師走のさなか、訪問介護の利用者さんから事業所に1本の電話が。その内容は「訪問時間を1時間早めてほしい」というものでした。
ヘルパーはその理由を聞いて思わず感動。ですが実は裏があったようで……。
ヒントは大掃除?
冷えてきたと思ったらもう12月になり、あっという間に年の瀬。今年は誰もが新型コロナウイルスの影響で生活様式を変えざるを得ない1年となり、まだまだ気の抜けない状況が続いています。
ですがそんな中で、いたってマイペースな利用者さんも。それは我が訪問介護事業所とお付き合いして6年にもなる長谷部さん。
要支援2で生活援助を利用されています。特に数年前に視力が落ちてからは掃除にこだわっており、チリやほこりがよく見えないため掃除が得意なヘルパーさんを指名するほどでした。
12月後半の生活援助で利用者さんからの要望に目立つのが「大掃除」。
押入れやクローゼットの中、お風呂の天井や排気口、キッチンのしつこい油汚れなどをきれいにしてほしいとおっしゃる方が多いのですが、うちの事業所は契約時に「大掃除」名目の掃除はお断りしています(自費ではお受けしています)。
去年の年末、きれい好きの長谷部さんからも「時間を増やして大掃除をしてほしい」とお願いされましたがお断りしました。
今年も事業所に電話があり、「1時間早く来てください」とのこと。当日事情を聞くと「年の瀬くらいあなたに早く上がってもらいたかった」とおっしゃり、わたしはその言葉に感動してしまいました。
しかしその優しさは、自分の要望をヘルパーに受け入れさせるためエサ……なんと長谷部さんは「いつもやってる掃除はいいから」と、次から次へといつもと違う内容の大がかりな掃除を指示してきました。
「1時間はやく」という指示の真意は、わたしの終業時間を早めたいからでははなく、いつもと違う内容の掃除を任せるため。
ちょっと時間が押してもいいように早めておこうか、という長谷部さんの計算だったのです。
冒頭に「あなたのため」といった思いやりの言葉をかけられているので言い返しにくいものがあります。
それに、お願いされた掃除の内容はすべて事業所的にも時間があればやっていい「大掃除」ではないギリギリライン。断ることはできませんでした。
6年もヘルパーを利用しているだけあって、とても人の使い方が上手な長谷部さん。これは1本とられたな……という出来事でした。
漫画・コラム:藤木 なみき
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