要介護・要支援に認定される主な原因にはどんなものがあるのかな?
要介護・要支援者の推移も紹介するっポ。
まずは要介護・要支援者数の推移や現在の状況を見てみるっポ。
厚生労働省の資料によると、介護保険がはじまった2000年(平成12年)の末時点で約256万人だった要介護者・要支援者の人数は、2022年(令和4年)3月末には約690万人に増加しました。
つまり、何らかの支援や介護を必要とする人が22年間でおよそ2.7倍にも増えたということです。
■要介護・要支援認定者数の推移
*厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」より
(平成22年度の数値は東日本大震災の影響で福島県内5町1村が含まれていません)
要介護者・要支援者が増加した要因は主に2つ考えられます。
まずひとつめの大きな理由は高齢者の人数が増えたことです。65歳以上の高齢者数は2000年で2,204万人でしたが、2022年には3,627万人まで増加しました。1.6倍の増加です。
しかし、要介護・要支援者数は22年間でおよそ2.7倍も増えていることを考えると、高齢者の人数はそこまで増えたわけではありません。
認定者の割合は2000年で11.6%、2022年で19.0%となっており、要介護・要支援に認定された人の割合も増えているのです。
これは、介護保険制度の認知度が上がってきたことも理由のひとつでしょう。介護保険制度は2000年にはじまりましたが、当時は「介護を受けている状態は恥ずかしいこと」「介護は家族がするもの」と考える人も少なくありませんでした。
しかし高齢化が進むにつれて介護保険サービスの必要性が認識され、要介護認定を受けやすい環境になったという背景も影響していると考えられます。
つぎは要介護・要支援になった主な原因だっポ。
要介護・要支援者は右肩上がりに増えていますが、どんなきっかけで認定されたのでしょうか。
2022年の国民生活基礎調査(厚生労働省)では、要介護・要支援になった主な原因でもっとも多いのは「認知症」と報告されています。次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」、「骨折・転倒」と続きます。
さらに詳しく要介護度別で見ると、順位は以下の通りです。
第1位 | 第2位 | 第3位 | |
---|---|---|---|
総 数 | 認知症 | 脳血管疾患(脳卒中) | 骨折・転倒 |
要支援1 | 高齢による衰弱 | 関節疾患 | 骨折・転倒 |
要支援2 | 関節疾患 | 骨折・転倒 | 高齢による衰弱 |
要介護1 | 認知症 | 脳血管疾患(脳卒中) | 骨折・転倒 |
要介護2 | 認知症 | 脳血管疾患(脳卒中) | 骨折・転倒 |
要介護3 | 認知症 | 脳血管疾患(脳卒中) | 骨折・転倒 |
要介護4 | 脳血管疾患(脳卒中) | 骨折・転倒 | 認知症 |
要介護5 | 脳血管疾患(脳卒中) | 認知症 | 骨折・転倒 |
要支援1・2の介護が必要となった主な原因は、「高齢による衰弱」「関節疾患」「骨折・転倒」の3つです。
要介護1~5では「認知症」「脳血管疾患(脳卒中)」「骨折・転倒」の3つが主な原因で、要介護度ごとにその順番が入れ替わるだけとなっています。
認知症や脳血管疾患(脳卒中)で要介護状態になるのは想像しやすいですが、骨折や転倒で介護が必要な状態になってしまうのは少し意外かもしれません。
高齢になると骨がもろくなり、骨折しやすい状態になります。特に大腿骨を骨折すると、そのまま寝たきりになってしまう人も少なくありません。
介護が必要になった原因を男女別に見ると、男女で異なる結果が出ていました。
以下は2019年の国民生活基礎調査の結果です。
第1位 | 第2位 | 第3位 | |
---|---|---|---|
男性 | 脳血管疾患(脳卒中) | 認知症 | 高齢による衰弱 |
女性 | 認知症 | 骨折・転倒 | 高齢による衰弱 |
男女を見比べると、まず、要介護になった男性の原因として1番多いのが「脳血管疾患(脳卒中)」なのに対し、女性の1番多い原因は「認知症」です。「脳血管疾患」は女性の統計結果では5番目となっているので、いかに男性の脳血管疾患が多いかがわかります。
一概にはいえませんが、男性には高血圧や喫煙など脳血管疾患の危険因子をもつ人が多いからかもしれません。
つぎに、要介護となった原因が「骨折・転倒」だった女性が全体の16.5%いるのに対し、男性は5.8%に留まっています。女性には骨粗しょう症の人も多いので、転倒すると骨折する傾向が高いということでしょう。
同じように、「関節疾患」が原因の人についても女性は14.2%、男性は4.6%と開きがあります。なかでも、関節リウマチは男女比1:3.21で女性の方が多く、高齢で発症する方も多いようです。
介護の原因が何かによって、その後の身体状態も変わるっポ。
まず、認知症の場合は症状の進行が比較的緩やかです。ある日突然介護が必要になるというより、少しずつできないことが増えていきます。
認知症の人によくあるのが、昔のことは覚えているが最近のことが思い出せないといった症状です。そのため、会話も徐々に成り立たなくなります。
脳血管疾患の場合は、元気だった人が急に倒れるケースも少なくありません。脳のダメージによって症状もさまざまです。
身体に不自由が出る人だけでなく、意思疎通が図れなくなる人もいます。脳のダメージによっては、身体機能と認知機能の両方に後遺症が出ることも珍しくありません。
また、高齢による衰弱のケースでは、緩やかに症状が進みます。意思疎通には問題のない人が多く、身体機能も少しずつ衰えていくのでだんだんと不自由が発生するようです。
認知症や高齢による衰弱の場合は、本人はもちろん家族も少しずつ介護に対する心構えができるでしょう。しかし脳血管疾患の場合は、介護への心構えがないまま介護生活に突入するケースも多々あります。
そのため、介護する側にとってもされる側にとっても最善の介護方法を選択できるよう、日頃から介護に対して家族間で話し合っておくことが大事でしょう。
要介護になる主な原因がわかれば、ある程度の予防もできるっポ!
誰だっていつまでも介護を必要とせず、元気に暮らしたいものです。そのためには、介護を予防することが重要です。病気にかからないよう、うがいや手洗いをして予防するのと同じといえます。
いくつか紹介しましょう。
まず、生活の中に運動を取り入れることが介護予防につながります。
高齢者の場合は、毎日40分程度の運動が介護予防や認知症予防に役立つといわれています。
食生活の改善も介護予防には必要不可欠です。介護が必要になる原因のひとつ「脳血管疾患」は、高血圧や肥満などによって発症リスクを高めます。
そのため、塩分の高い食事や油っこい食事を控えることで脳血管疾患にかかりにくくなるといえるでしょう。
さらに、カルシウムやビタミンDを摂取することで女性に多い「骨粗しょう症」を予防できます。骨粗しょう症は転倒時の骨折を招くため、骨粗しょう症を予防することは介護予防にもつながるのです。
口腔機能の維持も介護予防にとって大事なポイントになります。なぜなら、食事は栄養を取る目的だけではなく人生の楽しみでもあるからです。
口の中を清潔に保ち、必要に応じて嚥下(えんげ:飲み込みのこと)体操を行うようにしましょう。
介護予防のためにもっとも大切なのは、外出したり趣味を楽しんだりして他人と触れ合うことです。高齢になると、外出が億劫になり閉じこもりがちになる人も少なくありません。
他人の目を意識して身だしなみに注意したり、他人と話をしたりすることは認知症予防につながります。ですから、なるべく外に出ることが大切なのです。
親族や友人と会ったり趣味の集まりに顔を出したり、地域のボランティアなどに参加するのもよいかもしれません。
要介護になる主な原因、第1位が認知症、2位は脳血管疾患(脳卒中)、3位は骨折・転倒でした。
高齢になっても介護を必要とせず、自分らしく暮らしたいものです。そのためには、早いうちから介護予防の意識をもつことが必要です。
要介護の原因となる病気にならないよう、適度な運動や栄養バランスのよい食事を心掛けましょう。外出や他人との交流、趣味を楽しむことも健康でいられる秘訣のひとつです。
著者:柴田 まみ
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