実務経験もある。労務管理に関するセミナー講師、また介護支援専門員や介護福祉士などの受験講座の講師にも従事する。
著者:中村 楓
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