高齢者の一人暮らしは何かと心配。健康面やお金の管理、そして高齢者をターゲットにした詐欺……御年100歳ともなるとなおさらです。
しかし100歳の上杉さんには、どうやら詐欺電話がかかってくる隙もなさそうです。
秋の涼しさを通り越し、まるで冬本番のような寒さの日もある今日この頃。インフルエンザウイルスの流行を間近に控え、新型コロナの影響で去年よりもより緊張が高まっています。
新型コロナウイルスの流行以降、誰もが外出時はマスクを着用し感染拡大防止を念頭に置いて生活していますが、注意力が散漫になりがちな高齢者の皆さんは果たしてちゃんとウィズコロナの暮らしができているのでしょうか?
ショッピングセンターやコンビニといった密になりやすい室内で、たまに見かけるノーマスク姿の方々。それは高確率で高齢の方なので、見ていると心配になってしまいます。
ご家族も、高齢で一人暮らしのおじいちゃんおばあちゃんのことが心配のようで、私が訪問介護で受け持つ上杉さんの家には頻繁に電話がかかってきます。
それもそのはず、上杉さんは御年100歳。しかも一人暮らしをしているのですから、家族は心配で仕方ないのでしょう。
高齢者を狙った詐欺事件も多発しているので、健康面以外に詐欺被害も心配になります。家族は近所に住んでいるのですが、誰の頼りにもなりたくない上杉さんの意向を尊重しているんです。
私が家事援助サービスに入っている際にも、上杉さん宅には本当によく電話がかかってきます。よくかけてくるのは娘さんです。私がお風呂掃除をしはじめてから退出準備までですから30分くらいでしょうか。
帰る間際に話を聞くと「私の方があっちのことが心配になるわ」と話されました。なんでも、コロナ流行当初は「お母さん大丈夫?」「ちゃんと食べてる?」などと心配してかけてきてくれたのが、最近では夫の愚痴や子供との折り合いが悪いことの愚痴を頻繁に聞かされるのだそう。
そして電話をかけてくるのは娘さんだけではなく、なんと中学生のひ孫さんまで。ひ孫さんも最初は純粋に上杉さんが心配で連絡してきていたのですが、最近では部活の悩み、友達関係の悩み、母親(上杉さんの孫)との対立について…などなど。
まるで上杉さん宅が悩み相談室のようになっているんです。きっとお優しい上杉さんのあいづちに、みんな話したくなってしまうのでしょう。
切れ間のない家族からの電話に、詐欺の電話がかかってくる隙もなさそうでした。
上杉さん曰く、話をうまく切るときの奥の手は「ごめん、トイレに行きたい」だそうです。
漫画・コラム:藤木 なみき
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