高齢になると、面倒だったり大変なことが増えるよね。
高齢者が生活のなかで感じるおっくうなことと、その解決策を探るっポ。
厚生労働省によると、日本人の平均寿命は女性87.74歳、男性81.64歳と、過去最高を更新しました(令和2年簡易生命表より)。
しかし誰もが心身共に元気で長生きできるわけではなく、年齢を重ねると生活のなかに困りごとが増える高齢者も少なくありません。
高齢者は一体どのようなことを面倒に感じ、困っているのでしょうか。
株式会社日本能率協会総合研究所による調査データをもとに、高齢者が生活のなかでおっくうだと感じていることと、その対策を考えてみましょう。
年をとると若いときのように体が動かないことも…。
いろんなシチュエーションで意欲が低下しやすいっポ。
高齢者は持病や障害などの身体的な理由によって、日常生活で「困ること」が増える傾向にあります。また、年齢を重ねるとともに体力や筋力の低下を実感する人も少なくありません。
「今までは問題なくできたのに」と思っていてもできないことが増える人や、外出などを面倒に感じる意欲低下に悩む人も多くいます。
高齢者が普段の生活で感じるおっくうなことを紹介するっポ。
高齢者は、生活のなかで何を面倒くさがり、「大変なこと」と感じているのでしょうか。
株式会社日本能率協会総合研究所は、「高齢者未充足ニーズ調査 2019年」で「高齢者が生活の中で直面する57項目の代表的な困りごと」の調査結果を発表しています。
調査に回答したのは、日本全国の60歳から90歳までの男女2,500名。
今回はそのなかの「普段の生活で感じるおっくううさ」12項目を紹介しつつ、要介護者のケースも含めて考えられる解決策を紹介しましょう。
高齢者のなかには筋力や体力が低下し、長距離を歩くのを面倒くさがる人もいます。
その場合は、徒歩以外で目的地まで行く手段がないか検討してみるのがよいでしょう。バスが使えそうならバスを利用し、歩く距離を短くする方法もあります。
ただし、歩くことは良い運動になるため、一概に歩かないことが良いとも言えません。
長い距離を歩きやすいよう、杖やシルバーカーなどの福祉用具を利用する方法もおすすめです。
外出を面倒くさがる高齢者は少なくありません。
その証拠に、内閣府が発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果」によると、「日常的に外出したいか」というアンケートに「外出したい」と答えた高齢者が 61.3%いる一方で、「あまり外出したいとは思わない」「外出したいとは思わない」と答えた人が合わせて32.3%いました。
コロナ禍の現在であれば、もっと増えている可能性もあります。
高齢者の引きこもりは、筋力や認知機能の低下を招くうえ生活の質(QOL)を下げるため、高齢者にはなるべく外出してほしいものです。
外出を面倒に感じる人は、まず近所の散歩を日課にしてはいかがでしょうか。要介護認定を受けている人は、デイサービスを利用する方法もあります。
高齢者のなかには食事の準備を面倒に感じ、簡単なもので済ませてしまう人もいます。しかし、食事は体の資本となるので栄養のあるものを摂取したいところ。
食事の準備が面倒な人には、栄養バランスが考えられた食事を自宅まで届けてくれる配食サービスの利用がおすすめです。なかには、減塩食や糖尿病食などにも対応してくれる事業所があります。
地域によっては、高齢者の安否確認を兼ねて配食サービスを提供している自治体もあるため、役場に問い合わせてみるとよいでしょう。
要介護認定を受けている人は、訪問介護サービスを利用してホームヘルパーに調理してもらうのもひとつの方法です。
部屋の掃除はもちろん、浴室やトイレ、換気扇などの掃除を面倒に感じる高齢者も多いです。
日常生活を送るうえで必要な部屋や浴室、トイレ掃除などは介護保険の対象になるため、要介護認定を受けている人は訪問介護を利用する方法があります。
一方、換気扇や仏壇の掃除などは介護保険の給付対象にならないので注意が必要です。それらの掃除を頼みたいときは、民間のサービスを利用しましょう。
安価とはいえませんが、民間のサービスであればエアコンのフィルター掃除や車の洗車なども依頼できます。
濡れて重くなった衣類を運び、腕を伸ばして干さなければならない洗濯は、高齢者にとって重労働と言えるのではないでしょうか。そのため、洗濯を面倒に感じる高齢者も少なくありません。
洗濯を重労働にしないためには、少ない量をこまめに洗うことが大切です。まとめて洗濯すると、運ぶのも干すのも大変な作業になります。
近所にあれば、コインランドリーを利用する方法もおすすめです。
また、民間のサービスのなかには、自宅まで洗濯物を取りにきて洗濯後届けてくれるようなサービスもあります。高齢者の安否確認にもなるため、このようなサービスを検討するのもよいでしょう。
要介護認定を受けている人は、訪問介護を利用するのもひとつの手段です。
力の弱い高齢者が重い布団を運び干すのは大変なこと。そのため、布団を干すことを面倒に感じる高齢者が多いのも仕方ありません。
布団を自分で干さずに清潔を保つ方法は3つあります。
1つ目は、ベッドにして布団ではなくマットレスを使う方法です。マットレスであれば、ベッドパットやシーツを洗濯するだけで清潔を保てます。
2つ目は、布団乾燥機を利用する方法です。布団乾燥機には、ホースを布団の中に入れるだけで乾燥できるタイプもあるため、高齢者でも簡単に操作できます。
3つ目は、自治体の寝具洗濯乾燥サービスを利用する方法です。ただし、寝具洗濯乾燥サービスは地域によって提供の有無が異なるため、役場に確認しましょう。
高齢者には、入浴を嫌う人が多く見られます。理由は人それぞれ違いますが、「寒いから」「転びそうで怖いから」「面倒臭いから」などと話す人がほとんどではないでしょうか。
寒いという理由で入浴を面倒に感じるのであれば、脱衣所に暖房器具を備えたり、浴室内をシャワーで暖めたりする方法が有効です。
脱衣所や浴室を暖めることは、ヒートショックを防ぐ効果もあります。
一方、安全面が不安でおっくうだと感じている場合は、手すりを付けたり、滑りにくい椅子などを用意することがおすすめです。
要介護認定を受けている人は、デイサービスや訪問介護を利用して安全に入浴する方法もあります。
入浴そのものが面倒くさいのであれば、温泉の素といったお気に入りの入浴剤を使って非日常感のある演出をしてみてはいかがでしょうか。
店舗まで歩き、重い荷物を運ばなくてはならない買い物を面倒に感じる高齢者も珍しくありません。
そのような人におすすめしたいのが、ネットスーパーや食料品の宅配サービスです。
ネットスーパーと聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、パソコンやスマートフォンの操作が可能なら簡単に注文できます。
パソコンやスマートフォンが使えない人は、カタログで注文するタイプの宅配サービスがおすすめです。
どちらも自宅まで商品を運んでくれるので、重い物を自分で運ぶ必要もありません。
要介護認定を受けている人は、訪問介護を利用して買い物をしてもらう、もしくは買い物に付き添ってもらう方法もあります。
ひげそり・化粧が面倒に感じるのであれば、ぜひ外出する機会を作りましょう。他人に見られることで、身だしなみに気を使うようになるはずです。
身だしなみを整えることは、認知機能の低下を防ぎ、認知症予防への効果も期待できます。
外出する際はなるべく人に会い、人の目を意識することが大切です。要介護認定を受けている人は、デイサービスを利用するのもよいでしょう。
なお、ひげそりは「朝食後に必ずひげを剃る」「〇時になったらひげを剃る」など、日課に取り入れるのも効果的です。
おしゃれが面倒だと感じる理由は2つ考えられます。
1つ目は、見せる人がいないからという理由です。
おしゃれをした日は誰かに見てもらいたい、褒めてもらいたいと思う人も多いのではないでしょうか。外出する機会の少ない高齢者の場合、おしゃれをする気持ちがなくなるのも仕方のないことです。
おしゃれをして出かける機会をつくると、自然と気合いが入ります。
2つ目は、おしゃれをしても似合わないという理由です。
高齢者のなかには「何を着ても似合わないから鏡を見たくない」と話す人もいます。その場合は、プロや家族の手を借りてみてはどうでしょう。
たとえばヘアスタイルであれば、美容師におしゃれな髪形にしてもらったり、自分でできるスタイリングをアドバイスしてもらったり。
洋服のコーディネートであれば、家族や洋品店の店員にアドバイスをもらうなどすると、おしゃれのきっかけになるかもしれません。
玄関先やベランダ、庭などの掃除や手入れはしゃがみ込んでの作業が多いため、膝や腰に痛みを感じやすい高齢者もいるでしょう。特に、庭の草むしりを面倒くさがる人が多いようです。
ただ、玄関先やベランダ、庭の掃除や手入れは、生活を送るうえで必要不可欠なものではないため、介護保険の給付対象外になります。
玄関先やベランダ、庭の掃除などは、民間のハウスクリーニング業者やシルバー人材センターなどに依頼する方法がおすすめです。植木の剪定や防虫対策なども対応してくれます。
高齢になると体力低下や持病、障害などによって、体を動かすことが面倒だと感じる人が増加します。
しかし、体を動かさないでいると、さらなる体力低下や筋力低下を生むといった悪循環に陥りやすいので注意が必要です。
体を動かさずに家で引きこもっていると、認知機能が低下するおそれもあります。
「運動」と聞くと大変そうに感じるかもしれませんが、「家の周りを歩く」「ストレッチをする」「毎朝ラジオ体操をする」程度の運動ならどうでしょう。運動のハードルがぐんと下がりませんか。
大切なのは続けることです。まずは歩くことから一歩踏み出してみましょう。
高齢者のなかには、人に頼むことを情けない、恥ずかしいと思う人もいます。
しかし、高齢者の生活を助けるサービスはさまざまあるので、面倒くさい、大変だと感じてできない家事などは無理せず人の手を借りることも必要です。
また、おっくうだと感じる外出や運動、おしゃれなどは、ほんの少し意識を変えるだけで生きがいに変わることもあります。
人生100年時代の今、高齢者の困りごとが改善し、豊かな毎日が送れるとよいですね。
著者:柴田 まみ
こちらもおすすめ
新着記事