たしか介護認定は自宅で認定調査をするんだよね。もし入院中なら介護認定はできないのかな?
大丈夫!病院でも認定調査は可能だから安心するっポ。申請の仕方や注意点を解説するよ。
*この記事の著者は介護認定調査員・介護福祉士・認知症介護実践者研修修了者です。
<ようじさん(仮名)60歳>
82歳になる母は、数年前に父が亡くなってから一人暮らしをしていました。足腰もしっかりしており身の回りのことも自分でしていましたが、買い物帰りに転倒。右足を骨折してしまい、入院することになりました。
それから半年が経って、最近ようやく歩行器で歩けるまでに回復したため、主治医から退院の話が出ています。しかし母が退院しても、私は遠方に住んでいて頻繁な訪問ができません。
このままでは心配なので、退院と同時にヘルパーさんやデイサービスを利用したいと思っているのですが、入院中でも介護認定は可能なのでしょうか。
お悩みを解決するっポ!参考にしてね。
介護認定は、「介護保険サービスの利用を希望する人が、どのような心身状態でどの程度の介護を必要としているか」を判断するために行われます。
病院に入院している間は医療保険が適用されているため、介護保険は利用できません。しかし、介護認定を受けること自体は医療保険とは関係ないため、入院中でも介護認定の申請は可能です。
ただし入院中の介護認定申請は、病状が安定していると主治医が認めている場合に限ります。手術直後や入院して間もないと、まだ病状が不安定です。心身状態が短期間で大きく変わる可能性があると、原則として介護認定の申請はできません。
安定している状態の目安として、「退院日程が大まかに決まっている」などと具体的に提示している自治体もあります。一方で、状態が安定していると医師が認めていれば、退院未定でも申請可能としている自治体も。
入院中に介護認定を受けたい場合には、担当医や病院のソーシャルワーカーに相談して、申請可能かを確認してもらいましょう。
入院中に介護認定を受けたいと思ったら、次のような流れが一般的です。
(1)病院のソーシャルワーカーに相談
入院中に介護認定を希望する場合は、入院している病院のソーシャルワーカーに相談しましょう。ソーシャルワーカーは介護認定に必要な手続きや手順を教えてくれます。
もしくは、介護認定が受けられる状態なのかを判断するのは医師であるため、担当医に直接相談しても構いません。
(2)介護認定の申請
担当医が介護認定を受けられる状態であると判断したら、介護認定の申請ができます。お住いの自治体窓口に出向いて、申請の手続きをしましょう。家族が遠方にいるなど申請が難しい状況であれば、ソーシャルワーカーに代行申請の依頼もできます。
(3)主治医意見書の作成依頼
介護認定の申請をすると、「主治医意見書作成参考用問診票」が渡されます。この問診票は、担当医が主治医意見書を作成するうえで重要な書類となりますので、ありのままの状態を書くようにしましょう。
問診票を記入したら、ソーシャルワーカーもしくは入院中の病棟看護師に預けると、担当医に渡してくれます。なお、主治医意見書は担当医から直接自治体に送られます。
(4)認定調査
入院中の認定調査は、入院中の心身状況や生活状態を見る調査となるため、基本的に病院と介護認定調査員が直接日程を調整します。家族が同席を希望する場合には、申請書に同席したい旨を記載するか、ソーシャルワーカーに調査時同席したいと伝えておきましょう。
入院中の介護認定は自宅で行うものとは違うため、次の点に注意する必要があります。
介護認定は、たとえ入院中であっても心身が長期的に安定している状態で行われるべきものとされています。そのため、今後の状態が大きく変わる可能性がある手術直後やリハビリ開始直後には、原則介護認定を受けることはできません。
病院はバリアフリーであり、なおかつ職員がすぐに対応してくれる環境です。そのため、病院での介護認定は相応の介護度が出にくくなります。
具体的な例を挙げると、介護度が重く出る傾向にあるのは急性期の病院です。心身状況により行動制限がかかることで、介護度の度合いが本来よりも高くなりやすいのです。
逆にリハビリを目的とした入院だと、環境が整っているため介護の手間が少なくなり、介護度が軽くなってしまうこともあります。
入院中の介護認定を希望する場合は、病院と自宅での生活環境は違うことをしっかりと理解しておかなければなりません。
入院中の介護認定で気をつけたいのが、一時的な入院で担当医がかかりつけ医とは違うケースです。入院中の介護認定では、主治医意見書を入院先の担当医が作成することになっています。
かかりつけ医と担当医が違うと普段の様子がうまく伝わらず、困っている状況が主治医意見書に反映されないリスクがあります。
介護認定では主治医意見書が重要な資料となるため、もし一時的な入院なら退院後に介護認定を行うほうが実情に沿った介護度が出る確率が高くなるでしょう。
自治体によっては、入院中の介護認定について具体的な基準を設けているところもあります。実際の条件としては、「退院予定や退院後の行き先がおおむね決まっている」などが多いでしょう。
もし、入院中に区分変更や更新申請を希望するなら、担当のケアマネジャーもしくは入院先の病院のソーシャルワーカーに相談してください。
ケアマネジャーであれば、これまでの様子の把握や信頼関係もできていると思うので、スムーズな申請ができるでしょう。一方、ソーシャルワーカーなら、入院中の様子を知ったうえで今後の方向性を考えてくれます。
どちらに相談するかといった決まりは特にありません。
また申請は、新規のときと同様にソーシャルワーカーやケアマネジャーの代行が可能です。
すでに介護認定を受けている人が入院すると、入院中に更新の時期がきてしまうことがあります。ですが心身状態が安定していなかったり退院が未定だったりするなら、焦って更新申請をする必要はありません。
なぜなら、入院中は医療保険が適用され、介護保険の利用はできないからです。
状態が安定したら、または退院がおおむね決まった時点で、介護申請をするようにしましょう。
では、介護保険の有効期限はまだ先だけれど、入院によって状態が大きく変わってしまった場合はどうでしょうか。
このケースも、急いで区分変更申請をする必要はありません。新規や更新申請と同じように、状態が落ちついてから区分変更の申請を行うようにしましょう。
入院中でも、心身の状態が安定していれば介護認定はできます。また、家族が遠方に住んでいれば、代行申請も可能です。
ただし、病院と自宅は環境が違うことから、本人に相応した介護度が出ない可能性もあるので注意しましょう。
また、自治体によっては入院中の介護認定について基準を設けています。実際に申請するときには、自治体の基準に該当するかどうかも含めて病院のソーシャルワーカーに相談すると安心です。
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