【まとめ】介護施設の自立支援促進加算、通知で分かった詳しい算定ルールは?

今年度の介護報酬改定で施設サービスに新設された「自立支援促進加算」− 。入所者1人あたり300単位/月のこのインセンティブについて、昨年度末の通知で示された詳細な算定ルールを改めてまとめた。【Joint編集部】

■自立支援促進加算とは?

廃用や寝たきりなどを防ぐ取り組みの実施を促すインセンティブ。入所者の自立支援・重度化防止、尊厳の保持につなげる施策の一環だ。特養、老健、介護医療院が対象で、要件を満たせば全ての利用者について300単位/月を算定できる。

■具体的な要件は?

要件のアウトラインは以下の通り。厚生労働省はサマリーの資料で、4つのプロセスに分けて示している。

1. 医師が入所者ごとに、自立支援・重度化防止のために必要な医学的評価を行う。その後、少なくとも6ヵ月に1回の頻度で医学的評価の見直しを行うとともに、自立支援に関する支援計画の策定に参加している。

2. 医学的評価の結果、特に自立支援・重度化防止のための対応が必要だと判断された入所者ごとに、多職種共同で「支援計画」を策定する。その支援計画に沿ったケアを実施していく。

3. 医学的評価に基づき、少なくとも3ヵ月に1回の頻度で入所者ごとに支援計画を見直していく。

4.  新たなデータベース「LIFE」へ、医学的評価の結果など関連情報を提供してフィードバックを受け、計画の見直しにつなげるなどPDCAサイクルを回していく。

* LIFEへの情報提供は、加算を算定し始める月の翌月10日までに行う。情報提供の内容などを含め、詳しくはLIFEの通知で規定されている。

改定の解釈通知では、こうした要件の趣旨が以下のように詳しく説明されている。

○ 医師が定期的に、全ての入所者に対する医学的評価と、リハビリテーションや日々の過ごし方などについてのアセスメントを実施するとともに、医師、看護職員、介護職員、ケアマネジャーなどの職種が、医学的評価、アセスメント、支援実績に基づき、特に自立支援のための対応が必要とされた者について、生活全般にわたり適切な介護を実施するための包括的な支援計画を策定し、個々の入所者や家族の希望に沿った、尊厳の保持に資する取り組み、本人を尊重する個別ケア、寝たきり防止に資する取り組み、廃用性機能障害に対する機能回復・重度化防止のための自立支援の取り組みなど、特別な支援を行っている場合に算定できる。

○ 画一的・集団的な介護、あるいは個別的ではあっても画一的な支援計画による取り組みを評価するものではない。

■医学的評価と支援計画

厚労省は既に、医師の医学的評価と多職種の支援計画に用いる様式を公表している。

様式のWordファイルのダウンロードはこちら(別紙様式7)

解釈通知では医学的評価について、「その時点の自立支援に関する評価に加え、特別な支援を実施することによる入所者の状態の改善可能性などについて実施すること」と要請した。

支援計画については、様式の全ての項目を埋めるよう求めるとともに、「個々の入所者の特性に配慮しながら個別に作成し、画一的な支援計画とならないよう留意すること」とクギを刺している。

また、支援計画は以下の考え方に沿って実施していくこととされた。

○ 寝たきりによる廃用性機能障害を防ぐために、離床、座位保持、立ち上がりを計画的に支援する。

○ 食事は本人の希望に応じ、居室外で、車椅子ではなく普通の椅子を用いるなど、自宅などでの従前の暮らしを維持できるようにする。食事の時間や嗜好などへの対応も画一的ではなく、個人の習慣や希望を尊重する。

○ 排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用すること。特に多床室では、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない。

○ 入浴は特別浴槽ではなく一般浴槽とし、回数やケアの方法も個人の習慣、希望を尊重する。

○ 生活全般にわたり、入所者本人や家族と相談し、可能な限り自宅での生活と同様の暮らしを続けられるようにする。

○ リハビリテーション、機能訓練の実施については本加算で評価するものではないが、医学的評価に基づき必要な場合は、入所者本人や家族の希望も確認して施設サービス計画の見直しを行うこと。

支援計画の見直しについては、解釈通知に以下のように記載されている。

○ 支援計画の実施にあたっての課題(入所者の状態の変化、医学的観点からの留意事項の大きな変更、多職種共同で取り組むべき事柄の見直しなど)を踏まえ、必要に応じた見直しを行うこと。

○ PDCAサイクルの推進、ケアの質の向上を図る観点から、LIFEへの提出情報とフィードバック情報を活用すること。

■一般浴槽が困難な場合は?

改定のQ&Aには以下のような問答が掲載されている。

Q&A(Vol.2)問41

Q:入浴は、特別浴槽ではなく一般浴槽とし、回数やケアの方法も個人の習慣、希望を尊重することが要件となっているが、仮に入所者の状態から一般浴槽を使用困難な場合は、要件を満たすことになるのか。

A:原則として一般浴槽での入浴を行う必要があるが、感染症などの特段の考慮すべき事由により、関係職種が共同して支援計画を策定する際、やむを得ず、特別浴槽での入浴が必要と判断した場合は、その旨を本人、家族に説明したうえで、実施することが必要。

Q&A(Vol.3)問100

Q:加算の算定を開始しようとする場合、すでに施設に入所している入所者について、提出が必要な情報は、当該時点の情報に加え、施設入所時の情報も必須なのか。

A:既に施設に入所している入所者については、入所時の介護記録などでの評価が可能であれば、施設入所時の情報を提出して頂きたいが、やむを得ず仮に提出できない場合であっても、加算の算定ができなくなるものではない。

提供元:介護のニュースサイトJoint

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