厚生労働省の社会保障審議会・障害者部会が23日に都内で開かれた。会合の中では、障害者の生活支援の充実や雇用の質の向上などを目指す障害者総合支援法などの改正法が昨年12月10日に成立し、同16日に公布されたことが報告された。【Joint編集部】
障害者のニーズへのきめ細かな対応などが大きな柱。ここでは改めて、改正法に盛り込まれた2つの重要な具体策を紹介する。
まずは近年、利用者が増加傾向にあるグループホーム(共同生活援助)の見直しだ。改正法では、1人暮らしを希望している入居者に居宅生活への移行やその定着の支援を行うことが、提供すべきサービスの内容として法律上明確化された。
背景には、1人暮らしやパートナーとの暮らしを望んでいる入居者がいるなかで、それが十分に実現できていない現状がある。
厚労省が2021年夏に実施した調査の結果によると、「将来1人暮らし、またはパートナーとの暮らしをしたいか」との問いに「はい」と答えた利用者は44.7%。一方で、1人暮らしに向けた支援を「していない」とした事業者は約70%にのぼっていた。
厚労省は今回、障害者の希望の実現を後押しする観点からグループホームのサービス内容を拡大する。事業者の具体的な支援例としては、1人暮らしに向けた金銭や服薬の管理、外出の同行訓練、住宅の確保、退居後の相談の継続などをあげている。
2つ目は就労の後押しだ。改正法では、障害者が望む仕事に就くための新サービス「就労選択支援」が新たに創設された。
これは本人の希望、能力や適正の評価、仕事中の配慮点の整理など必要なアセスメントを行ったうえで、事業者と調整して就労系サービスの利用や一般就労を促すもの。ハローワークに対しても、アセスメントに基づく職業指導の実施などを求めていく。
2021年12月に厚労省が公表した調査結果によると、全国の障害者の雇用者数は同年まで18年連続で増加してきている。厚労省の担当部局は、「就労を希望する障害者のニーズや社会経済状況が多様化している」と説明。「障害者が働きやすい社会を実現するため、ひとりひとりの希望や能力に沿ったよりきめ細かい支援の提供が求められている」との考えを示した。
全国介護事業者連盟で障害福祉事業部会の会長を務める中川亮氏(日本福祉コンサルティンググループ株式会社代表取締役)は、1人暮らしなどの支援を強化するグループホームの役割の拡大について、次のようにコメントした。
「障害者の希望する暮らしの実現に向けた支援体制が定義されたことは良い方向。もちろん、本人の意思を尊重することが大前提となる。例えば報酬確保のために、訓練のように指導して半ば強制的に自立を促すような事例が生じないよう、細部について慎重な議論が必要ではないか」
また新たな「就労選択支援」の創設については、次のように指摘した。
「就労を希望する障害者の希望や適性などをきめ細かくアセスメントし、一般就労や就労支援事業所などの適切な選択を可能としていくことは、ミスマッチを抑える観点から良い方向。ただ、中身をめぐる本格的な議論はこれからだ。
対象者、実施者について幅を持たせた柔軟な制度設計としなければ、例えば対象者を長期間にわたって待たせる結果を招いたり、実施者と周辺事業所との主従関係・軋れきが生じたりすることも懸念される。あくまでも利用者主導の制度設計となるよう期待している」
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