「秋といえば食欲の秋」という女性は意外と多いかもしれません。それは訪問介護を利用する85歳の高齢女性も同じだったようです。
ついさっきまで部屋にいたはずなのに! 訪問介護のサービス中にいなくなった女性の行先とは……?
不快指数が非常に高かった夏が終わり、秋がやってきました。秋といえば、芸術の秋・読書の秋・スポーツの秋といろいろありますが、女性にとってやはり「食欲の秋」はマストであるように感じます。それは高齢女性にとっても同じです。
訪問介護で私が担当している利用者の渡辺さんは85歳。つるつるの玉の肌と穏やかな笑顔がチャームポイントの優しい女性です。
膝を悪くされ変形性膝関節症になってからは足元のものを取ったり片づけたりするのが1人ではなかなかうまくいかないため、ヘルパーが生活援助に入っています。
渡辺さんの夏のおやつは、スイカやアイスなどを少し食べていた程度だったのですが、10月になって涼しくなると食べる量が増えました。かりんとう、ぬれせんべい、大福など。
なんで分かるかというと、かがめない渡辺さんの代わりに部屋のごみ収集を私がやっているからなんです。
まさに渡辺さんにとって秋は食欲の秋。夏に減った分、取り戻すぞ!との勢いで食欲が戻ったようでした。
ある日、驚いたことにサービス中、渡辺さんがいなくなってしまいました。軽い生活援助を受ける程度の自立度の高い利用者さんであっても、基本訪問中は家にいてもらうことが決まりです。契約時にも渡辺さんに了承を得ていました。
なのに…忘れちゃったんだろうか?と不安に思いながら待っていると、しばらくして渡辺さんが帰ってきました。だいたい5分くらい出ておられたでしょうか。
ようやく帰宅した渡辺さんが手に抱えていたのは紙袋。中にはホカホカと湯気を立てた焼き芋が並んでいるではありませんか。
そう、渡辺さんは焼き芋屋さんの鳴らす「い~しや~きイモ~♪」というメロディを聞き、慌てて家を飛び出したんです。サービス中は家を出てはいけないという約束は、どうやら失念していたようでした。
でもなんとなく私もわかります。お芋屋さんが来たら走っちゃう気持ち…だって秋だし、焼き芋すごくおいしいし…。私は渡辺さんの無邪気な笑顔を見ると、きつく注意はできませんでした。でも走るのは危ないですよ。
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