親御さんと離れて暮らしていると、病気になってはいないか、突然倒れてはいないかなど、心配は尽きません。河野さんのご家庭は一人暮らしをする父親の難聴に不安がありました。
日々の安否確認をしようと、見守りサービスをあれこれ試しますが……。なかなか娘たちの思い通りにはいかなかったようです。
高齢になるとこんなにも意思疎通がしにくくなるのか…と、ご自身の両親や親戚間とのやりとりで感じたことはありませんでしょうか?
高齢になると、とくに耳の聞こえが悪くなります。音の中でも高音が聞こえ辛くなり、若い女性の声や受話器を通して聞こえる声が、加齢とともに聞こえにくくなる傾向にあります。
耳が遠いと自転車や車が近づいてきてもわからなかったり、玄関ベルにも気づかないかもしれない。もしかしたらこちらが何回電話しても出ないのは、電話の受信音が聞こえていないから?などと心配でたまらなくなります。近くに住んでいたなら安否確認ができますが、距離があると心配を募らせることしかできません。
河野さん(83歳)は奥様を早くに亡くされて一人暮らし。高血圧と少しの腰痛がある以外は大して悪いところもありません。80歳のときに一度骨折されたためヘルパーが安否確認に入っていますが、結構お1人で何でもできるのでいまだに要支援1の元気な方です。
しかし、あるとき内科受診された際、耳鼻科へ紹介状が出され、緊急受診となりました。実は今まで家族やヘルパーとの会話はなんとなく合わせていただけで、かなり耳が遠くなっていたのです。
これを知って、離れて暮らすご家族(娘さんお2人)は河野さんの家の電気ポットを見守り機能付きのものに変更しました。ポットが使用されると娘さんのスマホに通知が来る設定です。
しかしポットを使用しない夏場には安否確認ができないとわかり、今度は首にかけるタイプの緊急呼び出しボタンを持たせました。ボタンを押せばすぐ緊急通報できるとともに、家族にも連絡が入る仕組みです。
しかしこのボタンも失敗。娘さんは何回も説明しましたが、河野さんは元々首から何か掛ける習慣がないだけでなく、カバンも持たない性格でした。もちろんスマホも家でお留守番です。
次の見守り手段を講じている矢先、娘さんの家に河野さんから電話が。「心配はいらない。元気でいるから安心しろ。どうしても心配なら会いに来い!」と言われてしまい、娘さん方は結局、2人で交代して父親の様子を見行くようになったのでした。
きっとこれからも多くの安否確認機器が開発され、どんなに離れていても高齢者の安否がわかるサービスがたくさん出てくると思います。ですが本人に「会いに来い!」と言われたら…やはり会いに行くしかないのでしょうね。
漫画・コラム:藤木 なみき
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