高齢者はレクリエーションでどんなことをするのかしら?
レクリエーションの目的や高齢者への効果、レクの種類などなど、意外に知らないことが多いかもしれないよね。
デイサービスの元スタッフがレクリエーションについて詳しく教えてくれるっポ!
デイサービスや高齢者施設でのレクリエーションには目的があるっポ。
デイサービスなどの介護施設で実施するレクリエーションは、ただの暇つぶしではありません。きちんとした目的があって行っています。
ADLとはActivities of Daily Livingの略で、日常生活動作のことです。つまり、歩行や排泄、食事や入浴などの行動を指します。
ADL向上といえばリハビリを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、レクリエーションもリハビリの一環なのです。
Quality of Lifeの略であるQOLは、生活の質を意味します。
QOL向上とは、生活の質の向上を図るものです。単調的になりがちな高齢者の生活のクオリティをどう向上させるかは、高齢者福祉の課題でもあります。
高齢者がレクリエーションを行うことで得られる効果を紹介するっポ。
目的にも挙げた通り、デイサービスのレクリエーションにはリハビリの要素も含んでいます。
たとえば、多くのデイサービスで実施されるカラオケには、歌を歌うことによって口まわりの筋力低下を防いだり、大きな声を出すために腹筋を使ったりする効果があります。
また、体を使ったゲームの場合は、普段動かすことのないような体の部位を動かせるので、手足の筋力アップに有効です。
このように、レクリエーションには高齢者が楽しみながらリハビリできるメリットがあります。
レクリエーションは体の機能を維持・向上する以外に、認知症予防にも効果的です。高齢者が大好きなカラオケも、文字を目で追うことが認知症予防につながるといわれています。
折り紙や塗り絵など、手先を使ったレクリエーションは脳トレにもなるので、認知症予防はもちろん認知症の進行を遅らせる効果が見込めます。
たとえば、ゲームの最中に同じチームの人を応援したり、ほかの利用者の手助けをしたりすることがあります。また、作った作品をお互いに見せ合ったり、褒め合ったりすることもあるでしょう。
これらはレクリエーションならではの光景ではないでしょうか。
デイサービスや高齢者施設の利用者にはお喋り好きな人がいる一方で、人と話すのが苦手な人もいます。そのような人でも、レクリエーション中は利用者同士で会話が盛り上がることが多いです。
レクリエーションには、ほかの利用者とのコミュニケーションのきっかけになるメリットもあります。人と関わることは脳の活性化にもつながるため、高齢者の認知症予防にも有効です。
レクリエーションって時間をつぶすためにやっていると思っていたわ!
ちゃんと意味があるのね。
レクリエーションには、具体的にどんな種類があるのかな?
体を動かすレクリエーションは、身体機能の維持・向上を目指す高齢者にとって重要なプログラムです。
体操と一口に言っても、ラジオ体操や音楽を使った体操などいろいろな種類があります。ただし座ってできることが前提なので、あまり難しい体操は行いません。
昔流行した歌や童謡など、誰もが知っている曲を使うことで楽しく体を動かせます。
体を使うゲームには、風船バレーや輪投げ、ボーリングなど多種あります。認知症の利用者でも理解しやすいよう、ルールが複雑でないゲームを行うことが多いです。
なかでもボールを使用するゲームは、腕はもちろん足にも力が入るので身体機能の向上に役立ちます。
また、お手玉を使った玉入れも人気です。投げる行為だけでなく、お手玉を握ることが手や指のリハビリにもなります。
認知症予防のため、頭を使ったレクリエーションに力を入れているデイサービスや高齢者施設もあります。
漢字ドリルや計算プリントなどに挑戦する「脳トレ」も人気があります。年齢を重ねると文字を読むことが億劫になる人も多いですが、デイサービスでの脳トレを楽しみにしている高齢者も少なくないようです。
自宅での自主的な脳トレはハードルが高いので、デイサービスで挑戦できる手軽さが喜ばれているのかもしれません。
クイズにもいろいろな種類がありますが、なぞなぞや漢字クイズは人気があります。たとえば、ホワイトボードに魚へんの漢字を書いて読み方を当てるクイズです。
「鰆(サワラ)」や「鱈(タラ)」など、魚へんの漢字はたくさんあるので大いに盛り上がります。
利用者のレベルに合わせて難易度を変えられ、誰でも参加できるレクリエーションが「しりとり」です。簡単なルールなので認知症の人でも楽しめます。
参加する利用者のレベルによって「食べ物のみ」や「3文字のみ」などの決まりを加えると面白さ倍増です。少人数で楽しめるのもメリットといえるでしょう。
手先を使う作業に思われがちな塗り絵ですが、実際は色を選んだり、はみ出さないように塗ったりと案外頭を使います。
有名な絵画を塗り絵にした「大人の塗り絵」も人気です。
男性よりも女性に好まれる傾向にあるのが、手先を使ったレクリエーションです。
細かい作業をすると脳が活性化するといわれています。
工作には作る楽しさはもちろん、完成したときの達成感を味わえるメリットがあります。
工作の内容は、完成したときのクオリティが高いものが喜ばれます。なぜなら、利用者自身が「作ってみたい」と思える作品でないと作業意欲が湧かないからです。
女性に人気があるのは、手芸や編み物です。細かい作業が好きな人は、黙々と作品作りに勤しんでいます。
紹介した以外にも、さまざまな分野のレクリエーションがあります。
若い頃に流行した音楽や映画をかけて、ゆっくりと過ごすこともあります。ほかの利用者との昔話に花が咲くレクリエーションです。
デイサービスの利用者のなかには、火の始末や包丁の扱いに不安があるため、自宅で料理をしないよう家族に言われている人もいます。そのような高齢者に喜ばれるのが料理です。
料理といっても、太巻き作りやホットケーキ作り、お好み焼き作りなど簡単な作業ではありますが、利用者にとってはやりがいがあるのでしょう。自分たちで作った料理をその場で食べられるのも嬉しいポイントです。
春のお花見や秋の紅葉狩りなどの季節は、遠足に行くこともあります。
認知症の人や車椅子の人などは外出の機会が減る傾向にあるので、季節を感じてもらったり、生活にメリハリを与えたりするのが狙いです。
運動と脳トレを組み合わせたレクリエーションは、認知症の発症を遅らせる効果が期待できるといわれています。
Cognition(認知)とexercise(運動)を組み合わせた造語「cognicise(コグニサイズ)」は、運動をしながら脳を使うプログラムです。
たとえば、足踏みをしながら声に出して数を数えます。加えて、3の倍数のときだけ手を叩くといったものです。
コグニサイズには明確なルールはないので、利用者が楽しみながら参加できるようレベルを調節して行います。
日本には四季に合わせて、さまざまな行事があります。デイサービスや高齢者施設では、季節を感じてもらえるようにレクリエーションのなかで季節のイベントを実施することが多いです。
たとえば、春は花見をしたり、夏は夏祭りを開催したり、秋は敬老の日に合わせて敬老会を行ったり、運動会を開催したりする施設もあります。冬のクリスマス会や節分の豆まきも定番です。
レクリエーションってこんなにたくさんの種類があるのね。驚いたわ!
高齢者が行うレクリエーションは、シチュエーション別に3つに分けられるっポ。
レクリエーションといえば、この集団レクリエーションを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。たとえば、音楽に合わせて体操をしたり、風船バレーをしたりといったものがこれに分類されます。
大人数で行うことで、ほかの利用者との関係が深まったり、張り合いになったりするでしょう。高齢者にとっては、人の目を意識することも認知症予防のひとつになります。
個別レクリエーションとは、一人ひとりのニーズに対応したレクリエーションのことです。具体的には、塗り絵をしたり手芸をしたり、囲碁をしたり、利用者の趣味嗜好によっていろいろなことを行います。
高齢者の身体機能や認知機能は人それぞれです。集団レクリエーションでは物足りないという高齢者もいるため、好きなことができる個別レクリエーションの時間も必要といえるでしょう。
日常レクリエーションとは、日常生活において楽しかったり心地よかったりといった時間を増やすものです。たとえば、施設内に花を飾ったり、食事の時間に昔流行した歌手の曲を流したりするなどが挙げられます。
時間を決めて行うだけがレクリエーションではなく、このような日常で簡単にできる方法もあります。
デイサービスのレクリエーションは、利用者数の多さによっても違いがあるみたいだっポ。
デイサービスのレクリエーションは、1カ月単位でプログラムが組まれています。
それぞれのデイサービスの特色に合わせて、レクリエーションの種類はいろいろです。
利用者数が多く、介護スタッフも多数配置されているようなデイサービスでは、クラブ活動のようにレクリエーションを行うところもあります。
「手芸をするグループ」「囲碁をするグループ」「ゲームをするグループ」など、いくつかのグループに分かれて個別レクリエーションを実施。利用者本人が興味のある分野のレクリエーションに参加できるので、デイサービスの通所がより楽しくなるでしょう。
また、地域のボランティアを招いて歌を歌ったり体操をしたり、楽器を演奏したりといったレクリエーションを行うこともあります。
一方、利用者の定員人数が少ない小規模デイサービスの場合は、集団レクリエーションを基本としてメニューを組むケースがほとんどです。
たとえば、午前中は塗り絵や工作のような手先を使ったレクリエーションを行い、午後は体を使う体操やゲームなどをします。
その日に通所する利用者の介護度によってできることの差はありますが、利用者全員が楽しめるように配慮して行うのが前提です。
そのほか、季節のイベントをしたり誕生会を開催したり、天候によっては散歩に出かけたりと、デイサービスでは利用者が楽しい時間を過ごせるように工夫を凝らしています。
大人数と個人ではレクリエーションの中身もだいぶ違うわよね。
デイサービスを探す機会があれば参考にするわ。
ここでは、レクリエーションが1カ月間どんなプログラムで行われるのか、元デイサービス職員の著者が事例を紹介するっポ。
デイサービスのレクリエーションは、1カ月のメニューで組まれています。とあるデイサービスが4月に行ったレクリエーションメニューを紹介しましょう。
4月1週目
午前:桜のタペストリー作り+嚥下体操
午後:体操+風船バレー、輪投げなど
4月2週目
午前:桜のタペストリー作り+嚥下体操
午後:体操+カラオケ、うちわバレーなど
4月3週目
午前:こいのぼりの壁画作り+嚥下体操
午後:体操+カルタ、卓上ホッケーなど
4月4週目
午前中:脳トレ+嚥下体操
午後:体操+玉入れ、ボーリングなど
※その月の誕生日者がいる日に、誕生会を実施
月初めの2週間は、季節の工作を行います。4月は桜の季節なので、桜の形にカットしたフェルトを使ってタペストリー作りをしました。
紙をちぎったり、ボンドを使って花びらを1枚ずつ貼り付けたりと手先を使った作業をするため、認知症予防に役立ちます。
作業中は真剣そのもので黙々と作業にあたる利用者が多かったのですが、完成した際には作品を利用者同士で見せ合うなどして盛り上がりました。
工作が終わった人から順に、5月に向けての壁画作りを行います。こちらのデイサービスでは毎月、入り口に飾る季節の絵を共同制作しているので、4月は「5月に飾るこいのぼりの壁画」をちぎり絵で制作しました。
折り紙を貼る作業が難しい利用者には、折り紙をちぎってもらったり、ウロコをクレヨンで塗ってもらったりして何らかのかたちで全員が参加できるような工夫をします。完成した際、利用者全員に達成感を味わってもらうためです。
4月最後の1週間は、脳トレ週間としてクイズやクロスワード、大人の塗り絵などを行います。さらに、その月の誕生日の人をお祝いするために誕生会を開催しています。
4月の誕生会では、みんなでクリームあんみつ作りを行い、利用者同士のコミュニケーションを深めました。
なお、食事の前に行う嚥下(えんげ)体操は口まわりや舌、飲み込みの運動をするもので、誤嚥(ごえん)を予防する目的があります。
嚥下機能や身体機能の維持・向上のために、嚥下体操と午後の体操は毎日実施するメニューです。
一方、午後に行う運動系のレクリエーションは、その日の利用者のリクエストや多数決によって決定します。
タペストリー作りに誕生会……なんだか楽しそうね!
レクリエーションの材料費に介護保険は適用されないため、費用は全額実費となります。また、遠足に行ったり外食したりといった場合は、別途交通費や食事代などもかかるでしょう。
詳しくは、各施設にお問い合わせください。
きっとレクリエーションに参加したくないっていう高齢者もいるっポ……。
嫌でも参加しなくちゃいけないのかな?
デイサービスや高齢者施設のレクリエーションは絶対参加ではありません。本人の意思を尊重し、参加したくない場合は無理強いをしないようにします。
そのうえで、どのようなレクリエーションなら参加してもらえるかをスタッフ間で検討します。
なかでも、男性利用者は「歌や体操などには参加したくない」と集団レクリエーションへの参加を拒否する人も少なくありません。その場合は本人の意向を確認し、囲碁や将棋、オセロなど個別レクリエーションへの参加を促します。
それでも参加してもらえないときは、テレビ鑑賞や読書など、本人にとって心地のよい時間を過ごしてもらえるようにします。
歌うことが嫌いな人がカラオケを強要されたり、やりたくないゲームを無理強いされたら嫌になっちゃうものね。
自分が好きなことをできるなら、はきっと楽しい時間になるわ。
デイサービスや高齢者施設で行うレクリエーションは、ADLやQOLの向上だけが目的ではありません。ほかの利用者とのコミュニケーションを図ったり、日々の生活にメリハリをつけたりする効果もあります。
なかには、レクリエーション活動を通して、生きがいを見つけ高齢者もいるほどです。
気になる方は、お好みのレクリエーション活動ができるデイサービスや高齢者施設を探してみてはいかがでしょうか?
*レクレーションの内容はデイサービスによって異なります。詳しくは各施設にお問い合わせください。
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