誰もが好んでデイサービスに通所しているわけじゃないっポ。なかには「行きたくない」って高齢者も…。
デイサービスへの送り出しが大変な家族も少なくないみたい。
送迎バスが来てもなかなか乗ってくれないと家族もデイサービスの職員も困っちゃうかも…。
デイサービスは高齢者の引きこもりを防ぎ、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)向上が期待できるサービスです。
しかし、「行きたくない」と通所を拒否し、家族が送り出しに困るケースも少なくありません。
実際にあった通所拒否の悩みを例に、どのように対応すべきかを元デイサービス職員の筆者が解説しましょう。
<えみさん(仮名)60歳>
認知症で要介護1の認定を受けている84歳の義母を自宅で介護しています。
自宅での入浴を嫌がるので週2日のデイサービスを利用していますが、最近「デイサービスに行きたくない」と通所を拒否するようになりました。
もともと気の強い人でしたが、認知症によってさらに強くなり、嫁である私の言うことはもちろん、実の息子(夫)の言うことも聞いてくれません。
デイサービスに行く日は送り出しが大変で困っています。どうしたら気持ちよく通ってもらえるでしょうか。
「なぜデイサービスに行きたくないのか」から紐解いてみるっポ。
デイサービスを嫌がる高齢者は少なくないため、まず「本人にどうして行きたくないのか」を丁寧に聞くことが必要です。
デイサービスを拒否する理由は人それぞれに異なりますが、以下のような理由が考えられます。
デイサービスにはいろいろな人が集まるため、当然性格の合う人や合わない人がいます。
どうしても会いたくない人がいることで利用したくない場合は、ケアマネジャーに相談して苦手な人が利用していない日に移ることも検討してみましょう。
ただし、現在利用している曜日に仲の良い利用者がいる場合は、慎重に検討が必要です。
デイサービスに通い始めて間もない人の中には、「慣れていないから行きたくない」と通所を拒否する人も多い傾向です。
その場合は、「本人が行きたくない」と言っていることをデイサービスの介護職員に伝えましょう。
デイサービスに楽しく通えるよう介護職員が話し相手になったり、他の利用者との間に入ったりするなどの配慮を行います。
どうしても行きたがらないのであれば、慣れるまで送迎のみ家族でする方法も効果的です。
「デイサービスのレクリエーションがつまらないから行きたくない」と本人が言っている場合は、レクリエーションに参加しなくてもよいことを伝えます。
デイサービスのレクリエーションは強制ではありません。
そのため、レクリエーションの時間に読書をしたり、テレビを見たりして過ごすことも可能です。
あらかじめデイサービスの介護職員に、レクリエーションには参加しない旨を伝えておけば参加を促されることもありません。
ひと口にデイサービスといっても、「利用者数が少ない小規模の事業所」「個別レクレーションに力を入れている事業所」「大人数でわいわいにぎやかな事業所」などさまざまです。
そのため、なかには本人が「自分には向いていない」と感じるデイサービスもあるかもしれません。
通所中どうしても合わないと感じる場合は、ケアマネジャーに相談し、デイサービスを変えるのもひとつの方法です。
いろいろな事業所を見学すれば、本人に合ったデイサービスがきっと見つかります。
デイサービス利用者の中には、安心・安全に入浴することが目的でデイサービスを利用する人も多い傾向です。
しかし「お風呂に入りたくない」という理由で通所を拒否する人もいます。
その場合は、なぜ入浴したくないのかを本人に確認することが必要です。「異性のスタッフに介助されたくない」「体を他の利用者に見られたくない」など、何らかの理由があれば介護職員に伝えましょう。
デイサービスは、できる限り本人の気持ちに寄り添った対応をしてくれるはずです。
親が認知症の場合、自分がなぜデイサービスに通所しなくてはならないのかを理解できないケースもあります。
「自分はしっかりしているから」と、デイサービスの通所を拒否する人も多い傾向です。なかには、一度説明をして納得したことを忘れてしまう人もいるでしょう。
その場合は、無理強いをせず介護職員に任せるのが一番です。介護職員は、そのような状況には慣れているので、「どのような声かけが有効か」「どうアプローチすべきか」を知っています。
高齢者が通所を拒否していると、デイサービスの日が近づくにつれて「また行きたくないと言い出したらどうしよう」と、憂うつな気持ちになってしまう家族もいるのではないでしょうか。
デイサービスが利用者本人や家族のストレスになってしまっては本末転倒です。
ここからは、スムーズにデイサービスに行ってもらうためのコツを紹介します。
親が「デイサービスに行きたくない」と言っている場合は、まず理由を尋ねましょう。たとえその理由が大した内容でなくても、「そうなんだ。それで行きたくないんだね」と共感することが大切です。
ここで、「そんなこと言ってないで行ってよ」などと無理強いをすると、「意地でも行かない」と言い出しかねません。行きたくない理由を聞いたら、「ケアマネジャーやデイサービスの介護職員に連絡しておくから安心して」と伝えます。
認知症の人の場合は、その都度デイサービスの必要性を本人に話しましょう。人に頼られるのが好きな人には、「職員の〇〇さんが手伝ってほしいんだって」などと伝えると喜んで行ってくれる可能性もあります。
基本的に、介護職員は通所を拒否する利用者に慣れています。そのため、本人が通所を嫌がっているからといってあきらめて帰ることはありません。
介護職員がスムーズに利用者を誘導するには、家族との情報共有が不可欠です。
ただし、「どのような理由でデイサービスに行きたくないと言っているのか」「本人はどのような性格なのか」「何をすることが好きなのか」によって声のかけ方が違ってきます。
そのため、どんなにささいな情報でも家族と介護職員で共有することが大事です。
在宅介護をする家族の中には、「デイサービスの送り出しの時間は仕事に出ている」といった人もいるでしょう。
家族が送り出しをできない人や一人暮らしの高齢者など、「自分で準備をしてデイサービスに行けるか心配」という場合は、訪問介護を利用する方法があります。
ケアマネジャーに相談し、訪問介護の送り出しサービスが必要と判断されればサービスの利用が可能です。
デイサービスに持参する荷物をまとめたり、着替えを手伝ったりといった介助も受けられるため、安心してデイサービスに通所できます。
家族は、本人をデイサービスに行かせることばかりに目を向けるのではなく、体調の変化を見落とさないよう注意しましょう。
例えば、「今日は体調が悪いからデイサービスは休みたい」と親に言われたとします。
親が普段からデイサービスへの通所を拒否している場合、仮病ではないかと思ってしまうかもしれません。
しかし、本当に体調が悪い可能性もあるので、血圧を測ったり、状況によってデイサービスをお休みしたりする対応が必要です。
また、デイサービスへの通所を無理強いすることによって、本人と家族が不仲になるケースもあります。
親が通所を嫌がる場合は、家族だけで説得しようとせずケアマネジャーやデイサービスの介護職員に相談しましょう。
デイサービスの通所を拒否する理由は、人間関係に悩んでいたり、デイサービスの雰囲気になじめなかったりするなど、人それぞれです。
まずは、デイサービスに行きたくない本人の気持ちを尊重し、話を聞くことが必要でしょう。
そのうえで、介護のプロであるケアマネジャーやデイサービスの介護職員に相談することが解決への近道です。デイサービスへの通所が本人のストレスにならないよう配慮しましょう。
著者:柴田 まみ
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