デイサービスの食事に不満があった利用者さん。介護スタッフにその不満を伝えますが、それだけでは終わらせませんでした。
利用者さんの行動力が見事にデイサービスの食事を改善させたエピソードです。
デイサービスで働いていたころのことです。
1人の利用者さんの働きによって“デイサービスのお昼ご飯が改善される”という出来事がありました。
日ごろ自分からしゃべることの少ない利用者さん。認知症の症状等もなくしっかりしている方です。
しかし足を悪くしてからは、自宅での入浴が困難になりデイサービスを利用していました。
ある日の昼食時のこと。私が昼食摂取の見守りをしていると声を掛けられました。
「ちょっと、コレ味が濃いわ」。手元には小鉢がひとつ、高野豆腐メインの煮物です。
「あと、コレも箸でつまみにくい」。もうひとつはサラダに乗ったそぼろ。私たちでもスプーンがないと完食が大変そうです。お膳にスプーンは添えられていませんでした。
「わかりました。一応調理場の方にお伝えしますね」と私が言うなり利用者さんは顔を曇らせて「それはあなたに悪いわ。あなたが言うと角が立つでしょう」とのこと。
そして少し考えて「私が家から電話で知らせておくね。聞いてくれてありがとう」と何事もなかったように昼食に戻られました。
視覚でしか事実確認ができていなかったので、本当にこれでよかったのかなと少し心配になりましたが、その日の残食のほとんどに高野豆腐の煮物が。
利用者さんの意見に間違いはないだろうと、そっとしておくことにしました。
するとそれから1か月ほどたった頃から、ぽつりぽつりと「おかずがおいしくなった」「食べやすくなった」などの声が他の利用者さんから上がり始めたのです。
きっとその方が電話でうまく伝えてくれたのでしょう。
毎回昼食を配膳している介護スタッフでもその変化に気づかないくらい、少しずつ食事の出来栄えが高齢者好みになっていったようなのです。
よく気が付いてしかもコミュニケーション上手だなんて、本当にこの利用者さんがいてくれてよかったなと思いました。
漫画・コラム:藤木 なみき
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