親や家族を介護する悩み……誰にも相談できなくて困っている人も少なくないんじゃないかな。相談者のみさえさんもそんな一人だっポ。
育児なら相談しやすいけど、確かに介護って誰に相談していいか悩んじゃうかもしれないわね。気軽に相談できたらうれしいわ。
<みさえさん(仮名)30歳>
82歳の祖母は認知症ですが、訪問介護でヘルパーを利用しながら一人暮らしをしています。私は近所に住んでいるので、仕事帰りや休みの日に顔を出して祖母の様子を確認することが日課です。
そんななかで最近気になるのは、祖母の認知症の進行です。鍋を焦がすことが増え、この1か月で3回も鍋を買い換えました。
このままでは心配なので誰かに相談したいのですが、祖母は近所付き合いが苦手だったため近隣に相談できそうな人がいません。
私の友人も育児や仕事に忙しく相談しにくいです。ヘルパーさんたちにはこれ以上負担をかけてはいけない気がして……。
どこかに気軽に相談に乗ってくれる人はいないでしょうか。
「誰か」への相談は、家族にとっても要介護者にとっても大事だっポ。
相談すれば適切なケアができるだけじゃなく、ストレスの軽減にもつながるよ。
介護や認知症に関する悩みは、ヘルパーやケアマネジャーに気軽に相談して大丈夫です。
普段お世話になっている介護職などには相談しにくいと感じる方も実際のところ少なくありません。しかし、ヘルパーやケアマネはご家族の介護負担を軽くする役割も担っているため、些細なことであっても相談していただいたほうがよいでしょう。
ヘルパーやケアマネが要介護者に関わるのは1日の中のわずかな時間なので、普段の様子を細かく知ることができません。特に、他人の前ではしっかりされる高齢者だと、ヘルパーやケアマネはご家族にとって何が負担なのかを実感しにくくなります。
ですから、気軽に何でも相談していただいたほうが、お悩みに合わせた支援をしやすくなります。ご家族の介護負担を軽減する意味でも、ヘルパーやケアマネジャーには気軽に相談しましょう。
それでもやはり介護職やケアマネジャーには気兼ねして相談しにくい、という場合には、専門機関を頼るのもよい方法です。
介護の悩みを相談できる機関には、次のような場所があります。
地域包括支援センターは、地域に住む高齢者の生活を支えるための拠点として設置されている機関です。主任ケアマネジャーと保健師、社会福祉士が在籍しています。
高齢者に関わるさまざまな悩みや心配事を相談することができ、解決策も提案してくれます。
地域に特化した機関なので、相談は高齢者の居住地にある地域包括支援センターに行くようにしましょう。なお、地域包括支援センターは、多くの場合で中学校区に1つは設置されています。
*厚生労働省が全国の地域包括支援センターを一覧にしています。以下よりご確認ください。
社会福祉協議会は、その地域で暮らす人たちが安心して暮らせるように福祉活動をしている公的機関です。福祉に関わるさまざまな相談窓口を設置しているため、介護の相談にも応じてもらえます。
相談は無料で、必要に応じて関係する機関につないでもらうことも可能です。なお、社会福祉協議会は各都道府県と市区町村に1つずつ設置されています。
市区町村の役所・役場には、高齢者の相談に関する担当課があります。名称は各市町村によって違うものの、「高齢者福祉課」「介護保険課」などの窓口が該当します。
この担当課では、介護に関して総合的な相談に乗ってもらうことができます。
相談内容に応じて、他の支援が必要であれば関係部署につないでもらうことも可能です。国や自治体の制度についても詳しく説明してくれますし、必要に応じて手続きを進めてくれることもあります。
入院中であれば、入院している病院のソーシャルワーカーに相談するとよいでしょう。退院後の生活についてのサポートや情報提供などをしてくれます。
関係機関との連絡調整も行ってくれるため、生活環境をある程度整えたうえでの退院が可能となります。
介護の悩みを解決する方法としては、無料の電話相談もあります。認知症の悩み、介護全般の悩みなどの相談に応じてくれるので、気になる方はインターネットなどで調べてみるとよいでしょう。
相談時間は日中が多いものの、夜間の相談に応じてくれるところもあります。
*厚生労働省が認知症に関する相談先をまとめています。以下よりご確認ください。
もっと気軽に相談したいときには、認知症カフェや介護家族の会のような、介護の当事者が集まる場を活用するとよいでしょう。
相談窓口のようにかっちりとした雰囲気ではなく、雑談レベルで話しやすい環境のため、気軽に相談することができます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
認知症カフェとは、認知症の本人とその家族が気軽に立ち寄れる集まりのことです。お茶を飲みながら、穏やかな雰囲気のなかで悩みを共有できます。
また、どんな人でも利用できることから、介護の当事者ではない地域住民が訪れることも多く、認知症の本人、家族、地域住民が交流できる場としての役割も果たしています。
集まりによっては看護師やケアマネジャーといった専門職も参加するため、気軽に専門職に相談することも可能です。
認知症カフェの運営者は、介護事業所やNPO法人、個人などさまざま。詳しい情報はお住いの市区町村のホームページなどで公開されているので確認してみましょう。
介護の悩みを抱える人が集う場所には、介護家族の会もあります。家族会は、似た境遇を持つ人やいままさに介護に直面している人の集まりなので、雑談レベルで相談しやすい環境です。
家族会は、主に以下の2つに分けられます。
たくさんの家族会がある地域もあり、それぞれに特徴もあるので、自分に合いそうな家族会に参加してみるとよいでしょう。
介護の悩みは、なかなか他人に相談できないと思いがちです。周りの理解を得られないかもしれない、悩みを打ち明ける人がいないなど、心身共に疲弊してしまう人も少なくないでしょう。
しかし、実際には相談できる人はたくさんいます。介護者が気軽に立ち寄れる認知症カフェのような場所も増えています。
ヘルパーやケアマネに相談する、専門機関に相談する、認知症カフェや家族の会に参加するなど、ひとりで悩まずにまずはどこかに相談してみてください。
著者:中村 楓
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