来年度の介護報酬改定をめぐり、サービスごとに定められている運営基準の見直しの内容が15日に正式決定された。【Joint編集部】
武見敬三厚生労働相が社会保障審議会に改正案を諮問。同会はこれを「了承する」と答申した。
新たな運営基準は今月中にも公布される見通し。ここでは福祉用具貸与・販売の改正内容をまとめていく。施行は4月1日。
福祉用具を貸与で使うか、または販売で使うかを利用者が選べる「選択制」の導入に伴う見直しが目玉となっている。
選択制の対象となるのは、固定用スロープ、歩行器、単点杖(松葉杖を除く)、多点杖の4つ。事業者には今後、利用者の適切な選択を後押しする取り組みなどが求められていく。改正内容は下記の通り。
(1)選択制の対象福祉用具に関する利用者への説明・提案
選択制の対象福祉用具の貸与・販売にあたり、福祉用具専門相談員が、貸与と販売のいずれかを選択できることについて、利用者へ十分に説明することを義務付ける。
あわせて、利用者の選択にあたって、必要な情報を提供するとともに、医師や専門職の意見、利用者の身体状況などを踏まえ、提案を行うことを義務付ける。
(1)選択制の対象福祉用具を貸与した後の検討
選択制の対象福祉用具を貸与する際には、福祉用具専門相談員が、福祉用具の適時・適切な利用や利用者の安全の確保といった観点から、利用開始後6ヵ月以内に少なくとも1回はモニタリングを行い、貸与継続の必要性を検討することを義務付ける。
(2)貸与後のモニタリング実施時期の明確化
モニタリングを適切に実施してサービスの質を高める観点から、福祉用具貸与計画の記載事項にモニタリングの実施時期を追加する。
※ 選択制の対象福祉用具以外も含む
(3)モニタリング結果の記録とケアマネジャーへの報告
介護予防福祉用具貸与と同様に、福祉用具専門相談員がモニタリング結果を記録し、その記録を担当の居宅介護支援事業所へ報告することを義務付ける。
※ 選択制の対象福祉用具以外も含む
(1)選択制の対象福祉用具に関する計画の達成状況の確認
選択制の対象福祉用具を販売する際には、福祉用具専門相談員が、特定福祉用具販売計画の作成後、その目標の達成状況を確認することを義務付ける。
(2)選択制の対象福祉用具の販売後メンテナンス
選択制の対象福祉用具を販売する際には、福祉用具専門相談員が、利用者からの要請に応じて、販売した福祉用具の使用状況を確認するよう努めることとする。また必要な場合は使用方法の指導、修理など(メンテナンス)を行うよう努めることとする。
※ メンテナンスに要する費用は、個々の契約に基づき定められることになる。
(1)管理者の兼務範囲の明確化
管理者の兼務について、一定の条件のもとで離れた場所にある事業所でも認められるようになる。
現行の運営基準で管理者は、兼務不可の常勤専従が原則。管理上支障がない場合は同一の敷地、または隣接する敷地にある事業所での兼務が可能とされている。
今回の改正では、同一・隣接の敷地の事業所でなくても差し支えないことがルール上明確になる。あわせて管理者の責務が、
“サービス提供の現場を適切に把握しつつ、業務・職員の一元的な管理、指揮命令を行うこと”
などと再定義される。こうした責務を果たすことを要件として、離れた事業所の管理者・職員としても従事できるようになる。
(2)身体拘束の適正化
身体拘束の原則禁止や記録の策定などが新たに義務付けられる。
福祉用具貸与・販売にも今後、特養や老健、グループホーム、介護付きホームと同様に、
◯ 利用者の生命・身体を保護するための緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束を行ってはならない
◯ 身体拘束を行う場合は、その態様、時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しなければならない
などが求められる。
(3)「書面掲示」規制の見直し
運営規程の概要など、重要事項をウェブサイトで公表することが新たに義務付けられる。
現行では事業所内での書面掲示が求められるが、これに加えてネットでの情報提供も必須となる。1年間の経過措置を設け、2025年度から義務化が適用される。
重要事項の公表方法としては、法人のホームページや情報公表システムの活用などが想定されている。
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