父親は熱が下がらずに3度目の救急搬送となりました。医師からは明日・明後日が峠だと告げられ……。
父は危険な容体だと聞き、予想していたよりも病気の進行が早いことにショックを受けました。
医師には今夜が峠かもしれないと言われましたが、当時はコロナ渦だったので付き添いはできません。一時帰宅して待機することになりました。
急な呼び出しにもすぐ対応できるように、コンビニでおにぎりなどの夜食を買って自宅に戻ると、一息つく間もなく病院から父の容体が急変したとの電話……。
病院へトンボ帰りすることになりました。
コロナ禍でできないはずの面会を看護師さんから促されたときは、それが何を意味するのかすぐに理解できました。
父にはもう意識がなく、かすかに呼吸をしている状態です。
目だけはかすかに開いているものの、焦点はもう合っていません。ただ、まだ生きていることは感じられました。
死期が近づいている人間の五感の中で、聴覚だけは最期まで残ると聞いたことがありました。看護師さんが看取りの際に家族に声掛けを促すのは、これが理由だそうです。
僕はただ父の額に手をあてて「お疲れさま」と声を掛けました。
父の76年の人生が幕を閉じた瞬間に立ち会えたことは、僕の人生に大きな意味をもたらした気がしました。
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