来年4月に迫る次の介護報酬改定に向けた協議を進めている厚生労働省の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)は10日、通所介護や地域密着型通所介護を俎上に載せた。【Joint編集部】
会合では事業者の立場を代表する委員から、光熱費やガソリン代の高騰、他産業での賃上げの進展、コロナ禍に伴う“利用控え”、感染対策の出費の増大などにより、事業所が苦境に立たされていると訴える声が続出。基本報酬の引き上げや各種加算の単位数の再考など、サービスの維持に必要な手立てを求める意見が相次いだ。
また、そのスケールメリットを考慮して規模の大きな事業所の基本報酬を低くする現行の仕組み(大規模減算)について、複数の委員が疑問視。サービスをより効率的に提供できるよう大規模化を促す流れに反しているとして、早期の見直しを要請した。厚労省は今年の年末までに具体策の骨格を固める方針だ。
「多くの事業所が経営難に直面している。職員の賃上げができる状況にはなく、他産業へ転職する職員も出てきている」
全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、こう問題を提起。「サービスを持続可能とするために基本報酬の適切な設定を」と注文した。日本介護支援専門員協会の濱田和則副会長も、「経営が不安定な事業所が少なくない。様々な施策を検討すべき」と呼びかけた。
日本医師会の江澤和彦常任理事は、「多くの事業所の存続が厳しい状況。次の改定では、その足腰をしっかり強くするために基本報酬の見直しが必要」と強調。「国として大規模化を推奨している中で、規模の大きな事業所の報酬を低くする仕組みは時代に逆行している。大規模ほど質の高いサービスを提供している、というデータも複数ある。早急に見直すことが必要」と提言した。産業医科大学の松田晋哉教授も、「大規模減算はもはや時代に合わなくなってきている」と述べた。
委員からはこのほか、いわゆる「3%加算」などコロナ禍の支援策の効果を十分に検証するよう求める声もあがった。厚労省は今後、次の改定で講じる具体策を秋以降の審議会で提案していく予定だ。
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