要支援の認定を受けた高齢者らを対象とする介護予防支援のケアマネジメントについて、厚生労働省は居宅介護支援事業所により多くの業務を担ってもらう方向で検討を進めていく。
求められる役割が増えている地域包括支援センターの負担を軽減し、地域全体を見据えた連携・調整や相談対応などの機能の強化につなげる狙い。9日、2021年度の制度改正に向けた協議を重ねている社会保障審議会・介護保険部会で意向を示した。
年内にも具体策の大枠を固める。必要に応じて次の報酬改定をめぐる議論でもテーマの1つとする構えだ。
厚労省によると、ニーズの拡大を背景に包括が受ける相談の件数は年々増加している。センター1ヵ所あたりでみると、2017年度は2601件。3年前の2014年度(2368件)と比べて233件多くなっている。土日・祝日に開所するところも以前より増えた。
このほか、地域ケア会議の開催や困難事例の対応、高齢者の権利擁護など果たすべき職責は幅広い。最近では、介護離職を防ぐ家族支援や「8050問題」への関与なども期待されるようになった。多くの関係者は既に、「業務が過大になっている」との認識を共有している。
厚労省のデータによると、個々の包括が介護予防支援のために費やしている時間の平均は、全体の業務時間を100とすると28.0%。総合相談や一般介護予防事業などを抑えて最も長くなっている。「これをなんとかすべきではないか」との問題提起は、過去の審議会で度々なされていた。
厚労省はこの日の会合で、「要支援者などに対する適切なケアマネジメントを実現する観点から、外部委託は認めつつ、引き続き包括が担うことが重要」との基本スタンスを説明。そのうえで、「外部委託を行いやすい環境の整備を進めることも重要」との考えを明らかにした。
多くの委員が厚労省の考えに賛同する態度をとった。目立ったのは委託料に関する意見だ。
2017年度の調査結果では、介護予防支援全体に占める委託件数の割合は47.7%と報告されている。現行の介護予防支援費は431単位。これで賄える委託料を設定しているところが多い。
全国老人福祉施設協議会の桝田和平経営委員長は、「かかる労力に比べて委託料が安すぎるという問題がある」と指摘。UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの久保芳信会長は、「居宅が仕事を受けやすくなるように委託料の改善が必要」と注文をつけた。また、全国町村会を代表する長野県川上村の藤原忠彦村長は、「要介護のケアマネジメントと同程度とするなど、報酬の見直しが必要」と要請した。
より思い切った施策を講じるよう求める声も相次いだ。
日本医師会の江澤和彦常任理事は、「介護予防支援の業務を包括から居宅に移してはどうか」と提案。日本介護支援専門員協会の濱田和則副会長は、「居宅が介護予防支援事業所としての指定を直接受けられるようにすることも検討して欲しい」と求めた。
厚労省はこれらを踏まえ、年末に向けて引き続き具体策の検討を深めていくとしている。
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