サ高住に暮らす母親を喜ばせたい!家族が選んだクリスマスの贈り物とは?

要介護の親御さんが老人ホームに入居すると、家族との距離が遠くなっちゃうこともあるよね。そんな普段は忙しくて面会が難しいあるご家族が、母親のためにサプライズでクリスマスパーティーを企画したそうなんだ。

へー、素敵ね! どんなパーティーだったのかしら?

サービス付き高齢者向け住宅に入居するチヨさんのために、ご家族がイチから準備をしたんだよ。
ケアマネジャーが目にした、クリスマスの温かいエピソードをお伝えするっポ!

刺激が少ない高齢者の日常に季節のイベントを

介護が必要な高齢者の日常は何かと単調になりやすいっポ。だから、クリスマスとか季節のイベントがいい刺激になるんだ。

老人ホームなどに入居中の高齢者は、施設内で過ごすことが多くなりがちです。日常生活での刺激が少ないと、身体機能の低下や認知症の進行につながるため、注意が必要になります。
季節を感じられるイベントはよい刺激となり、高齢者の心身の健康を維持するために重要なものといえるでしょう。

自宅で生活をしていれば、元気なうちは家事をしたり、どこかへ出かけたりすることもあります。しかし、施設などではスタッフが掃除や食事の準備をしてくれる場合が多く、危険防止のため自由に外出することを制限されたり、身体的にひとりで外出したりすることが難しいケースもあります。

普段忙しい家族にとっては、介護が必要な親や配偶者に施設で過ごしてもらえば安心です。しかしその反面で、施設にすべてをお任せしてしまい、家族の関わりが少なくなってしまうこともあるかもしれません。

だからこそ、クリスマスなどの季節のイベントはよいきっかけになります。家族の絆を保つと共に、高齢者の心身の健康を維持するメリットもあります。

「サ高住に入居する母を喜ばせたい」と相談が

今回紹介するのは、サービス付き高齢者向け住宅に入居されたチヨさんと、頻回に面会することが難しいご家族との心温まるクリスマスパーティーの様子みたいね。楽しみだわ!

チヨさんは84歳で3年前にご主人に先立たれ、一人暮らしをしていました。ご主人が亡くなられてから少しずつ認知症が進行し、歩行もおぼつかなくなってきたため、半年前にサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に転居してきました。

サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者を対象とした賃貸の集合住宅であり、安否確認サービスが付いています。その他の日常生活のサービスは訪問介護などの外部サービス(併設していることもある)などを利用します。
チヨさんは普段からあまり部屋の外に出ることを好まれず、1日に数回訪問してくれるヘルパーさんが主な話し相手でした。

そんな中、年末に海外に赴任しているお孫さんが帰省することになり、久しぶりに家族みんなで集まってチヨさんを喜ばせたいと、ケアマネのわたしに相談がありました。
このお孫さんは中学生になるまでチヨさんと同居しており、とても可愛がっていたそうで2年ぶりの再会になります。

家族が揃ったサ高住でのクリスマスパーティー

チヨさんの居室じゃなくて、サービス付き高齢者向け住宅の共有スペースで家族パーティーをしたんだって!

どんな方法でチヨさんを喜ばせるべきか、ご家族と相談しました。家族の思い出を聞いてみると、チヨさんは自宅に子どもや孫を呼んでパーティーをするのが好きだったそうで、12月だったこともありクリスマスパーティーをすることに。

しかし、チヨさんの暮らすサ高住の部屋はみんなが集まれるほどのスペースがありません。そこで、普段は食堂でもある共有スペースを利用させてもらうことにしました。

サプライズパーティーをしようと、当日は総勢8名の家族が集合し、クリスマス用に共有スペースの飾りつけをされていました。
クリスマスツリーは、息子さんがチヨさんの自宅を探すと昔使っていたものがまだあったそうで、サ高住まで持ってこられていました。そこで急遽、チヨさんをゲストではなく主催者の一人として、ツリーの飾りつけを手伝ってもらうことにしたようです。

チヨさんは最初、久しぶりに再会したお孫さんのことはよく覚えていないような素振りをされていましたが、一緒に飾り付けをしているうちに少し思い出したのか、次第に笑顔が増えてきました。

高齢になったり、施設などに入居したりすると、自分から何かをすることが減っていきます。生活に必要なものは準備され、受け身の生活になることが多くなってしまうからです。
しかし、そこにはパーティーの主催者として自分から動いて、あれこれ提案するチヨさんの姿がありました。ときどき不可解なことを言われても、ご家族がさりげなくフォローし、以前のチヨさんの日常を垣間見ることができました。

食事やクリスマスケーキもチヨさんの大好きなものが用意され、準備の段階から終了するまで、笑いの絶えないパーティーとなりました。チヨさんやご家族にとって、あっという間の2時間だったようです。
家族がそれぞれに、チヨさんのことを考えて趣向を凝らしたことや、主体的に動ける機会が持てたことが最高のクリスマスプレゼントになったことでしょう。

場所は違えど、お孫さんがまだ小さかった頃によくやっていたクリスマスパーティーの雰囲気にそっくりだったと息子さんは感想を述べられていました。

あれから1年、チヨさんの認知症は進んでいる様子ですが、今年はどんな笑顔を見せてくれるのか楽しみです。

クリスマスや年末年始に親御さんと過ごしてみては?

季節のイベントでは、高齢者が自宅にいるときのように過ごせて、日常の生活を思い出せる工夫ができるといいですね。日常の介護をすることは難しいご家族でも、ときどきなら予定を立てることもできるのではないでしょうか。

年末年始はお休みを利用して家族も集まりやすく、行事やイベントを行いやすい時期です。ぜひ、親御さんの単調な生活に刺激をプラスし、心身の健康を維持できるようなクリスマスやお正月のイベントを考えてみてはいかがでしょうか。

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著者:寺岡 純子

合同会社カサージュ代表
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、終活カウンセラー1級
8年間の臨床看護を経て、介護保険の開始に伴い介護業界へ転向。全国展開する大手介護事業者で部長職としてさまざまな介護サービスの運営・人材育成を経験する。医療・介護の幅広い知識と経験を多くの介護事業者に届けたいとの思いから独立。現場・事業者・利用者の視点に立ち、介護に特化した研修や事業者・介護者のサポートを行っている。

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