※ 第26回(令和5年度)介護支援専門員実務研修受講試験の合格率等を追記しました。
介護の資格には、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修、介護福祉士などさまざまな資格があります。
そのなかで、スキルアップを目指す人気の資格といえば介護支援専門員、つまりケアマネジャー(ケアマネ)です。
今回、この記事で介護支援専門員はどのような資格なのか、取得するにはどうしたらよいのか、合格率や難易度はどのくらいなのかを詳しく解説します。
ケアマネには重要な役割があるっポ。
ケアマネジャーいわゆるケアマネとは、本人や家族の希望と要介護度を考慮した介護サービス計画書(ケアプラン)を作成し、要介護者の自立およびQOL(生活の質)向上を支援する人のことです。
利用者が適切なサービスを受けられるよう、アセスメントや各サービス事業所との連絡調整、施設では他部署との連携なども行います。
そのため、ケアマネには介護の知識や技術はもちろん、コミュニケーション能力も必要です。
ケアマネには、「居宅ケアマネ」や「施設ケアマネ」がいます。
その名の通り、居宅介護支援事業所で働くケアマネと、介護施設で働くケアマネのことです。
居宅介護支援事業所と介護施設、どちらで働くにしても利用者の自立を支援し、生活の質を高めるためのケアプランを作成することには変わりありません。
明確な短期目標と長期目標を立てて、目標達成に向けて利用者をサポートします。
居宅ケアマネの場合は、利用者ができる限り自立した在宅生活を送れるよう、デイサービスやホームヘルパーをケアプランに位置付けたり、家族の介護疲れを軽減するためにショートステイの利用を促したりします。
また、介護施設への入居を希望する利用者に、施設を探して紹介するのも居宅ケアマネの仕事です。
施設ケアマネは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設といった介護施設などに入居する利用者を対象に施設サービス計画書を作成します。
現場ではケアマネが作成した施設サービス計画書をもとに介護の方向性を決めるため、利用者本人はもちろん現場で介護をする介護職員の話を聞き、利用者の現状を把握することが大切です。
介護を必要とする人に欠かせない存在がケアマネなのね。
ケアマネの資格を取得するともちろんメリットがあるっポ。
ケアマネジャー資格の取得には、以下のようなメリットがあります。
ケアマネには、介護の知識だけでなく医療や福祉用具など、高齢者に関わるさまざまな知識を得られるメリットがあります。
ケアマネは利用者に合ったサービスをケアプランに位置付けるために、いろいろなサービス事業所や業種の人と連携を取ります。
特にサービス担当者会議は意見を出し合う場なので、自分とは違った角度からの知識を得られます。
ケアマネは利用者の一番の理解者であり、介護の計画を立てるいわば司令塔的存在です。
ケアマネが作成したケアプランに沿って介護サービスを提供するため、自分の信念に基づいた介護をしやすい立ち位置です。
たとえば、現場で「この利用者にはこういうサービスが合っているのではないか」と介護職員が感じても、介護サービスを変更するのは容易ではありません。
しかし、ケアマネなら利用者本人と家族に提案が可能です。理解が得られればケアプランを変更できます。
介護支援専門員の給与は、現場で働く介護職員よりも高く設定されています。
介護職員とケアマネの平均給与額の差は以下の通りです。
介護職員 | 325,550円 |
---|---|
ケアマネジャー | 362,510円 |
*厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」より
(※手当・一時金を含む)
つまり、介護職員とケアマネジャーでは月あたり3万6,960円もの差があります。
ケアマネは居宅支援事業所や介護施設だけでなく、一定の経験を積めば主任ケアマネ(主任介護支援専門員)として地域包括支援センターなどでも働けます。
そのため、活躍の場は広いといえるでしょう。
また、事務作業が多いので、体力が必要な介護職員に比べて年齢を重ねても働き続けやすいメリットもあります。
介護職員は利用者の生活を支える仕事のため、お休みに時間や曜日は一切関係ありません。さらに、早番、日勤、遅番、夜勤など、勤務も変則的です。
一方ケアマネの場合は、基本は日勤の勤務になるうえ、日曜日を定休日としている事業所も多いです。
そのため、体力的に夜勤がつらい人、生活リズムを整えたい人がケアマネに転向する話も珍しくありません。
ケアマネとして働くメリットはたくさんありそうね!
ケアマネ試験の受験者数や合格率はどのくらいかな?
これまでの推移を一覧で見てみるっポ。
ケアマネ試験第1回からの受験者数、合格者数、合格率を一覧にまとめました。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
第1回(1998年・平成10年度) | 20万7,080 人 | 9万1,269 人 | 44.1 % |
第2回(1999年・平成11年度) | 16万5,117 人 | 6万8,090 人 | 41.2 % |
第3回(2000年・平成12年度) | 12万8,153 人 | 4万3,854 人 | 34.2 % |
第4回(2001年・平成13年度) | 9万2,735 人 | 3万2,560 人 | 35.1 % |
第5回(2002年・平成14年度) | 9万6,207 人 | 2万9,508 人 | 30.7 % |
第6回(2003年・平成15年度) | 11万2,961 人 | 3万4,634 人 | 30.7 % |
第7回(2004年・平成16年度) | 12万4,791 人 | 3万7,781 人 | 30.3 % |
第8回(2005年・平成17年度) | 13万6,030 人 | 3万4,813 人 | 25.6 % |
第9回(2006年・平成18年度) | 138,262 人 | 2万8,391 人 | 20.5 % |
第10回(2007年・平成19年度) | 13万9,006 人 | 3万1,758 人 | 22.8 % |
第11回(2008年・平成20年度) | 13万3,072 人 | 2万8,992 人 | 21.8 % |
第12回(2009年・平成21年度) | 14万0,277 人 | 3万3,119 人 | 23.6 % |
第13回(2010年・平成22年度) | 13万9,959 人 | 2万8,703 人 | 20.5 % |
第14回(2011年・平成23年度) | 14万5,529 人 | 2万2,332 人 | 15.3 % |
第15回(2012年・平成24年度) | 14万6,586 人 | 2万7,905 人 | 19.0 % |
第16回(2013年・平成25年度) | 14万4,397 人 | 2万2,331 人 | 15.5 % |
第17回(2014年・平成26年度) | 17万4,974 人 | 3万3,539 人 | 19.2 % |
第18回(2015年・平成27年度) | 13万4,539 人 | 20,924 人 | 15.6 % |
第19回(2016年・平成28年度) | 12万4,585 人 | 1万6,281 人 | 13.1 % |
第20回(2017年・平成29年度) | 13万1,560 人 | 2万8,233人 | 21.5 % |
第21回(2018年・平成30年度) | 4万9,332人 | 4,990人 | 10.1 % |
第22回(2019年・令和元年度) | 4万1,049人 | 8,018人 | 19.5% |
第23回(2020年・令和2年度) | 4万6,415人 | 8,200人 | 17.7% |
第24回(2021年・令和3年度) | 5万4,290人 | 1万2,662人 | 23.3% |
第25回(2022年・令和4年度) | 5万4,406人 | 1万10,328人 | 19.0% |
第26回(2023年・令和5年度) | 5万6,494人 | 1万1,844人 | 21.0% |
*介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況等(厚生労働省) 等より
ケアマネ試験の第21回で突然受験者数が少なくっているわね…。
何かあったのかしら?
ケアマネ試験の受験者数を見ると途中で急激な変化があるのがわかるっポ。
1998年からスタートしたケアマネ試験は2017年の20回まで、受験者数はその年によって違いがありますが、おおむね11~15万人あたりを推移しています。
しかし、2018年に実施された第21回の試験では受験者数が大幅に減少しています。
第20回の受験者数が13万1,560人だったのに対し、第21回の受験者数は4万9,332人と、実に8万人以上減少しています。
その後の第22回、第23回の受験者数も、第21回同様4万人台です。
これには、2018年度から適用された受験資格の変更が大きく影響しています(受験資格の変更については、以下で詳しく解説します)。
2018年度から受験資格が厳密化されたために、ケアマネの試験を受けたくても受験資格を得られずにいる人も多いです。
一時期はケアマネ試験の受験者数が3分の1近くに減少しちゃったのね。
ケアマネ試験の合格率はあまり高くないみたい…。
1998年(第1回)から2004年(第7回)まで、合格率は30~44%と高めを推移しています。
しかし2005年(第8回)からは30%を割る状態が続き、2021年(第24回)で 23%を超えたものの、2011年(第14回)からの合格率はほとんどの年で10%台です。
介護福祉士の合格率が70%前後を推移していることを考えると、ケアマネの合格率10%台は非常に低いといえます。
他の福祉系の資格の合格率を比較すると歴然でしょう。
資格 | 合格率 |
---|---|
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 17.7% |
介護福祉士 | 71.0% |
社会福祉士 | 29.3% |
看護師 | 90.4% |
保健師 | 94.3% |
理学療法士 | 79.0% |
作業療法士 | 81.3% |
言語聴覚士 | 69.4% |
*2021年6月時点
同じ介護の資格である介護福祉士で71.0%です。
これらの数字からも、ケアマネの試験は他の資格試験よりも難易度が高いことがわかるでしょう。
こう見ると国家試験は意外と合格率が高いのね!
ケアマネ試験は難易度が高めだけど、合格の基準はどのくらいなのかな?
ケアマネの試験は、介護支援分野に関する問題が25問、保健医療福祉サービス分野の問題が35問の計60問で構成されています。
試験は5つの設問から正しい解答を選択するマークシート方式です。
介護支援分野、保健医療福祉サービス分野どちらも70%以上正解すれば合格となります。
ただし、その年の難易度によって合格点は上下することを頭に入れておきましょう。
ちなみに、2020年に行われた第23回の合格点は、介護支援分野が13点以上、保健医療福祉サービス分野が22点以上でした。
試験の時間は120分。1問あたり2分で解答を導き出さなければならいので、スピードや時間配分が求められます。
介護保険や介護報酬に関係する問題も多いため、テキストを読み込み十分な勉強が必要です。
「5つの設問から正しい解答を選択するマークシート方式」が大変そうだわ…。
どんな問題が出題されるのか、過去問を1問紹介するっポ!
チャレンジしてみてね。
第23回の試験問題から1問を例に見てみましょう。
問題20 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条の具体的取扱方針のうち介護支援専門員に係るものとして正しいものはどれか。3つ選べ。
1 要介護認定を受けている利用者が要支援認定を受けたときは、指定介護予防支援事業者と当核利用者に係る必要な情報を提供する等の連携を図るものとする。
2 被保険者証に認定審査会意見の記載があるときは、利用者の理解を得た上で、その内容に沿って居宅サービス計画を作成しなければならない。
3 継続して居宅サービス計画に福祉用具貸与を位置付けるときは、貸与が必要な理由を記載しなくてもよい。
4 居宅サービス計画に地域ケア会議で定めた回数以上の訪問介護を位置付けるときは、それが必要な理由を居宅サービス計画に記載しなければならない。
5 利用者が通所リハビリテーションの利用を希望しているときは、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めなければならない。
引用:介護支援専門員の試験情報(東京都福祉保健局)
この問題は、ケアプランを作成するときに必要な知識が問われています。
解答と解説は以下の通りです。
1、2 設問の通りなので〇です。
3 ケアプランに福祉用具貸与を位置付ける場合は、たとえ継続であっても貸与が必要な理由を記載しなくてはならないため、答えは×になります。
4 地域ケア会議で定めた回数以上のサービスを提供する場合は、必要な理由を居宅サービス計画に記載するだけでなく、居宅サービス計画を区市町村に届け出る必要があるため、答えは×です。
5 設問の通りなので〇になります。
つまり問題20の解答は、1、2、5が正解です。
この中の1つでも答えが間違っていれば、他の2つが正解していたとしても残念ながら得点になりません。
焦らず問題をよく読んで理解することが大切です。
なお、この他にどのような問題が出たのかは、東京都福祉保健局などのホームページから見られます。気になる人は確認してみてはいかがでしょうか。
こんな問題がわかるなんて、ケアマネジャーになる人ってすごいのね!
ケアマネ試験は誰でも受験できるわけではないっポ!
ケアマネの受験資格は、国が定める国家資格等に基づく実務経験、もしくは国が定める相談援助業務に従事する期間が5年以上かつ900日以上あることです。
介護の資格でいうと、介護福祉士や社会福祉士などが挙げられます。
その他の対象資格
医師/歯科医師/薬剤師/保健師/助産師/看護師/准看護師/理学療法士/作業療法士/視能訓練士/義肢装具士/歯科衛生士/言語聴覚士/あん摩マッサージ指圧師/はり師、きゅう師/柔道整復師/栄養士(管理栄養士含む)/精神保健福祉士
ただし、教育業務や事務などをしていて利用者に対する直接的な援助を行っていない場合、その期間は実務経験として扱われないため注意しましょう。
なお、2017年度まではホームヘルパー2級や介護職員初任者研修、実務者研修などの資格を保有し、5年以上介護業務に従事すればケアマネの受験資格が得られました。
しかし、厚生労働省はケアマネの専門性をより高めるため、2018年度の試験からはこれらの資格を除外しています。
第23回の職種別合格者数を見てみると、介護関連の資格(介護福祉士、または社会福祉士)を有する人が合格者の65%以上を占めています。
この割合からも、「介護のスキルアップ=介護支援専門員(ケアマネジャー)」の考えが浸透しているといえるでしょう。
ケアマネジャーは、段階を踏んだうえで取得できる資格なのね。
試験に合格してもまだケアマネとは名乗れないっポ!
介護支援専門員証交付までの流れを解説するっポ。
ケアマネの資格、つまり介護支援専門員証の交付は、試験に合格するだけで取得できるわけではありません。
ここでは、ケアマネジャーの資格取得までのプロセスを解説します。
ケアマネ試験は「合格=ケアマネの資格取得」ではなく、厳密にいうと「合格=介護支援専門員実務研修の受講資格がもらえる」試験です。
この試験に合格することで、ケアマネとして働く基本的な知識や技術がある、研修に参加できるレベルと認められます。
ケアマネに必要な専門知識を修得するための研修です。講義と演習を合わせて87時間以上のカリキュラムで構成されています。
たとえば、グループワークをしたり、対象者を決めてケアプラン作成の練習をしたりするなど、研修内容は各都道府県によってさまざまです。
すべての研修を修了すると、実務研修修了証明書が交付されます。
各都道府県に研修修了証明書を提出し、介護支援専門員資格登録簿への登録申請を行います。
研修を修了した日から3カ月以内に登録することが定められているため、忘れずに申請しましょう。
介護支援専門員資格登録簿へ登録申請と同時に、介護支援専門員証の交付申請ができます。
介護支援専門員証の交付を申請する場合は、介護支援専門員証交付申請書以外に住民票や写真、交付手数料などが必要です。
詳しくは、居住する都道府県のホームページを確認してください。
ケアマネ資格取得の道のりは遠いのね!
2024年(令和6年)のケアマネ試験日、合格発表日、申込期間はいつかな?
介護支援専門員実務研修受講試験の毎年の試験日は10月頃、合格発表日は毎年12月の1週目に設定されています。
申し込み日は都道府県によって異なりますが、6月に申し込み期間を設けているところが多いです。受験を希望する方は申込が送れないよう注意しましょう。
詳しい情報は各都道府県のホームページ確認してください。
また、2019年のケアマネ試験は台風の影響で延期となりました。
自然災害など、試験の実施に影響が出そうな場合は、情報をこまめにチェックするようにしてください。
詳しい試験の情報は都道府県ごとにチェックしたほうがよさそうね。
介護の資格の中でも、スキルアップを目指す人に人気のケアマネ資格。
受験するには法定資格や5年以上の実務経験が必要なため、受験資格を得ること自体が難しい資格ともいえます。
ただ、取得すると給与アップや活躍の場が広がるなどメリットも多い資格です。
介護の仕事を極めたい人や、末永く介護に携わっていきたい人は、ケアマネ資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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