「終活」はもうみんなが知っている言葉だっポ。でも、いつから何をはじめたらいいかわからない人も多いんじゃないかな。
そうだなあ、年寄りになったら終活するってイメージかな……。
そんなんじゃダメだっポ!終活カウンセラー1級取得の主任ケアマネが、いつから、どんな終活をしたらいいか解説するっポ!
終活という言葉は広く知られるようになり、興味を持たれる人も増えてきました。しかし、具体的なやり方やどのように進めていくのかまではよく知らないかもしれません。
終活でやること、いつからスタートすればいいのか、メリットなどをまとめたので、ぜひ終活をはじめる参考にしてください。
終活についてちゃんと知っているかな?
お墓や葬儀の準備を生前にすること……?
人生のエンディングに向けた準備――終活には、このようなイメージを持たれる方が多いかもしれません。
しかし本来の終活とは、単に最期の迎え方や葬儀、供養の希望を考えるだけにとどまらず、これまでの人生を振り返り、この先の人生を自分らしく生きていくための準備です。
自分が生きてきた軌跡をまとめた自分史を作成する、これから先の未来にやりたいことを見つけて悔いのない人生を送る、これらも終活に含まれます。
つまり終活とは、気がかりなことを解消し、これから先の人生を有意義に生きるための活動であるといえるでしょう。
終活って高齢者がするイメージを持つ人も多いかもしれないっポ。
そうだなー。自分が終活するっていう気はまだ起きないかな。
終活をはじめるきっかけは人それぞれですが、健康状態に不安を感じたから、身近な人の死や病気を経験したから、人生の節目で必要性を感じたから、といった声が実際に聞かれます。
先ほどご説明した通り、終活はネガティブなものではありません。
認知症や病気などで自分の意思を伝えられなくなるかもしれない、年老いたので亡くなる前に身辺整理をしたい、といった高齢者の不安からはじめるものではなく、終活は若いうちからのスタートが望ましいものです。
しかし若いうちから取り組んだほうがよいとは言っても、いつ終活をスタートすべきかといった明確な時期があるわけではありません。
その人が置かれている状況や年齢によって、整理すべきこと、考えておくべきことの優先順位は違います。
終活の第一歩は、“整理すべきこと、考えておくべきこと”を元気なうちから考えることです。ですから、20代や30代が終活に早すぎるということは決してありません。
とはいえ20代や30代だと、人生について考えるにはまだ年齢が若すぎるとも考えられます。
そこで、終活がおすすめの年代はズバリ40代です。
40代は“いろいろなもの”が増えてくる頃です。昔は使っていたけれど今はもう使用しないものもあるでしょう。
ものだけでなく、保険や財産、人間関係などの整理が必要だと感じはじめるのもこの頃です。
また、40代が終活をすると、親に対して終活を勧めやすくなります。
40代の親世代には60~70代あたりが多く、まだ比較的元気で終活の必要性を感じていない方も少なくありません。
子どもはよかれと思って親に終活をお願いするのですが、「死ぬのを待っているのか」とトラブルになった、その後頑なに拒否された、といった話はよく聞きます。
しかし、先に子どもである自分が終活をしていれば、親に終活のよさを伝えられますし、死ぬのを待っていて勧めているのではないと理解してもらいやすくなるでしょう。
40代に限らず、親に終活を勧めたいと考えているなら、まずは自分がはじめてみることをおすすめします。
終活には、本人だけでなく家族にもたくさんのメリットがあるっポ。
メリットだけじゃなくて、終活にはデメリットもあるのかな?
将来、介護や医療が必要になったとき、必ずしも自分の考えや意思を伝えられる状況とは限りません。
延命治療やどのような介護を受けたいと考えているのかなどの希望をまとめておけば、家族に自分の意思を尊重した代弁をしてもらえます。
もし自分に不測の事態が起きたら、家族は短い時間でいろいろな準備をする必要がありますし、金銭的な負担も生じます。
万が一に備えて、身の回りのものを減らして何が大事かを明確にしておく、株や預貯金などの財産を整理しておく、自分の入るお墓や葬儀、供養の段取りをしておくことで、家族の負担を減らせます。
遺産相続での揉めごとは、裕福な家だけで起こるものではありません。
2019年(令和元年)度の相続に関する訴訟のうち、およそ77%は資産5,000万円以下のケースで、34%は資産1,000万円以下で起こっています*。
お金の問題で家族仲が悪くなるケースは決して珍しくありません。
自分の遺産を巡って家族が揉めるのは避けたいところです。
そのためには、法的な効力のある遺言書などに自分の意思をきちんと残して、家族に理解を求めることが不可欠です。
ちゃんと終活しようと思ったら、やることがけっこうたくさんあるんだっポ。
終活でやることを具体的に知りたいな。
終活でやることは多岐にわたります。
そのときに自分が置かれている状況に応じて進めましょう。
相続に関することは必ず遺言書に残しておく必要があります。
しかし、遺言書は書き方にルールがあり、それが守られていないと法的な効力がなくなるため、専門家のアドバイスを受けるなどして不備がないようにしておきましょう。
遺言書には、預貯金や不動産など相続に関することだけでなく、形見分けや、大事にしているものの扱いについての記載も可能です。
生前整理とは、元気なうちに身の回りのさまざまなものを整理しておくことです。
もう使わないものや不要なものは、生きているうちに処分します。
なぜなら、自分が亡くなったあとに多くの遺品があると、家族に処分する労力や精神的・金銭的な負担をかけてしまいかねないからです。
また、預貯金や株、不動産、保険など、保有している財産をリストアップし、その内容を確認することも大事です。
特に、最近使用していない銀行口座は解約の手続きする、保険の補償内容は現状に見合っているか、受取人を変更する必要ないかを見直しておきましょう。
このほか、友人の連絡先や契約しているものの情報を整理し、自分の身に何かあったときに家族が分かるようにしておくのが望ましいでしょう。
終活年賀状とは、「年賀状を出すのは今年を最後にする」と伝えるもので、最近では終活年賀状を書く人が増えています。
終活年賀状を書く理由としては、年賀状を書くことを負担に感じてきた、人間関係の整理をしたいなど、人それぞれです。
注意点としては、いきなり終活年賀状を受け取る側の気持ちをくみ取る配慮も必要です。
「年を取り年賀状の作成が難しくなって参りました」など、なぜ終活年賀状を送るに至ったかの理由を簡単に書いておくとよいでしょう。
少子化の現在では、お墓を子孫が受け継ぎ守っていくという従来のスタイルが難しくなっています。
そのため、故郷にある先祖代々のお墓は墓じまいされる方も少なくありません。
子孫に負担をかけたくない場合や、おひとりさまなどで自分のお墓を守ってもらうことが難しい場合には、永代供養料を支払って決められた供養をしてもらうなどの方法があります。
また、自分が入りたいお墓があれば、生前にお墓を購入してもいいでしょう。家族にお墓参りをしてもらうのか、永代供養を希望するのかなど供養の方法も考えておきましょう。
葬儀はもともと、残された遺族が故人のために行うものとされていました。
しかし今では、自分らしい葬儀にするために情報を集め、どのように送られたいかを生前に決めておく人も増えていますし、なかには契約まで済ませる人もいます。
葬儀には、昔ながらの葬儀から、ごく親しい身内だけで行う家族葬、葬儀・告別式を行わない直葬(火葬式)などいろいろなかたちがあります。
希望がある場合は、生前に決めておくとよいでしょう。
遺影写真は葬儀などでたくさんの人の目に触れるものです。
自分らしい表情やお気に入りの服装で撮った写真を、遺影写真として準備しておきます。
手持ちの写真の中から遺影写真として使用してもらいたいものを選んでも構いません。
また、あらかじめプロのカメラマンに撮影してもらうのもよいでしょう。
パソコンやスマートフォンが普及する現在では、本人しか知らないアカウントの情報管理が問題になっています。
特に、会費など金銭の支払いが発生しているサイトやアプリの情報は、万一のときに家族が分かるようにしておきましょう。不要なサイト・アプリであれば退会しておきます。
また、写真データの取り扱いについては「写真は見ないですべて削除してほしい」など、希望を残しておくようにしましょう。
自分史は、これまで自分がどんな人生を歩んできたのかを記録にまとめて、後世に残していくものとされています。
しかし、自分史を作成するメリットはそれだけでなく、過去の自分がどんなことを考え、何が好きだったのか、何を目指していたのかなどを客観的に見つめ直すことができます。
それにより、自分らしい人生とはどのようなものか、まだ実現できていないことは何かなどの整理がつき、この先やりたいことが見えてきやすくなるのです。
早い段階での人生の棚卸しは、自分らしい後悔のない人生を送る手助けになるでしょう。
病気や加齢などで体が動かなくなる前に、自分の時間を持てるようになったタイミングではじめるのがよいと思います。
これからの人生を有意義にしていくために、自分史の作成はおすすめです。
エンディングノートとは、自分についての情報や希望などをまとめて書き記しておくものです。
エンディングノートに書く内容に決まりはありませんが、医療や介護、葬儀、お墓などに対する希望や意向を記しておきます。
また、遺言書を作成しない場合には、家族の知らない財産がないよう、相続に必要な財産についても記載しておくとよいでしょう。
<エンディングノートに記載する内容>
など
これらをエンディングノートにひとまとめにしておけば、自分にもしものことがあった場合も安心です。
家族は必要な情報や意向を知ることができ、残された人の負担軽減につながります。
終活はやることがたくさんあるから進め方に迷っちゃうかもしれないっポ。
うーん。何からはじめるべきかな?
「でも終活は何からはじめたらいいの?」と迷ったら、まずはエンディングノートを書いてみるとよいでしょう。
エンディングノートは店頭やネットなどで入手できますが、市販されている普通のノートなどに必要な項目を書きだすだけでも構いません。
エンディングノートに書きこんでいくことで自分の情報の整理ができ、何を一番にするべきか、何が気がかりなのかなどが見えてきます。
そして何からはじめるかが決まったら、いつまでに完了するのかを計画して実行します。
専門的な知識が必要な遺言書や保険の見直しなど、内容によっては専門家と相談しながら進めましょう。
また、手間や労力のかかる終活を1人ですると挫折してしまう人も多いです。
励まし合いながら進められるように、配偶者や家族、友人など誰かと一緒に行う終活もおすすめです。
終活を何からはじめるかは人それぞれです。
その人の置かれた状況によっても異なりますし、複数の終活を同時に進行することもあるでしょう。
終活には時間も労力もかかります。もしかしたら途中で投げ出したくなるかもしれません。
最初は簡単に取り組める情報の整理などからはじめて、あせらず計画的に必要な終活を進めていくようにしましょう。
また終活は、身の回りの整理や万一のときの準備にとどまらず、自分がやり残していることを明確にし、残りの人生で何をやっていくのかを見つけることにもつながります。
この先有意義な人生が送れるよう終活にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
*司法統計(裁判所)
著者:寺岡 純子
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