介護ではどんなことを大変と感じている人が多いのかな?
ランキング形式で紹介するっポ。
たしかに介護には大変なイメージがあるわね。
介護をする上で「大変なこと」とは、具体的にどのような内容でしょうか。介護経験者を対象にしたアンケートをもとに、介護で大変なこととその解決策を解説します。
現在介護をしている人はもちろん、介護に対する不安を抱える人も参考にしてください。
介護で大変なことランキングには男女で差があったっポ。
2021年、医療法人社団風林会リゼクリニックが、40~50代の男女1,100名を対象に「老後と介護」についてのアンケートを実施しました。
なかでも、介護経験者に聞いた「介護で大変なこと」への回答は、男女で回答結果が異なる興味深い内容です。
介護で大変なことは排泄や食事の介助だと答える男性に対し、女性はコミュニケーションや精神面への苦労を挙げました。
大変なこと | 全体 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|---|
1位 | 相手とのコミュニケーション | 51.7% | 39.8% | 59.7% |
2位 | 排泄の介助 | 46.1% | 40.9% | 49.6% |
3位 | 精神面 | 42.7% | 28.0% | 52.5% |
4位 | 時間面 | 41.4% | 34.4% | 46.0% |
5位 | 食事の介助 | 38.4% | 40.9% | 36.7% |
6位 | 入浴の介助 | 32.8% | 34.4% | 31.7% |
7位 | 経済面 | 29.7% | 26.9% | 31.7% |
8位 | 徘徊 | 16.8% | 16.1% | 17.3% |
9位 | 身だしなみのケア | 14.7% | 14.0% | 15.1% |
10位 | とくにない | 6.9% | 9.7% | 5.0% |
それぞれどのような点が大変なのか、次でワースト5について細かく解説します。
介護はデリケートなことだから、コミュニケーションに不安はあるわね。
「介護で大変なこと」を解決へ導くヒントを介護士が教えるっポ!
ここからは、介護経験のある40~50代の男女が大変だと感じる具体的な内容と解決策を、アンケート結果に沿って解説します。
51.7%(男性3位:39.8% 女性1位:59.7%)
男性では3位に、女性では1位に選ばれた「相手とのコミュニケーション」は、相手との関係性に大きく影響されます。
たとえば、実の両親を介護するのと義理の両親を介護するのとでは、コミュニケーションのとり方も異なるのではないでしょうか。
実の両親なら言えることが義理の両親には言えない、そのようなケースはとても多いです。
そうはいっても、介護は長期戦。きれいごとでは済みません。
第三者に間に入ってもらうなどし、お互いのストレスにならないよう、言うべきことは言い合える関係づくりを心がけましょう。
また、年を重ねることによって、性格が変わる高齢者も珍しくありません。温厚な性格だった親が頑固になる、社交的だった人が内向的になるといった変化もあるでしょう。
その場合、今までとは違う対応が必要になるため、介護者が戸惑うことも多いようです。
さらに、認知症によってコミュニケーションがとりにくくなるケースもあります。親が認知症になると、「お母さんはこんな人じゃなかったのに」と落ち込む子どもも少なくありません。
要介護者とコミュニケーションをとる上で大切なのは、今目の前にいる要介護者に寄り添い、昔と比べないことです。
特に認知症患者の場合は、その時々で言動が変わるため、臨機応変の対応が求められます。介護者は、言われたことを1から10まで受け止めるのではなく、受け流すスキルも必要になるでしょう。
46.1%(男性1位:40.9% 女性3位:49.6%)
同アンケートで「介護未経験者がもっとも不安なこと」の1位にランクインした「排泄介助」は、介護経験者の「大変だったこと」でも2位にランクインしました。
排泄介助とひと口にいっても、トイレへの誘導が必要な人、ポータブルトイレを使用する人、おむつを着用する人とそれぞれに介助方法は違います。
しかし、ニオイや汚物の処理などはどの排泄介助にも共通することなので、介護者の悩みのタネになりがちです。
要介護者本人と介護者、両者にとって排泄介助が大きな負担にならないよう、介護用品をうまく利用してストレスを軽減しましょう。
たとえば、トイレまで間に合わないことがある親には尿取りパッドや紙パンツを使用してもらえば、着替えや汚れ物の洗濯の手間を減らせます。
また、夜中に何度もトイレ誘導しなければならない親には、ポータブルトイレを利用してもらえば夜間のトイレ誘導が楽になるはずです。
紙おむつの中には、夜中の交換がいらない吸収量の多いものから、座ったままで交換できるパンツ式までさまざまなタイプがあります。
自分の親に合ったおむつを選ぶことで、家族の負担を軽減できるでしょう。
なお、介助に関する悩みは、担当のケアマネジャーに相談するのがおすすめです。きっと、プロ目線の適切なアドバイスがもらえます。
42.7%(男性6位:28.0% 女性2位:52.5%)
介護経験のある女性の半数以上が、介護では精神面が大変だと答えました。
実際、介護の仕事をしている介護職員からも「介護は、肉体的な疲労よりも精神的な疲労の方がつらい」との声はよく耳にします。
特に、在宅介護をする家族には、1日中、気が休まらないと悩む人も多いのではないでしょうか。
そのような場合は、介護サービスのレスパイト利用がおすすめです。レスパイト(respite)とは、直訳すると「休息」や「息抜き」を意味する言葉で、介護サービスの利用による介護者の負担軽減を目的としています。
デイサービスやショートステイなどを利用することで、介護者の肉体的な疲労はもちろん、精神的な疲労も癒すことができるでしょう。
自分だけで悩みを抱え込まず、担当のケアマネジャーに相談してみてください。
41.4%(男性4位:34.4% 女性4位:46.0%)
親の介護をする世代には、まだまだ働き盛りであったり、子育て中だったりする人もいるため、時間のやりくりが大変だと答える人もいました。
なかには、親の介護をするために退職を余儀なくされた人もいるでしょう。
介護は身体介護だけでなく、準備や後片付けにも時間がかかるのです。
たとえば、トイレ介助が必要な場合、まずトイレに行くために要介護者をベッドから起こしたり、イスから立たせたりしなくてはなりません。
それからトイレまで誘導し、トイレに座ってもらったら排泄が終わるまで待ちます。このとき、トイレに間に合わなかった場合は着替えの介助も必要です。
トイレが終わったら、洗面所に誘導し手を洗います。そして、部屋やベッドまで誘導したら、やっとトイレ介助が完了するのです。
このように、介護は排泄ひとつをとっても手間と時間がかかります。
介護にかける時間が足りないと感じる人は、ホームヘルパーやデイサービスの利用がおすすめです。
ホームヘルパーに介助を依頼したり、デイサービスに通所したりしている間は、介護者も安心して自分の時間が過ごせるでしょう。
そのほか、要介護者にリハビリを頑張ってもらい、自分でできることを増やしてもらうといった方法もあります。
38.4%(男性1位:40.9% 女性5位:36.7%)
介護経験者の4割近くの人が「食事の介助」を大変なこととして認識しているようです。
食事介助は、一般的に介護度が上がるごとに大変になります。
介護度が低い人であれば、少し手伝ったり、食材を小さくカットしたりすれば自分で食べられるかもしれません。
しかし、介護度が高くなるとミキサーでペースト状にしたり、トロミを付けたり、食べさせたりしなくてはならなくなります。
食事介助を大変に感じている人には、ホームヘルパーや福祉用具の利用がおすすめです。
要介護者が食べる食事の調理や介助をヘルパーに頼んだり、要介護者が自分で食べられるよう自助具を使ったりすることで、介護者の負担を軽減します。
最近では、100円ショップにも「介護用スプーン」や「ストローキャップ」などの介護で使えるグッズが売られているので、試してみてはいかがでしょうか。
介護サービスや福祉用具の利用、心構えが大事になりそうね。
在宅介護を続けるなら保険外サービスも利用を検討したいところだっポ。
2020年に公表された三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、要介護者が在宅生活を継続するために充実が必要なサービスのランキングは以下でした。
1位 | 移送サービス(介護・福祉タクシー等) | 19.7% |
---|---|---|
2位 | 外出同行(通院、買い物など) | 18.5% |
3位 | 見守り、声かけ | 13.7% |
4位 | 掃除・洗濯 | 13.0% |
5位 | 配食 | 12.2% |
6位 | 買い物(宅配は含まない) | 10.4% |
7位 | 調理 | 9.4% |
8位 | ゴミ出し | 9.3% |
9位 | サロンなどの定期的な通いの場 | 7.6% |
「介護タクシーなどの移送サービス」、「通院や買い物などの外出同行」、「見守り、声かけ」が上位を占め、要介護3以上では特に移送サービスを必要だと感じる人が多くなる傾向にありました。
要介護3以上になると自力歩行が難しくなったり、車椅子を利用したりする人も少なくありません。
その結果、一般的なタクシーや家族の運転する車では外出しづらくなり、移送サービスや外出同行のニーズが高くなるのでしょう。
なお、保険外サービスなら、通院だけでなく映画や花見といった娯楽のための外出にも利用できるメリットがあります。
日常生活に必要なサービスを求めている人が多そうね。
家族ができるだけ肉体的・精神的なストレスを抱えないためにはどうしたらいいのかな?
家族が在宅で介護をする際には、要介護者と介護者が共倒れにならないための心構えが重要になります。
ここからは、介護者のストレスや負担を軽減するための心構えや注意点を紹介しましょう。
介護をする人には、責任感の強い性格の人が多い傾向にあります。そのため、介護の悩みや大変さを抱え込むことも少なくありません。
結果、介護者が倒れてしまったり、精神的に参ってしまったりするケースも珍しくないのです。
ゴールの見えない介護は、できるだけ多くの人と協力して行うことをおすすめします。自分一人では難しい問題も、家族や親戚で話し合ったら解決するかもしれません。
まずは、身近な人に悩みを打ち明けましょう。
「介護が必要かも」と感じたら、介護サービスの利用を検討します。介護保険サービスを利用するには介護認定を受ける必要があるため、まずはお住まいの自治体に相談しましょう。
介護度がついた場合は、介護のプロであるケアマネジャーが一人ひとりの要介護者を担当します。
今、要介護者と介護者がどのようなことに苦労しているのか、また、どのようなサービスが適切なのかをケアマネジャーと話し合い、家族の負担軽減を図ります。
介護離職(退職して介護に専念すること)を防ぐためにも利用を検討したいところです。
在宅介護をしていると、24時間気が抜けません。そのため、介護者には肉体的な疲労だけでなく、精神的な疲労も蓄積します。
介護者には、ストレスを発散できる時間が必要です。家族と交代で介護をしたり、デイサービスやショートステイを利用したりして、介護者は自分の時間を確保しましょう。
たとえ、短時間であっても介護から離れる時間があればリフレッシュできます。また、無理をせず休むことも大切です。
介護者の中には、睡眠不足に悩まされる人も多いのではないでしょうか。
睡眠不足は体調を崩したり、判断力が低下したりする恐れがあるため、介護者はなるべく睡眠時間をとれるよう介護方法を工夫しましょう。
たとえば、夜中におむつ交換をしている人は、吸収量の多いおむつに替えることで交換の回数を減らせるかもしれません。
また、認知症などによって昼夜逆転している親には、デイサービスなどを利用してもらい生活にメリハリをつけることで、夜ぐっすり寝てくれる可能性もあります。
夜間の介護サービスを検討するのもおすすめです。
介護をする家族は無理をしないことがポイントみたいね!
介護には、大変なことが多々あります。終わりの見えない介護は、自分だけで抱え込まず周りの手を借りることが何より大切です。介護者がつらいと、介護をされている人もきっとつらく感じます。
お互いに負担のない方法を検討し、頑張りすぎない介護を目指しましょう。
著者:柴田 まみ
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