高齢者が健康で過ごすためには食事が欠かせないよ。でも食欲不振になると元気がなくなっちゃうっポ。
今回はおかあさんがご飯をあまり食べられなくなったという相談にお答えするね。
<しょうこさん(仮名)52歳>
76歳で要介護1の母と同居しています。ここ最近、母は食欲不振なのか食事量がすっかり減り、体重が減少してしまいました。
母は週2回、デイサービスで栄養士さんが考えた献立の昼食を摂っています。他の日は私が仕事でいないので作り置きしていますが、残していることも多くあります。
栄養バランスに優れた宅配弁当も考えたのですが、出来合いのものを母はあまり好みません。
痩せてしまった母が心配なので、自宅でできる食事の工夫や気を付ける点などを教えて下さい。
高齢者の食欲不振は、食事を楽しめなくなることが理由のひとつだっポ。
高齢者が日常で「とても楽しい」と感じることは、どのくらいあるでしょうか。
若いころからの趣味が継続できている方もいらっしゃいますが、高齢になるとできないことが増えて、楽しみの数は否応なく減ってしまいます。
そんな生活の中で、高齢者が楽しめることのひとつに食事があります。
しかし、以前のように食事を楽しめなくなっていることもあるでしょう。
高齢になると味を感じる力が落ちるため、何を食べても薄く感じたり、おいしく感じにくくなったりたします。
また、食欲は季節感や若いときからの食生活、老いてからの味覚の変化といったさまざまなことと結びついているのです。環境の変化やストレス、活動量の低下によりそもそも食欲がわかないといったケースも考えられるでしょう。
年齢を重ねるにつれ、自前の歯も少なくなり入れ歯にするなど、噛む力も落ちてきます。噛む楽しさがなくなり、食べ応えも感じにくくなります。
その上、むせやすくなれば、ついつい食べることに身構えてしまいます。その結果、食欲不振となってしまうのです。
高齢者は食事量が減るだけでなく、栄養の偏りもみられます。
数年前、高齢者の低栄養についてのニュースを見ました。
そのニュースでは、高齢者の3食が、朝はパン、昼はうどん、夜は炊きこみご飯など、ほとんど炭水化物だけになっていることが多いと報じていました。
そのニュースをきっかけに、地域の高齢者に対して食事に関するアンケートを取って、簡単な統計を出してみました。
そのアンケートの回答者は50人程度でしたが、その結果「タンパク質があまり摂れていない」ことが浮き彫りになったのです。
肉や魚は週に2回くらいという回答が多く、タンパク質を毎日摂るという習慣は見られませんでした。
また、家族と同居している場合でも、大好きなお寿司の助六や和菓子しか食べようとせず、栄養失調で体重が30キロ未満になって救急搬送されたという方もいらっしゃいました。
高齢になっても健康でいるためには、栄養バランスのとれた食事をきちんと摂ることが大切です。
食事量が減って痩せてしまうと、健康寿命という「健康に生活できる期間」を減らしてしまいかねません。
高齢になると、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなり、若いときから患っている病気も悪化しやすくなります。
しかし、栄養をしっかり摂っている高齢者は、もし何らかの病気にかかったり怪我をしたりしても、手術や退院後、リハビリをして日常生活に復帰できることが多いのです。
高齢者に食事を摂ってもらう工夫はいくつかあります。
高齢者の食を充実させるために、詳しい聞き取りをするのもひとつの方法です。長年一緒に暮らしている家族の食の好みを聞き取りするなど、「何でいまさら」思われるかもしれません。
しかし、人の好みというのは、年齢とともに劇的に変化することが多いのです。
例えば90歳を過ぎた頃に、それまで一切の魚料理を食べなかった方が、魚料理ばかり希望されるようになったことがありました。
ご本人に好みが変わった理由を聞いても、「わからない」とのことで、その後は肉料理を一切食べなくなってしまいました。
別の方で、急に肉料理しか希望されなくなったこともありますし、手術後から大好きだった味噌汁が大嫌いになった方もいらっしゃいました。
もしかしたらこのように大きな食の好みの変化があるかもしれません。まずは現在の好みを知ることが大事でしょう。
以前、息子家族と同居している高齢者から「食が進まない」とお聞きしたことがあります。
なぜ食が進まないのかを探ろうと、毎日のメニューをお嫁さんに聞いてみました。
たくさんのメニューをお聞きしたのですが、いくつか気になる品目がありました。
それは、スパゲティ、ラーメン、焼きそば、ステーキ、カツレツ、サラダ、干物といった品目です。
食べたくなくて食が進まないわけではなさそうだったので、その形態に問題があると感じました。
以下のように食べやすさのひと工夫をしておくと、食も進むかもしれません。
肉の固さは、一口大に切ったとしても高齢者の歯では噛み切ったりすりつぶしたりがしにくいものです。
肉の繊維をしっかり切って下調理しておかないと、噛み切れなければ吐き出すしかありません。最悪の場合はうっかり飲み込んでしまうケースもあり、のどに詰まってしまう事故も実際に多くあります。
スパゲティ、ラーメン、焼きそばなどの麺類には弾力のあるものも多く、嚙む力が弱いと噛み切って噛みつぶして飲み込むのも困難かもしれません。
場合によっては、麺をかなり柔らかく煮て調理する必要もあるでしょう。
魚なら大丈夫と思いがちですが、干物などの焼き魚も、身がパサパサしていると飲み込みにくいものです。
食べやすくするには、たれにとろみをつけてからませれば喉を通りやすくなります。
サラダは繊維を多く含むので、生では食べにくいことがあります。
細かく刻むか、電子レンジや鍋でゆでて温野菜にすると食べやすくなるでしょう。
高齢者は年代的に煮物や豆料理を好むことも多くあります。メニューの一品に箸休めで添えておくことで食欲がわくかもしれません。
また筆者の暮らす地域では、コンビニで売っている1人分の肉料理や魚料理は高齢者にも人気があります。個々にレトルトや冷凍でパックされ、そのまま温めやすく日持ちもして、手軽に手に入る食糧です。
宅配弁当に抵抗を感じる方なら、このような手軽なレトルト食品を利用してもよいかもしれません。高齢者の嚥下状態によっては、刻んで手を加えるなどひと工夫することをおすすめします。
高齢者の食事は、好みの把握やちょっとしたひと工夫、調理済みの食材の利用などで豊かにできます。
高齢者の食事の量が減ってしまった、痩せてしてしまったなど、食欲不振かなと思ったときには、どこに「食の楽しみ」があるのかをぜひ見つけてみてください。
そして、栄養バランスを考えながら、食欲を刺激する「ちょっとした工夫」をしてみることも大切です。
著者:葦江(よしえ)
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