来年度の介護報酬改定をいつ実施すべきか − 。厚生労働省は11日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)でこれをテーマに取り上げた。従来通りなら4月1日だが、2ヵ月後ろ倒しにして6月1日とすることなどが論点となる。【Joint編集部】
委員からは反対意見も噴出。厚労省は丁寧に検討を続けていく構えをみせた。介護現場の関係者からは歓迎する声が出ており、今後の判断が注目される。
改定の実施時期を後ろにずらすメリットは、各サービスの新たな運営基準や報酬・加算の単位数が決まってからの期間を長くでき、介護施設・事業所やベンダの負担軽減につなげられること。今は年度末の決定から大急ぎで準備しなければならず、改定直前の3月を“デスマーチ”と呼ぶ人もいる。
医療分野では議論が先行している。厚労省は今年8月の中医協(中央社会保険医療協議会)で、診療報酬改定の実施時期を来年度から6月1日とすることを提案。重要ミッションの「医療DX」で現場の負担が増していることも大きな理由としてあげ、大筋で了承を得た経緯がある。
診療報酬改定に合わせて介護報酬改定も6月1日に変えるか否か − 。これが論点だ。
「LIFEが導入されたこともあり、介護現場の負担は病院などと同様に非常に大きい。6月に遅らせて頂きたい」
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長はこう要請。日本医師会の江澤和彦常任理事は、「6月実施以外あり得ない。診療報酬と介護報酬の双方を算定している事業所は二度手間になる。今回は同時改定で、医療と介護の連携を促進するための施策も多くなるはず。改定の時期が異なるとそうした施策の展開にも支障をきたす」と訴えた。
一方で、全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「4月実施を維持して欲しい。介護事業所の多くは診療報酬と介護報酬の双方を算定していない。昨今の物価高騰、人件費の上昇を踏まえると、介護報酬のプラス改定、更なる処遇改善をできるだけ早く実施すべき」と主張。全国知事会の代表として参加した長崎県の担当者(参考人出席)は、「3年ごとに自治体が行っている事業計画の策定、給付費の見込み、保険料額の算定などに大きな影響を及ぼす。地域住民にとって分かりやすい制度を保つことも重要。慎重に検討すべき」と指摘した。
また、全国市長会の代表として参加した大阪府豊中市の担当者(参考人出席)は、「例えば処遇改善加算など、年度単位での計画策定・運用が必要な仕組みは対応が難しくなる。6月実施に変えると、事業者や市町村の窓口などに混乱が生じ、かえって負担が重くなりかねない」と懸念を示した。
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